「⽇本の職場における幸福感の構造(その1)」【Hapinnovation Lab Letter Vol.7】

Hapinnovation Lab(ハピノベーション・ラヴ)のベイタ博⼠とハピノ研究員が、皆さまからいただく様々な質問に答えていきます。連載第7回目はどのような展開になるか?!
ベイタ博⼠:
前回(Vol.6)は、150か国にわたる調査に基づく主観的幸福感についての紹介をしたが、“仕事”というものの重要性について、理解を深めてもらえたのではないかと思う。しかし、その幸福であるという⼼象を形成する要素にまでは触れておらんかった。
これは、Hapinnovation Labの研究会があるたびに話題になるし、「⾃分が採⽤に関わった社員が職場で幸せに働いているかが⼼配だ」というヅカさんの熱い想いのこもった質問でもある。

これに応えなんだらHapi(ハピ)̲Lab(ラブ)の名が廃るというもんじゃのう、ヅカさんや!
ヅカ:
そのとおりですよ!
私は、Vol.2の「⽇本⼈は幸福度が低いのか」に書かれていた⽇本の幸福度の状況を知ってから、どうも⼼に引っかかるものがあったのですわ。
ところが、ハピノ先⽣が『⽇本には⽇本の主観的幸福感がある』ということと、『Hapi(ハピ)̲Lab(ラブ)で⽇本企業を対象としたアンケートとインタビュー調査を⾏う』ことを聞き、楽しみにしてました。
因みに、インタビューでは、私にも声が掛かるかな・・・と、万全の協⼒体制で待っていたんですがね。⾃分なりの想いを⾔いたくてね・・・。
ベイタ博⼠:
ヅカさんありがとう!ありがたい話じゃな。
調査は、まだまだ継続して⾏っているので、ぜひ今後も協⼒してもらえると助かるのう・・・。

さて、本題に戻って、アンケート調査の結果について、ヅカさんファンのハピノから話して貰うこととしよう。
ハピノ研究員:
はい、ベイタ博⼠!では、調査結果の概要をご紹介しましょう。
まず、研究室で質問項目の検討会を⾏い、⼩規模の予備調査を⾏い、そのうえで本調査を実施しました。
結果として予備・本調査で1,000名を超える⽅からご回答をいただきました。
本調査では、20歳代から50歳代まで各階層の男⼥100名、計800名の職業⼈のものを分析対象としました。調査は、webを⽤い、2012年の夏に⾏いました。
ヅカ:
1,000名超!?凄いねぇ、本格的な調査だなぁ。

ところで、今頃、こんなことを⾔うのも何なのだが、私は『幸福です、あるいは幸福ではありません』という主観的であり感覚的なものを正しく測れるものかねぇ?
ハピノ研究員:
そうなんです。流⽯ですね、ヅカさんは!
幸福度の測定は、常にそこが注目されます。
⾃分の⼈⽣全般にわたる幸福度、最近の幸福度、あるいは仕事で感ずる幸福度などを分けて答えることは難しいのが現実ですし、また、アンケートへの回答直前にあった出来事が、幸福感を左右することも少なくありません。
そこで私たちの調査では、『あなたは幸福ですか?』というような聞き⽅はせず、正味感情量によって幸福度を把握することにしました。
正味感情量とは、「幸せな/暖かな・⼼暖まる/楽しんでいる」という感情の肯定的形容詞と、「不満な・イライラする/沈んだ・憂鬱な/わずらわしい・振り回される/腹の⽴つ・敵意のある/⼼配な・気がかりな/非難される・けなされる」という感情の否定的形容詞を設問項目とし、それぞれの平均点の差によって幸福感情を捉える⽅法です。
ですから、数値が⼤きい場合には、幸福度が⾼く、⼩さいあるいはマイナスになると幸福度が低いということになります。
ベイタ博⼠:
納得!
この調査は、『会社や職場、あるいは仕事のなかで、幸福な感情とそうではない感情をどの程度感ずるかを聞き、その頻度や強度といった回答の差から主観的幸福度を決める』という理解で良いですな。
あと、もう1つ、前回(Vol.6)触れた『労働の創造』とはどのような関係になるのかを教えてください。
ベイタ博⼠:
流⽯に⼈事エキスパートじゃ。
アンケート調査に慣れているし、鋭い突込みをするのお!

このアンケート調査は、⽇本企業の職場における主観的幸福感の構造を解明するためのものであり、それは同時に、『労働の創造』を推進していくための基礎研究なのじゃ。のう、ハピノ。

少し雑な⾔い⽅になるが、幸福感を感ずることができるような働き⽅を目指すことが『労働の創造』ということじゃから、職場における主観的幸福感に影響している要素を明らかにすることは、労働の創造の道筋についての基礎的な知⾒も得られると考えているのじゃ。

ところで、どうじゃ、ハピノや、まず分かりやすく調査の結論から⽰してはどうかな?
ハピノ研究員:
はい、では結論から参りましょう。まず、図1をご覧ください。

これがアンケート調査の結果を1枚の図にしたものです。
右に書かれている「職場における主観的幸福感」というのが、この調査で解明しようとしている対象で、目的変数と呼びます。
そして、この目的変数を構成する要素を説明変数と呼びます。

今回の調査では、ご覧のように(1)会社・経営者への信頼と共鳴、(2)職場と上司への信頼、(3)安⼼できる空間、(4)余裕や遊び、そして⾃⼰決定のできる風⼟、(5)⾃⼰の周囲への貢献実感、(6)職場の⾰新的気風、(7)仕事そのものとの関わり、という7つの説明変数(因⼦と呼びます)となりました。
これは興味深いことに『会社要因(会社・経営者と⾃分とのつながり)・職場要因(職場における上司・仲間・しくみ・風⼟などと⾃分とのつながり)・仕事要因(仕事そのものと⾃分との関係)』という3つのグループに分けて考えることができます。

どうでしょうか?ご覧になった感想は・・・。
『やっぱりねぇ』というようなものが多いのではないでしょうか。
私たちは、会社、職場、仕事との関わりやつながりのなかに、それぞれが意味を⾒出すことで幸福感という⼼象を形成しているということになります。
少し気をつけなければいけないことは、『関わりやつながり』ですから、⼀⽅的に与えられると考えるのではなく、相互関係で創りあげていくという姿勢が⼤切であることです。
ベイタ博⼠:
そう、そこは実に重要なところじゃ!
つまりじゃな、例えば「会社・経営者への信頼と共鳴」というのは、信頼できる会社や経営者をただ求めるのではなく、⾃ら⾏動して、相互の関わりで創りあげていくものと考えて欲しいのじゃ。それを『つながる』というんじゃな。
そうでなくては労働の創造などということは⾔えないし、単なる⽢ったれた考え⽅にしかならん!ここは⼗分に気ぃつけにゃいかん。ここは重要だぞ!
ヅカ:
なるほどぉ~、実に素直にうなずける!
個⼈的には、「余裕や遊び、そして⾃⼰決定のできる風⼟と、安⼼できる空間」というのに共感できる。そんな会社だからこそ⾃信を持って採⽤活動ができるし、そうありたいといつも考え⾏動しているつもりではある!
ところで、ちょっと気になったのは、下に書かれている媒介変数ってやつなのだが・・・?
ハピノ研究員:
アラッ、やっぱり気づかれましたか?
豪放磊落でありながら、視点は緻密ですね・・・(ウフッ!)。

媒介変数というのは、目的変数との直接的な関係は認められないのですが、間接的に影響を与えている要素です。目的変数と説明変数の結びつきを『強めたり、弱めたり』する影響を持つ要素です。

今回の調査では、図1にあるとおり、4つの因⼦が⾒出せました。
ただ、これにつきましては、次回(Vol.8)に詳しいご紹介をします。その代わり、ここではアンケートの単純集計から⾒出すことのできた傾向をご紹介しようと思います。
意外に興味深いことが発⾒されました。
ヅカ:
うーん、ショックだ!
30代の男性社員の幸福度がボトムかぁ〜。⼀番活躍して欲しい年代なのになぁ!最近、30代に⼒強さが⽋けているのはこのせいなのかな?ハピノ先⽣・・・

えぇっと、そうそう、ベイタ博⼠、採⽤と育成を担当している者としては、本当に考えさせられる内容ですわ。キャリア理論などで⾔う世代課題なども関連しているだろうと思うが、男⼥関係なく20代、30代にはもっと⾼い幸福感を感じて欲しい・・・率直にそう思う。
ベイタ博⼠:
何じゃ、わしゃあ、ハピノの付⾜しの感じじゃのう・・・。
まぁ、良いじゃろう。ヅカさんの気づきは実に⼤切なものじゃ。とは⾔いながらも、そうそう簡単に結論付けるのは⽌め、もう少し深掘りしてみないかのぉう!

そこでじゃな、次回は「⽇本の職場における幸福感の構造(その2)」として、今回触れなんだ媒介変数についての議論をしてみたい。その⼈の仕事に向かうスタイルやキャリアのありようなどが幸福感に影響するという話しじゃ。ハピノ、準備を頼むな。