シニア社員のパフォーマンスが組織の未来を変える!年上部下をもつ管理職に知ってほしい3つのポイント

シニア社員のパフォーマンスが組織の未来を変える!年上部下をもつ管理職に知ってほしい3つのポイント

このシリーズでは、⼈材育成の現場を数多く⾒てきた産能⼤のアドバイザーからのヒアリングを踏まえ、本当に効果的な人材育成施策に役立つ視点や考え方をご紹介します。
第2回は、日本で徐々に多数派になりつつある「シニア社員」をマネジメントする際の心構えについて、産能⼤のナカダ⽒が解説します。

  • 注)本コラムでは、シニア社員を「50歳以上で非管理職のビジネスパーソン」と定義します。

今後ますます重要度を増していく「シニア社員」。
多様な人材をマネジメントをする上で、知っておくと役立つ「考え方のコツ」を一緒に見ていきましょう。

ナカダ

増加するシニア社員。いかにマネジメントするかは組織の重要課題!

「当社でも70歳定年制の導入を検討している」
「3年後には50歳以上のシニア社員が全社員の3割を超え、年上部下をもつ管理職が劇的に増える」
「シニア社員のモチベーションを上げないことには、会社の生産性向上は実現できない」
「シニア社員のモチベーションを上げるようなマネジメントスキルが必要だ」

自社の教育担当であるSさんは、先日の人材育成会議での部長の発言を受けて、マネジャー研修の内容見直しの検討に着手したようです。
「よし、【マネジャー シニア社員 モチベーション 研修】と検索しよっと。」
さっそくキーボードをたたき始めたようですが、
「待てよ…まずは、ちょっと自分で考えてみるか。」

どうやら前回、自社で実施した若手社員向けモチベーションアップ研修の効果がいまいちだったという反省を踏まえ、安易なキーワード検索に頼ることはやめたようですね。

ナカダ

「年上の部下がいると、特に経験の浅いマネジャーはやりづらいだろうな。元上司が部下になっちゃったよと不安げに言っていた人もいたし。でも、シニア社員は仕事経験が豊富で、社内外の人脈も広い。だから自分の裁量で自由に仕事を進めてもらえればいいんじゃないか? 年下上司からの指示を嫌がる人もいるだろうし。
ただ、部長が言っていたシニア社員のモチベーションを上げないとって、どういう意味なのかな? シニア社員はやる気がないのかな?
う~ん、よく分かんないな。やっぱりネットで調べてみようっと!」

あれれ?ものの5分で考えるのをあきらめて、結局はネットに答えを探しにいってしまいましたね。でも広い視野で考える姿勢はありますし、良い点にも着眼していると思います。ではシニア社員のマネジメントで心得ておくべき3つのポイントについてご説明します。

ナカダ

高年齢者雇用安定法が改正され、2021年4月から、企業に対して70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務として設けられました。人材育成会議での部長の発言もこのことが背景にあるようですね。
今回は、人材育成部門の重要なテーマの1つである「マネジャーはシニア社員をどうマネジメントしていけばよいか」について考えてみたいと思います。

シニア社員の“放任”は卒業! マネジャーは「伴走者」と考えよう

マネジャーは部下のシニア社員に対してどのように接すればよいのでしょうか?
大事にしたいのはダイバーシティの考え方です。年齢はあくまで個人の多様性の1つと捉えたマネジメントが重要です。年齢、性別や雇用形態などに注意を向けがちですが、そうした目に見える属性だけではそのメンバーを知ったことにはなりません。目には見えづらい個人の内面、例えば価値観、強み弱み、職場への貢献意欲などを把握することが重要です。

マネジャーがシニア社員に遠慮してほとんど関与しなかったり、シニア社員も「年長者は職場にあまり口出ししない方がいい」と距離を置いたり…。こうした相互の気遣いが、もしかすると、年下マネジャーは“任せた”つもりだったのに、シニア社員からすると“丸投げされた”というすれ違いを生むことがあります。こうなると、シニア社員との関係もギクシャクしてしまいますよね。
年長者に対して敬意を払うことは重要ですが、マネジャーの役割は果たさなければなりません。シニア社員に一定の裁量は与えども任せすぎず、伴走者として支援するスタンスでマネジメントしていきましょう。

管理職・管理職候補
の方にオススメ

【診断】PASCAL for Diversity

世代・価値観・働き方が多様なメンバーを率いて、適切なマネジメントを行うために必要な特性を測定できる診断ツールです。

管理職の方にオススメ

【集合研修】マネジメント基本研修

多様な人材を生かし成果を創出するためのマネジメントの基本を体系的に学習できる研修です。ダイバーシティを踏まえたコミュニケーションや、ダイバーシティを活かした職場づくりについて学ぶセッションをご用意しています。

苦手なことは職場全体でケアしよう。シニア社員に頼れる仕事も多いはず。

では、マネジャーが伴走者としてシニア社員を支援する際に、仕事の割り当てにおいてはどういった点に注意すべきでしょうか?

人間は経験を積むほど熟練する分野がある一方で、加齢によって適応が難しくなる分野もあります。若い頃と比べると大量かつ迅速さが求められる作業が苦手になったり、あるいは新しいテクノロジーの習得に時間を要するようになった人も多いでしょう。特に身体能力の低下は、労働災害につながる可能性があるので注意が必要です。たとえシニア社員本人が問題ないと言っていても、マネジャーとして冷静に見極める必要があります。シニア社員の役割・仕事内容については、日頃から他メンバーにも伝え、職場全体でケアするように協力をお願いしておきましょう。
一方で、複雑な状況での判断、柔軟な顧客対応が求められる仕事は、シニア社員の豊富な経験を活かせるでしょう。例えば、シニア世代を主要顧客とするビジネスでは、同世代のニーズや気持ちがわかるシニア社員への期待も大きくなります。

冒頭の部長発言の「生産性向上」を目指すためには、マネジャーが職場の方針を明確にしたうえで、職場の業務を棚卸し、個々のメンバーの適性を踏まえて、仕事を割り当てていくことが大事です。仕事が複雑化する現在、マネジャーにとって、シニア社員は心強い味方になってくれます。

管理職の方にオススメ

【集合研修】マネジメント実践研修

職場構想を描き、業務の優先順位づけを行い、リーダーシップを発揮して職場の生産性向上を実現する実践的なマネジメント手法を習得できる研修です。

シニア社員の不安や悩みに寄り添う。 「あなただからこそ」の仕事を一緒に創り出そう。

シニア社員の心理的な側面について、マネジャーとして理解しておくべきことは何でしょうか?

50代になると、会社員人生の終盤戦での立ち位置に対する不安、自身の健康・老親の介護などライフキャリアでの悩みを持つ人も増えてきます。また役職定年制度によって“ポストオフ”した人は、重責から解放された反面、ある種の喪失感を抱きやすいものです。冒頭の部長の“シニア社員のモチベーションを上げないと”という発言は、単にシニア社員を動機付ける施策だけでなく、こうしたシニア社員が抱えがちなメンタル面での不安への配慮も含めたものと考えた方が良いでしょう。

一口にシニア社員といっても、50代ならばそれから15年以上働く人も珍しくありません。組織と自分の関係性、仕事の意味づけの描き直しが必要です。特に期初の目標設定場面で、「この職場にはあなたが必要なこと」「あなたの仕事はあなただからこそできること」を丁寧に説明し、理解してもらうことが大切です。適切な目標設定のためには、感覚や経験に頼るだけでなく、人事考課の原理原則を学び、より効果的な実践を目指すことも不可欠でしょう。ここはマネジャーとしての真価が問われる場面でもあります。組織からの役割期待を伝えるだけではなく、シニア社員個人にとっての仕事の意味づけにも寄り添う。このゴールを意識しましょう。

重要度は高いが目先の仕事に追われて着手できていない仕事、利害関係者が多く部門間調整を要する仕事などは、シニア社員の豊富な経験や人脈、それらに裏付けされたコミュニケーションスキルを発揮できる目標になり得ます。

ナカダ
新任・既任管理職
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【集合研修】映像教材を活用した人事考課者研修

目標設定の方法論について、臨場感のある映像教材を用いて分かりやすく学ぶセッションをご用意しています。

現在、多くの日本企業ではバブル期の大量採用世代や団塊ジュニア世代がベテランとして活躍しています。今後、彼らが定年後も再雇用の道を選ぶなら、組織に占めるシニア社員の割合は今以上に増加するでしょう。

皆さんの会社はいかがでしょうか?
シニア社員の姿に、未来の自分を投影している若い社員も少なくありません。シニア社員の活躍が、組織の生産性や事業の競争力を左右する時代がもう目の前に来ています。イキイキと働き、成果創出に貢献するシニア社員を生み出すことが、今後のマネジャーの職務の要になるといえます。

人材育成に関するお悩み、課題など、お気軽にご相談ください。

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「若手社員研修の失敗事例から学ぶ「教育担当者が持つべき3つの視点」「若手社員研修の失敗事例から学ぶ「教育担当者が持つべき3つの視点」
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