「主観的幸福感を構成する項目」【Hapinnovation Lab Letter Vol.3】

Hapinnovation Lab(ハピノベーション・ラヴ)のベイタ博⼠とハピノ研究員が、皆さまからいただく様々な質問に答えていきます。連載第3回目はどのような展開になるか?!
ベイタ博⼠:
さて、今回のテーマは、前回のメイさんの疑問と、007(ダブルオーセブン)通のセブン君の興味を合わせて「主観的幸福感を構成する項目」というテーマでお話をすることにしよう。
メイ:
うぁ~嬉しいわ〜2回も登場できると思っていなかったから・・・、疑問を⾔ってみるものね!
ところで今回のテーマに「幸福」の前に「主観的」とついているのはなぜかしら?
セブン:
私の問題意識もメイさんと重なるところがあります。メイさんとご⼀緒できて光栄です。
この間、メイさんと始めてご⼀緒しましたが、メイさんの飲みっぷりの良さに男惚れしました。あんなにハイボールをおいしそうに飲む⼥性は初めてです。
素敵ですね。あっどうもうもすいません。横道にそれてしまいました。

最近、私がもっとも知りたいのが、「⼈の幸福感が何によって決まるか」ということなのです。なぜ、こんなことに興味を持っているかというと、⼈事を預かっている以上、社員の幸福ということを考えることは何よりも⼤切なことと考えています・・・ちょっと、格好つけすぎですね、、、。

最近、何かの本で読んだのですが、幸福度のインタビュー調査を『綺麗なオフィスでやる場合』と、『汚いオフィスでやる場合』、その回答に違いが出るというようなことが書いてありました。

当然、綺麗なオフィスでのインタビューの⽅が全般に回答が良い傾向を⽰すということでした。つまり、「どんなオフィスで働いているか」によって、結構、幸福感に関する回答が影響を受けるのだと、その時、感じたのです。やっぱり、綺麗なオフィスがいいですよね。
ベイタ博⼠:
さすがセブン君じゃ。感性が⾼いのう。また、オフィスのことに、殊のほか興味を持っている様⼦じゃのう。実は、この⼼理学実験には、もう少し続きがあるので補⾜しておこう!

このインタビューの質問事項では、本⼈が住んでいる「住居についての満⾜度」も聞いているのじゃが、⾯⽩いことに、『汚いオフィス』でインタビューをした⼈たちの⽅が、『綺麗なオフィス』でインタビューをした⼈より満⾜度が⾼いという傾向がでたのじゃ。

これは、まぁ予想がつくと思うが、汚いオフィスで⾃分の住居について考えた⼈は、このオフィスに⽐べたら⾃分のアパートは捨てたものでないと思い、奇麗なオフィスで考えた⼈は、⾃分のアパートの惨状を思い知らされ、⾃分のアパートにあまり満⾜していないという評価を下したのであろう。

つまり、判断を下す状況が、⾃分の住居を評価する際の⽐較基準になったということなのじゃな。うん、少し説明が⾜りんのう。

ハピノよ、このあたりの話をもう少し正確に伝えてくれんかな。
ハピノ研究員:
はい、ではベイタ博⼠のされた『⼤よその話』を、誤解が⽣じないように解説しましょう。

この実験は、⼼理学者のストラックとシュワルツが⾏なったものです。この実験結果から彼らが主張したのは、「幸福感の判断は、偶然の外的な出来事に多⼤な影響を受ける」ということです。

つまり、幸福感の判断というものには、その時々の状況が⼤なり⼩なり影響を与えるのです。その結果、幸福感というのは客観的に測れるものではないということから、測定にあたっては「主観的幸福度」という呼び⽅をするわけです。

ちなみに、幸福度の主観を構成する代表的な要因(これは逆に幸福感の客観性を損なう要因として理解できます)として以下の4つが指摘されています。

(1)回答時の⼼理状況・・・
どんな気分の時に回答したのか?
(2)周囲と過去の⾃分との相対的な⽔準・・・
何と⽐較して回答したのか?
(3)社会的な出来事(ニュース)や景気状況の影響・・・
回答時の社会や経済ニュースの影響
(4)⾝内の冠婚葬祭や⾃分を含めた周囲の出来事など・・・
回答時の偶発的出来事

余計なことかもしれませんが、旧来の経済学が幸福度を研究の対象範囲からはずした理由は、この主観の影響が避けられないからであると考えてよいと思います。
セブン:
確かに、幸福感というものは個⼈が感ずるものですから、いちいち納得します。
しかし、主観的と⾔っても、それはそれなりにある程度の類型化ができると思うのですが・・・。

たとえば、家族構成などの個⼈の属性なども幸福感に⼀定の影響を与えているようにも思います。⼤家族の⽅が⼩家族よりも幸福感が⾼いというような話はないのでしょうか?

私のイメージでは、サザエさん的家庭が幸福度の⾼いシンボルなのですが・・・。
ハピノ研究員:
はい、⼀定の類型化は可能であると思います。
では、最初に客観的な個⼈属性により幸福度についてご説明しましょう。

主観的幸福感に影響を与える個⼈属性の代表的なものとしては、「性別・年齢・仕事・婚姻」などがあげられます。
性別では、総じて⼥性の幸福度の⽅が男性より⾼いという傾向があります。
年齢では、若年から⾼齢の間で幸福度はグラフにするとU字形を描くと⾔われています。40歳くらいの幸福度が最も低いようです。
仕事では、「職があるかどうか」、これがきわめて⼤事なことのようです。ある程度の所得が保証されていても、職のあるなしが主観的幸福感に⼤きく影響するという実験結果が出ています。
また、婚姻は、それだけで幸福ということではありませんが、幸福度に⼤きな影響を与えます。

しかし、セブンさんは不思議な⼈ですね。

007とサザエさんの両⽅に造詣が深い⽅は、そんなにいませんよね・・・。失礼しました、話を元に戻します。
007が好きなセブンさんが、サザエさんの家族団らんシーンに幸せを感ずるというのは、やはり幸福感というのは⽂化と無関係ではないことを⽰していると考えてください。この⽂化というものは、決して⼀国だけではなく、地域の精神⽂化として考えた⽅がよいようです。

韓国の延世⼤学のソ・ウングック教授の調査によると、アジア地域、特に韓国や⽇本の地域には、幸福の総量は⼀⽣で決まっているという考え⽅があり、そのために、幸福を感ずることに抑制的になる傾向があるようです。⼀⽅で、そのような考え⽅がない⽶国では、幸福を感ずることそのものをオープンに楽しむ傾向があるようです。

つまり、セブンさんがサザエさんを幸福の1つのシンボルとして感ずるのは、サザエさんを幸福と感ずる精神⽂化の影響を受けているから・・・と⾔わざるを得ないように思います。

つまり、幸福感は、幸福を感ずる状況と共に、個⼈が持つ属性や属している⽂化などと無関係ではないと⾔って良いだろうと考えています。その意味で、⽇本⼈的な主観的幸福感という類型化が可能ということになります。
ベイタ博⼠:
そうじゃ。実は⽣まれた時から本能的に感ずる幸福感というものもあるが、育つなかで⽣成されていく幸福感というものがあり、これには個⼈属性や⽂化属性が⾊濃く影響しているということなのじゃ。
カリフォルニア⼤学のリュボマースキー教授等の調査によると、幸福度は50%が先天的要因、10%が環境要因、そして⾃発的要因を40%としている。

つまりは50%が状況や個⼈属性、そして属している⽂化の影響を受けているということになるのじゃな。遺伝気質も間接的にはこのような影響とは無関係とはいえないだろうな。

セブン:
先⽣、だんだんと分かってきたような気がします。
主観的幸福感を構成する項目には何があるのか・・・ということよりも、どのようにしてそれらが構成されているのかということこそ⼤切なんですね。
そういう視点こそ、グローバルな時代に必要なものであるように思います。
ベイタ博⼠:
さすが、セブン君は根っこを理解しようとするその姿勢が魅⼒じゃのう。我々も⾒習わなくてはいかんな。
ただ、今⽇は、主観的幸福感の構成要素がテーマじゃから、ここで終わるわけにはいかんな。もう少し説明させてもらおうかの。

主観的幸福感に関する現時点の通説は、(1)社会状況、(2)所得、(3)仕事、(4)⾝体的健康、(5)精神的疾患、(6)社会的関係、という6項目で構成されるといわれておる。

ただ、これはかなりの⼤きな構成要因であり、これだけではピンとこないところもあるじゃろう。つまり、これを、もう少し細かくみていく必要があるわけじゃ。細かくみていくときに、主観的幸福感をどのような角度から分けていくのかということが肝⼼なんじゃ。

そこで、次から何回かに分けて、⼼理学、脳科学、そして社会学などの異なった分析の観点から、説明してみようと思う。
どうじゃ、ハピノ、準備は出来るかのう?
ハピノ研究員:
では、次回は⼼理学からの主観的幸福感についてのお話ということにしましょう。