最終回「働きのなかでの幸福を⾼めよう!」【Hapinnovation Lab Letter Vol.12】

Hapinnovation Lab(ハピノベーション・ラヴ)のベイタ博⼠とハピノ研究員が、皆さまからいただく様々な質問に答えていきます。連載最終回第12回目はどのような展開になるか!?
ベイタ博⼠:
今回が最終回じゃのう・・・、アッという間じゃったわい!

この1年は、Lab Letter の連載と並⾏して、Hapinnovation Labのリアル研究会である『幸福な職場つくり研究会』を3回開催でき、わしらも学びの多い1年じゃった。
特に、『幸福な職場つくり』の賛同者が増えたことは、わしらにとっても研究に打ち込む⾃信・勇気づけになったのう、ハピノ。
ハピノ研究員:
はい!ベイタ博⼠、私もそのように感じます。

『幸福な職場』というと、“なんかちょっと違和感があるなぁ~”という⼈がまだ多いことも確かなのですが、逆に理解してくれる⼈が少しずつですが、確実に増えてきているという実感を持てています。
違和感を持つ⽅は、やはり仕事の場である“職場”と、“幸福”というものを⼀緒に考えることに無理があると考えてらっしゃる⼈なのではないかと思います。

今回は、連載の最後でもあるので、前回のオコタさんの提案である、今までのLab Letterを振り返りながら、改めて“幸福な職場”、“働きのなかの幸福”ということを考えてみたいと思います。
オコタ:
あら、どうもありがとうございます。ちょっとした思いつきだったんですけど・・・。でも、少し頭の中を整理したいという気持ちがあったので、振り返りなんて柄にもないことを⾔ったのかしら・・・。

私⾃⾝のことを話しますと、最初の頃よりは「働きのなかの幸福」について少し分かってきたような感じがします。
それというのも、私は、上司のメイさんとこのHapinnovation Labの『幸福な職場つくり研究会』に参加し、他社さんのお話や途中で取組んだワークから、さまざまな気づきをいただきました。
メイさんは、恐らく、私になにかを伝えたくて、⼀緒に参加しようと誘ってくれたのでだと思っています。
メイ:
そうよ~、ただ飲み会にだけ来ていたわけではないですからね~。
オコタを味⽅につけて「わが職場を幸福にしよう」としているのよ。

最近は、テレビや新聞などでも「幸福学」が話題になってきたこともあり、他のメンバーも「なにやっているのですか」と関⼼を寄せるようになってきたので、随分とやりやすくなってきたわね!
ハピノ研究員:
そうなのですよね。このLab Letterをはじめたのは、2013年の4⽉で、まだわずか1年しか経っていないのですが、その間、確実に「幸福」「幸せ」をキーワードにした記事などが増えています。
ちなみにGoogle Scholarを使って、学術分野の検索で「幸福」という⾔葉が使われている論⽂数をみてみると1991年~1993年には、311件でしたが、2011年~2013年には、4,521件と急速に増えています。
また、「労働(働き)と幸福」においても(表1)のように、1991年~1993年には、95件、2011年~2013年には、1,510件と増えています。

ベイタ博⼠、これはどういうことからこのような流れになってきたのでしょうか。


ベイタ博⼠:
やはりリーマンショックという先進国を中⼼とした⼤きなリセッションがあったことや、世界各国で⾒舞われた災害(⼈災も含む)などの影響も⼤きいだろうと思う。つまり、多くの⼈が不幸な体験を共有したことによって、「幸福になるにはどうしたらよいか」ということを改めて考えるようになったのじゃろう。

少しばかりの時間、⼩難しい話しをさせてもらうな、ハピノや。

皆さんもよくご存知のドラッカー先⽣が、「現代の経営」という書籍に、『事業体とは何かを問われると、たいていの企業⼈は利益を得るための組織と考える。たいていの経済学者も同じように答える。この答えは間違いなだけでない。的外れである。』と書いておるのじゃが、皆さんは、これをどう思うかな?

⼀説によると、ドラッカー先⽣の本は、⽇本の経営者に最も読まれている書籍であるといわれているようじゃが、実に興味深い話じゃ。
なぜなら、経済合理性を最優先にしそうな経営者たちが、こういう考え⽅を受け⼊れているんじゃな。
更に『利益が重要ではないということではない。利益は企業や事業の目的ではなく、条件である。(・・・中略・・・)事業の目的として利益を強調することは、事業の存続を危くするところまでマネジメントを誤り導く。今⽇の利益のために、明⽇を犠牲にする。売りやすい製品に⼒を⼊れ、明⽇の市場のための製品をないがしろにする。』と続いておる。
どうも経営学だけではなく、実際の経営も、そもそもお⾦を中⼼としているとは思えないのう・・・。つまりじゃ、我々は、社会活動を考えるうえで“便利の良い経済合理性という考え⽅”に従いながらも、その実、それだけではないことを疾うに知っていて、それに代わる考え⽅を模索し続けておるのじゃな。

つまりじゃ、昨今の幸福への注目は、少し⼤げさな物⾔いになってしまうが、経済合理性を超える指導原理を社会が探しているということの現われ、あるいは何のための社会なのか、何のための企業なのかという、根源的な問いへの挑戦とも⾔えるのではないかとわしゃあ考えておる。

どうじゃな、少々⼤きなことを⾔いすぎて恥ずかしいのう・・・。
うん、わしの話はこのくらいにして、皆の話を聞かせてくれないか。
ハピノ研究員:
どうでしょか、この後は、『「幸福な職場」「働きのなかの幸福」を実現するために』というテーマで、皆さんの気づきをお話しいただけないでしょうか。

(オコタ・ベイタ・・・「賛成!」の声)
洒落さん:
はい!私はまず宴会部⻑をやらせていただいて元気になりました。
ハピノさんから、「幸福は伝染する」と聞いていましたが、まさにみなさんの元気が伝染して、みんなで幸福な気分になりました。

また、もう1つありまして、それは、⾃分が目指す幸福とは、well-being だということに気づきました。どうも“よい結果=幸福”ということよりも、“よいあり⽅=幸福”と考えた⽅が、⾊々な意味で納得がいきますし、職場で全⼒を尽くすことができるように感じられるのです。
これが僕なりの働きのなかの幸福への挑戦かな。(Vol.01)
メイ:
私は、そもそも統計調査による結果である“⽇本⼈の幸福度は低い”ということに違和感と反発を感じていたのだけど、幸福を構成する要因ということを考えさせられたわ。もちろんお⾦も⼤切なのだけど、当然それだけではないわけよね。
つまりね、⼈⽣というものをどのように評価すればよいのかということをキチンと考えなければならないということ気づき、最近はチョッと哲学って⼤切かな・・・なんて考えています。

そうそう、この間読んだ本に「⽇本⼈にとっての働くということは、“道”であり、“修⾏”であり、“稼ぐ”というような狭い意味ではない」と書いてあったのだけど、私は、その⾔葉にビビンときたわ。働きのなかの幸福のヒントを感じるのよね。(Vol.02)
オコタ:
えっ、メイさんそんなこと考えていたんですか?
最近、眉間のしわが、哲学者然としてらっしゃるなぁと思っていたんですが(笑)。けれど、私もそう思います。

⼈事の⽴場から社員の皆さんとお付き合いさせていただいていると、皆さん、それぞれが⾃分の求めるものを追求していらっしゃったり、求めるものを探そうとしていることを肌で感じます。決して、⽣活のために稼ぎを求めて職場に来ているのではないと断⾔できるように感じています。
“何かをよくしたい”という思いに対して働いてらっしゃるように思います。そんな⼈が集まったところが幸福な職場なのだろうと思います。
セブン:
いやぁ、酔いどれ哲学者のメイさんは凄い!僕も同感だ!

僕は、幸福を科学的につかむことが重要と今でも考えている。ただし、受⾝的なことを考えても仕⽅がないので、能動的に考えることこそ重要だと思う。
つまり、⾃分の主体的、あるいは⾃覚的な働きかけによって幸福感を⾼める⽅法こそが重要だと考えた。“道”とか“修⾏”といった、何かを極めるということが、その能動的活動だと考え、職場や⽣活を律することが働きのなかの幸福を
実現する⽅法と考えている。(Vol.03)

それと、ストレスに関連して説明してもらった、ポジティブ感情が幸福感に繋がるという話しが印象的だったなぁ。実は、ポジティブに物事を考えることを⼤切にしていたので、我が意を得たり、ってところもあり嬉しかったなぁ。
(V0l.09)
ベイタ博⼠:
皆、凄いのう・・・。働きのなかの幸福を追求する⼈をハピノベーター(Hapinnovator)と呼んでおるのじゃが、いつの間に・・・、⼤したものじゃて!皆、⽴派なハピノベーターになりつつあるのう。
どうじゃな、他の⼈は?
シュガー:
私は、⼩さなことなのですがハピノさんに教わった“感謝を伝える”ということを実践しています。
周囲との関係がスムーズになったという効果もありますが、何よりも他者に感謝することが、これだけ⾃分の⼼を安定させることになるとは思っていませんでした。この学びは本当に⼤きいです。(Vol.04)
ウォーキー:
うーん、僕は「経営学には幸福という⽤語がない」という説明が忘れられないなぁ。
時を忘れて夢中になっている状態であるフローを⼤切にしたいなぁと思った。
フローになれる・・・それが働きのなかの幸福のような気がするな。(Vol.05)
ブル:
私は、もうただひたすら「労働の創造」という⾔葉に共感しました。
ベイタ先⽣は、労働の創造を「⼈間が誇りを持ちながら⽣きていくためには、どのように労働を創造するのかを考える思想」と説明していましたが、仲間である従業員⼀⼈ひとりが、労働の創造に取組める職場つくりこそ、幸福な職場ではないかしら。(Vol.06)
ヅカ:
うん、僕も職場つくりの重要さに気づいたなぁ。
ハピノ先⽣たちの職場における主観的幸福感のアンケート調査結果の中でも、特に「余裕や遊び、そして⾃⼰決定のできる風⼟と、安⼼できる空間」という項目は、本当に共感できる。そんな職場つくりをしたい。(Vol.7)
みどり:
そうねぇ、私は“get betterとbe good”の話しが興味深かったわ(Vol.01)。

あと、“キャリアへの⾃信”という考え⽅も興味を覚えました。⾃分で道を切り開くということが幸福感に影響するのであれば、私たち⼈事は、キャリアパスを準備するのではなく、それぞれのキャリアの後押しをすることが⼤切なんだと思いましたし、うちの会社の社⻑が⾔っている「⼩さなことでもいいから、何かあたらしいことを⾃分で⾒つけたり、してみてごらん」と若い⼈たちに⾔っている意味が理解できたように思います。(Vol.08)
ハル:
私は、本当に参りました。その理由は2つあって、1つは“関わりの重要性を理解できていなかった”ということと、もう1つは、“関わりを分断するようなマネジメントをしてきていた”ことに気づいてしまったことです。

目標管理制度の本当の意味を忘れ、忙しさのなかで、ちょっといい加減なマネジメントに流されていたことに気づかされ、ショックでした。けれど、それに気づいたから、今は結構変えています。
職場も幸福度が⾼く、さらに業務の安定感が増してきているように思います。
何事も気づきから始まるというのは、このことですね。(Vol.10)
ウエ:
私はひと⾔で、“話し合いの効能”に気づき、話し合うことが職場の幸福感を作りこんでいくと考えるようになりました。

7⽉に岡村製作所さんの実験オフィスで⾏った“幸福な職場研究会”のときに、岡村製作所の池⽥晃⼀研究員に『「場所」というのは記憶が刻み込まれた空間』であるという説明を受けましたが、今僕が考えているのは、職場を対話の場・何かを⽣み出す場、あるいは成功、時によっては失敗といった共通体験が記憶として刻み込まれた場にすることが幸福な職場つくりなのかなと考えています。(Vol.11)
ハピノ研究員:
私、もう感激です。

僅かな時間しかご⼀緒していないのですが、これだけのことを振り返っていただけるなんて・・・。ホント、⼀⽣懸命やってきて・・・(ウルウル)。
ベイタ博⼠:
おお、ハピノの感激屋の⼀⾯が出てきたのう。それじゃ、わしが最後を引き取らせてもらうかな。

皆、さまざまな気づき、学びを持ったようじゃが、決して、学んだことで満⾜してはいかんぞ。
⼤切なことは、ハピノベーターとして実践し続けることじゃ。そして、⾃分だけではなく周囲にもよい影響を与え続けることじゃ。働くということは社会にとって必要不可⽋なことじゃ。
昔、ケインズという経済学者は、100年後には、われわれは週15時間程度だけ働くようになっているはずだと予⾔しとる。そして、経済問題が重要でなくなる時期はそう遠い時代ではなく、労働の時間をもっと⼤切なものに振り向けているだろうと書いている。
⼤切なものというのは、“⼈⽣と⼈間関係の問題、創造と⾏動および宗教の問題”であり、それは⾔い換えるならば“⼈間が得た⾃由を、懸命に、⼼地よく、善良に⽣きるために、いかに⽤いるかという問題”であると⾔っているのじゃ。深いのう・・・。
残念ながら、私たちの社会は、皆が⽣きていくためにはやはりそれなりの規模の⽣産⾏為が必要で、なかなか週15時間の労働とはならんが、逆に⾔うならば、だからこそ「働きのなかの幸福」が重要なのじゃ。

Hapinnovation Lab Letterは、残念ながら今回が最終回じゃが、Happinovation Labの活動はこれからも変わらない。
ぜひ、今後も⼀緒に“幸福な職場”、“働きのなかの幸福”について考える場を共有していきたいものじゃ、、、なっ、ハピノや。
⻑い間ご愛読いただきありがとうございました。

お気づきのことがありましたら、ぜひご連絡をいただければと思います。

【執筆担当】
⽵村 政哉 学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 主席研究員
⾼⽥ 靖⼦ 学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 研究員

※執筆者の所属・肩書きは掲載当時のものです。