幸福な職場つくりへのプロローグ【Hapinnovation Lab Letter Vol.1】

はじめまして。Hapinnovation Lab(ハピノベーション・ラヴ)の研究員、夢 幸乃(ゆめ ゆきの)です。友達からはハピノ(幸乃)と呼ばれています。
この度、ベイタ(⽶多)博⼠こと⽶多 未来(べいた みらい)と⼀緒に、ハピノベーション・ラヴ・レター(Hapinnovation Lab Letter)を担当させていただくことになりました。ちょっと凸凹な2⼈です。
ハピノベーション・ラヴ・レターって、ちょっと変わった名前でしょ。
⾃分では、ワクワクする良いネーミングだと思っていますが、果たして皆さんには気に⼊ってもらえるか⼼配です。

さて、このラヴ・レターは、少し気取って⾔うと、『「幸福な職場つくり」を目指した情報発信誌』ということになります。けど、あまり格好つけないで、幸福な職場を実現していくうえでの話題を、ハピノベーション・ラヴの参加者であり、Hapinnovator(ハピノベーター)をめざす企業の⽅々からの質問に答える形式で進めさせていただこうと思います。

第1回の質問者は、ハピノベーション・ラヴの宴会部⻑こと洒落さんに務めてもらいます。

洒落:
少し、⾔葉の整理をお願いします。
ハピノベーションとか、ハピノベーターとか、カタカナが多くて分かりにくいのですが・・・。
ベイタ博⼠:
そうじゃのう、少し悪乗りしすぎたかな。全部洒落じゃよ、洒落さん。
ハピノベーション(Hapinnovation)なんて、どんな辞書を引いても載っておらん。ハピノと考えた造語じゃ。しかし、気持ちは分かってもらえるじゃろう。⾒た通りHappyとInnovationの組合せじゃな。
しかしな、ここでのHappyという⾔葉には、「プロセス(well-being / getbetter)と結果(happiness / be good)の双⽅の幸福を求める働き⽅と、そんな職場への⾰新」という想いを込めているんじゃ。

ちょっと分かりにくいかのぉ。
つまりな、幸福という結果だけを求めているのではない。ハピノは『仕事をすることそのものが幸福である』と論⽂に書いておった。そのためには、職場の風⼟やマネジメントの仕⽅も、⼀⼈ひとりの仕事に対する姿勢や態度、あるいは仕事の仕⽅を変えていく必要もあるんじゃ。そして、これを実践する⼈をハピノベーター(Hapinnovator)と呼ぶことにした。ついでじゃが、この研究を進める私とハピノは、Master of Hapinnovatorとして皆の実践のお⼿伝いをさせていただいているわけじゃ。

おお、そうそう⼤切なことを忘れておった。
ハピノベーション・ラヴ(Hapinnovation Lab)というのは、ハピノベーターの集いであり、⾃由に、束縛なく、幸福と職場つくり(組織開発)について研究する誰でも参加できる異業種交流会であり、⾃ら学ぶ場なんじゃ。
洒落:
ところでベイタ博⼠、「幸福な職場つくり」と⾔っていますが、そもそも幸福とはどんな状態のことなのですか。
ベイタ博⼠:
洒落さんは、いつも良い質問をするのぉ。
しかしな、この問いには簡単に答えられないんじゃ。実は、どのような状況が「幸福」なのかを説明するのは非常に難しいことなのじゃ。幸福とは感ずるものであるからして、⾔葉にすることの難しさがつきまとうんじゃ。主観的なものであるから、定義が困難なのじゃな。ただし、どんな幸福論があるのかということを少し説明しておこう。それで幸福というものがどのように捉えられているかがある程度分かるだろうと思う。

幸福論は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスにまで遡ることになるぞ。
アリストテレスは「知性を⾼めることが幸福である」と⾔っておる。その他にも、カントは「幸福になるのではなく、幸福に値するような⼈間になれ」と逆説的なことを⾔っておるし、近代のイギリス思想では「快楽の増⼤と苦痛の減少こそが幸福である」と当たり前のようなことを⾔っておる。⽇本で、世界三⼤幸福論と呼ばれることのあるアランは「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」 という、これまた逆説的なことを⾔っている。残念ながらいずれも哲学的で、我々が求めているような実感のある⾔葉になっていない。

しかし、最近は「幸福」ということが学術研究の対象となりはじめている。アメリカの経済学会では、1991〜1995年に幸福を主題に掲げた論⽂は4本だったのが、2001~2005年には100本以上になっており、急速な発展をみせてい
る。
この最近の幸福論を調べていくと、2つの幸福論があることに気づくが、それは、この2つだ。
(1)結果としての幸福(happiness/be good)を考える幸福論
(2)幸福なあり⽅(well-being/get better)を考える幸福論


(2)は少し分かりにくいかもしれんなぁ・・・。
そうそう、ハピノが「⽇々の⼀つひとつの出来事から幸福を感じながら⽣きる状態のこと」と⾔っておった。ハピノは、相変わらずうまいのう。

どうじゃ、洒落さん。少しは理解が進んだかな?
ハピノ研究員:
これは私からお話したいと思います。
私の意⾒を申しあげると、ブータンのような国家レベルでの取り組みは、まだまだ遠い道のりだと思っています。その理由として挙げられるのは、国の規模や⽂明・⽂化などの諸環境が違いすぎるということです。しかし、参考にしたり、お⼿本にすることは⼗分に可能なのだろうと考えています。

先⽇内閣府が「⽇・ブータン協働研究・合同ワークショップ:“幸福度を活かした政策決定と地域創造“」を開催いたしましたが、多くの⾃治体や地域がブータンのGNHを政策に活かした取り組みを参考にしていました。
その中でも、⿅児島県の⿅屋市柳⾕(通称“やねだん”)は、集落住⺠300名で豊かな⽣き⽅を目指した「むらづくり」を推進し、⼤きな成果をあげているそうです。
やねだんでは、住⺠の意思を中核とし、地域の特性と資源を発⾒・活⽤し、さらには外部の専門家に協⼒を仰ぐなどの⽅法をとりながら、豊かさを目指 した活動に成果をあげているそうです。このような集落としての発展を遂げる⼒を、明治⼤学の⼩⽥切教授は「ネオ内発的発展論」と呼んでいます。また、組織開発分野では「⾃⼰組織化」という概念が、⼤体同じことを指しています。

私、ハピノの提案は、この地域というのを『企業組織、あるいは職場』に置換えてみるということです。会社の組織・職場というのは、私たちにとって地域と同様、重要な⽣活の場であり、コミュニティを形成しています。簡単に結論づけることはできませんが、ブータンの幸福度(GNH)の考え⽅は「幸福な職場つくり」にも応⽤できるように考えています。

さて、第1回はここまでにしましょう。 次回は、「⽇本⼈は幸福度が本当に低いのか」~幸福と経済の関係~について触れたいと考えています。