「⽇本の職場における幸福感の構造(その3)」【Hapinnovation Lab Letter Vol.9】

Hapinnovation Lab(ハピノベーション・ラヴ)のベイタ博⼠とハピノ研究員が、皆さまからいただく様々な質問に答えていきます。連載第9回目はどのような展開になるか?!
ベイタ博⼠:
だんだん寒くなってきたのう。
さて、今回は「ストレスと幸福」がテーマじゃな。これは、ハピノからの提じゃったのう。

ハピノは、もともと幸福感を考えるうえで、“ストレスとどのように付き合うのか”を考えることが⼤切だと⾔っていたのじゃが、それが前々回(Vol.7)から解説しているHapi̲Lab(ハピラブ)で実施したアンケート調査の結果にも出てきたわけじゃな。ハピノとしては捨て置けないテーマじゃな。
そうそう、そして、夏に異動されたセブン君から、今までとは畑が違う部署でストレスがかかるので、職場で幸福感を⾼めるのはなかなか⼤変だ~という連絡をもらっていたのう。
セブン:
ベイタ博⼠、お久しぶりです。覚えてくださっていたのですね。
半年前に異動になりました。これまで営業と⼈事の仕事が⻑く、この歳になって(笑)、今まで経験したことのない部署に⾏くとは思っていなかったので、思ったよりもストレスを感じています。

新しい職場は、コーポレートの専門スタッフで、コンプライアンスなどに関する責任を担う関係で、⽇本のみならず、世界の⽂化、良識、法律などへの目配せが⽋かせません。
しかし、⾃分のこれまでの知識だけでは⼗分ではなく、今のところ⾃分でイメージするような貢献が出来ないことが、ストレスのもとになっているような気がしています。

ただ、⾃分は楽観的なところが取り柄で「なんとかなるさ~」とは思っているのですが、新しいことを覚えるのが、若いときに⽐べ、⼼理的にも⾁体的にも少ししんどいかなぁ~と感じている今⽇この頃です。
ベイタ博⼠:
セブン君、それは⼤変じゃな!実は、わしもそうなんじゃ。気持ちはあるのじゃけれど、⼼と⾝体が思ったようにはついてきてくれないんじゃ!
そんな話しを以前ハピノにしたら、「⾃分はストレスに強い」と思っていることだけで前向きな⼒が⽣まれ、良いことなのですよ・・・と教えてくれよった。

そうじゃったのお~、ハピノや。あのときの説明は、なかなか堂に⼊ったものでわしも納得したわい。
今回のアンケート調査では、職場における主観的幸福感という⼼象の形成について、ストレス耐性の⾼い⼈の⽅が幸福感について肯定的で、ストレス耐性が低い⼈は、否定的になるという傾向が⽰されていたのじゃ。
つまり、職場における幸福感ということを考えるうえで、ストレスを理解し、ストレスとうまくつき合うことが⼤切であることが分かったんじゃ。

ハピノや、ストレスについて素⼈にでも分かる優しい解説を頼むぞ。
ハピノ研究員:
はい、了解しました。
それにしてもセブンさん、⼤変ですね。でも、セブンさんは映画鑑賞や楽器演奏などの趣味をお持ちですから⼤丈夫だと思いますよ。気分転換がうまくできるのもストレスを溜め込まない⼈の特徴ですから・・・。

では、ストレスやストレス耐性ってどういうことなのかを簡単にご説明しましょう!

ストレス耐性というのは、何らかのストレスを感じたときに、⼼理的、⾝体的、⾏動的に“なんらかの症状(ストレス反応)”が⽣じることなく耐えられる程度のことです。
因みに、ストレスというのは、もともと⼯学上の⾔葉で、何かしらの外⼒が加わることで⽣ずる歪み(ゆがみ)のことを⾔います。この外⼒のことをストレッサーと呼びます。

セブンさんの場合は、異動によってご⾃⾝が会社や周囲の⽅々に⼗分貢献できていないのではないかという思いが原因(ストレッサー)で、ストレスフルになっていらっしゃるわけですね。
けど、精神的にまいってしまいミスをしてしまうとか、下痢や胃炎などになったりするような反応(ストレス反応)を起こすことなく耐えられているという状況です。ストレスを感じられているわけですから、あまり良い状態とは⾔えないのだろうと思います。
けれど、ここで少し⽴ち⽌まって考えてみたいのです。それはストレスを上⼿に活⽤するということです。

⼀般的に、ストレスは悪いものだと思われがちですが、実はそうでもなくて、(図1)のように適度なストレスはパフォーマンスをアップさせると⾔われています。
これにはもちろん個⼈差がありますので、個⼈差をきちんと認めることは⼤切です。


セブン:
へェ~、そうなのですか!うん、なんとなく思い当たる節もあります。
たとえば、演奏が上⼿になりたくて、演奏会の開催を先に決め、そこに向かって⾃分を追い込むようなやり⽅なんかがこれにあたるかなぁ~。
ハピノ研究員の話を聞いたら少し元気でてきたなぁ~。今のストレスを⼼理的プレッシャーにするのではなく、逆にバネにすれば良い訳ですね。
ハピノ研究員:
その通りです。

その他にもストレスとのつき合い⽅の知恵はいくつかあります。つき合い⽅を知り、実践することで、ストレスも悪くないと思えるようになると、それはストレス耐性が⾼くなったということになります。

ストレスとのつきあい⽅で⼤切なことは、ものの捉え⽅や考え⽅です。
ものの捉え⽅や考え⽅というのは、何らかの出来事に直⾯したとき、「これは、どの程度⾃分に関係するのか?」「⾃分にとってプラスかマイナスなのか?」といったことを感じたり、その出来事に対して、「⾃分は、それをうまくできそうだ!(逆に出来ないかもしれないと思ってしまうこと)」とういうように考えることで、これを認知的評価と呼びます。
そのときに「⾃分にはできる」と思うことを、⾃⼰効⼒感が⾼いとか楽観的であると呼びますが、ここまで含めてものの捉え⽅と考え⽅と呼んでいます。アラッ、少し説明に⼒が⼊りすぎちゃったかしら・・・。
セブン:
ハピノ研究員、楽観的というのも私にあてはまるかもしれません。
なんだか、なんでもできるような気がして、幸福な気分になってきました。
ハピノ研究員:
セブンさん、そう⾔っていただくと私の話も少しは役⽴ちそうでうれしいです。
私が、ストレスと幸福ということで皆さんにお伝えしたいことは、ストレス耐性を⾼めることが幸福感を⾼めることになるということに繋がっていることです!
ストレスを無くすという発想ではなく、ストレスを活⽤する、ストレスとつき合うという根本的に逆の話になるというわけじゃな・・・アラ、ベイタ博⼠の⼝癖がうつってしまいましたわ(⾚⾯)。

ポジティブ⼼理学の⽗と⾔われるセリグマン教授は、ストレス軽減の研究をしている時に、どんなことに直⾯してもへこたれずに乗り越える⼈たちがいることに気づきました。
その⼈たちは、逆境、失敗、ストレスなどのネガティブな問題に直⾯しても、ポジティブな感情で受けとめ、それらを回避、発散、抑制、再評価、共有などしているということが分かったのです。これを起点にストレスへの考え⽅が180度変わったのです。

従来、⼼理学でのストレス研究は、⼼の不健康への対処療法だったのですが、セリグマン教授は、ポジティブ感情を⾼めるためには、その⼈の「強み」に注目して、その状況を乗り越える⽅法にたどりつくためのポジティブな思考を⽣み出すことにフォーカスを当てたわけです。
また、フレドニクソン教授は、ポジティブ感情を発揮できる⼈は再起する⼒が⾼いという研究をしています。これは、9.11のテロの前にとったアンケートでポジティブ感情のレベルが⾼く測定された⼈は、テロ事件後に精神的な⽴ち直りが早かったという結果が出ています。
セブン:
なるほど、では私の「なんとかなるさ」と思うのもある⾯、ポジティブ感情で受け⽌められたと⾔えるわけですな〜まあ半分開き直ったわけですが・・・。
ハピノ研究員、ポジティブな感情って⾼められるのでしょうか?
ハピノ研究員:
ポジティブな感情を⾼めるために⼀番⼤切なこと、そしてすぐにでも出来ることは、「感謝」ですね!
⾃分の周りの⼤切な⼈とのつながりや愛情に感謝することで、うつ病やPTSD(⼼的外傷後ストレス障害)に⾄るネガティブ思考・感情の下降スパイラルが解消され「感謝できる⼈は幸せになれる」ということが⾔われています(Emmons,2007)。
その他にもSavoring(セイバリング)(Bayant,1989)と⾔われる⽅法-“過去・現在・未来のポジティブな体験に注意を払うこと”-で、ポジティブな感情を⽣成・維持・強化できると⾔われています。

つまり、少し強引なのですが、“ストレス耐性を⾼める⇒ポジティブな感情を⾼める⇒幸福感が⾼まる”という好循環を意識することが⼤切です。
ベイタ博⼠:
いやはやハピノはいつも控え目だけど、専門となると⼒が⼊るなぁ~。

「ストレス耐性と幸福の関係」で⼤切なことは、ストレス耐性やポジティブな感情を⾼める意識をしていると、幸福感を⾼めることができるということじゃな!
誰にでも、もちろんわしにもできそうじゃな!!

さて、3回に渡って調査結果の話をしてきたが、次回は「職場における関わりあいと幸福」というテーマにしようと思う。
これはハルさんのご希望じゃ。ハルさん、楽しみしておいてくれな。