若手社員研修の失敗事例から学ぶ「教育担当者が持つべき3つの視点」

受講者の評価は上々!なのに効果が無い?若手社員研修の失敗事例から学ぶ「教育担当者が持つべき3つの視点」

1年を通していろいろな研修を企画する人事教育担当者。現場のマネジャーなどから寄せられたさまざまな問題にいかに効果的な施策を講じるか、頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか?
このシリーズでは、人材育成の現場を数多く見てきた産能大のアドバイザーからのヒアリングを踏まえ、本当に効果的な人材育成施策に役立つ視点についてご紹介します。 第1回めの今回は、ある教育担当者が直面した「受講者の評価が高かったのに効果が見えなかった研修」というケースを元に、人材育成施策はどのように企画すべきか、産能大のナカダ氏が解説します。

人材育成は日々模索と実践の連続。
うまくいかなかった研修にこそ重要な学びが沢山あります!
私と一緒に紐解いていきましょう。

ナカダ

社内から寄せられた若手社員のモチベーションに関する課題に…

「若手社員からやる気が感じられない」
「若手が言われたことしかやらなくて困っている」

最近、そんな声が現場のマネジャーから多く寄せられている。
ここはひとつ、若手社員のモチベーションアップを促す研修を実施することにしよう!まずは【若手社員 モチベーション 研修】で検索っと…。
おっ、「モチベーション研修」がヒットしたぞ。日数も1日で条件にはまるし、受講した人の評判も良さそうだ。今回はこの研修をやることにしよう!

研修の効果は上々!のはずが…

研修後のアンケートでは、受講者から「大変よかった」「参考になった」という意見が多かったのに、現場のマネジャーからは
「相変わらずやる気がない」
「研修の効果が感じられない」
という評価なんだよなぁ。
要望どおりのテーマの研修を実施したのに何がいけなかったんだろう…?


研修を企画する際に、このような思考プロセスで施策を検討していませんか?
各マネジャーから寄せられた悩みに対し、効果に直結すると期待されていたモチベーション研修。なのに、現場では思ったような効果が見られなかったようです。
若手社員のモチベーションを上げるために、教育担当者としてどのような視点が必要だったのでしょうか?

今回のケースでは、若手社員にやる気が感じられない、言われたことしかやらないという問題に対して、若手社員を対象としたモチベーション研修を実施したものの、根本的な解決には至りませんでした。なぜでしょう?
そもそも、若手社員以外に要因があるのかもしれません。職場の風土や上司のマネジメントに問題はないのでしょうか?若手のやる気を引き出すような仕組みは用意されているのでしょうか?
問題を解決するためには、若手社員を取り巻く環境に幅広く目を向ける必要がありそうです。

ナカダ

1つめの視点:上司のマネジメント責任はどこに?

最初からやる気のない人を採用する組織はありませんし、採用基準で求める人材像には「自律的」や「主体的」といった項目が含まれている組織も多いはずです。
最初はやる気も自律性もあったはずの新入社員が、モチベーションの低い、指示待ち型の若手社員になってしまったとしたら、それは組織に入ってからのマネジメントの結果かもしれません。

現場を預かるマネジャーであれば、自分の部下がなぜモチベーションダウンしているのかを説明できないといけません。現場から「若手社員のやる気がない」という声が寄せられた際には、「なぜそうなっていると思いますか?」を逆に現場のマネジャーに質問してみてもいいと思います。
しかし、実際のところ明確には答えられないマネジャーがほとんどではないでしょうか。原因がわからなければ効果的な対策を講じることはできません。若手社員のやる気、自律性、エンゲージメントなどに問題を感じるようであれば、現場のマネジャーと一緒に職場やメンバーの現状を把握するところから手を打ってみることも時には必要です。原因は、職場の方向性が見えていないからかもしれませんし、マネジャーのメンバーへの働きかけが不足しているからかもしれません。原因がわかれば、今よりも効果的な打ち手が用意できるようになります。

管理職の方にオススメ

【集合研修】OJDマネジメント実践研修

  1. 「成果目標の達成」と「人材開発」を統合し、職場の革新を促すOJDマネジメントの考え方を理解する
  2. 職場活性度診断OJDで、メンバーから見た職場の状態を把握する
  3. OJDマネジメントを自職場で展開していくための方法と具体的なスキルを身につける

2つめの視点:先輩社員は若手のやる気を引き出している?

マネジャーが現状を正しく把握したうえで、職場のあるべき姿を打ち出し、直接的、間接的なマネジメントができるようになれば、若手社員のモチベーションにも良い影響が生まれていくことでしょう。
ただ、それだけでは不十分かもしれません。よく言われることですが、日常的に先輩社員がどのように若手社員に接しているのかは、若手社員のモチベーションに強い影響を与えています。自分の経験に当てはめてみても納得できるのではないでしょうか。

先輩社員がいつも細かく指示命令をしているようでは、若手社員がやる気を失い、指示待ち型人材になってしまうのも無理はありません。若手社員の可能性を信じ、仕事の意義や意味をきちんと説明し、自分では見えないところに気づいてもらうための問いを発し、しっかりと話を聞いてあげること。こんな先輩社員がいたら、若手社員のモチベーションは高まるに違いありません。

管理者・OJTリーダー職
の方にオススメ

【集合研修】ビジネスコーチング

  1. メンバーの立場に立って働きかけることを通じて内発的に動機づけ、メンバーの主体性を引き出す、ビジネスコーチングの考え方と進め方を身につける
  2. メンバーの育成を通じて、ビジネスコーチ自身の仕事上の成長と職場の成長を促進し、成果目標の達成に結び付ける

3つめの視点:「やる気がない若手社員」は本当にやる気がないの?

「やる気がない」「言われたことしかやらない」という若手社員に話を聞けば、「やる気はあります」「自分なりに工夫もしています」という答えが返ってくるものです。自分を正当化するための発言かもしれませんが、もし本人が本当に頑張っているのであれば、その頑張りを組織に貢献できる形に導く必要があるのかもしれません。
入社3~4年目になると、さまざまな変化が訪れます。たとえば、先輩から色々と教えてもらえた時期が終わる、定型的で前例がある仕事が減り、自分でやり方も考えないといけない仕事が増えていく、後輩もできてリーダーシップの発揮を求められるようになる……といった変化です。ここで意識と行動を切り替えることができないと、周囲からは「指示待ちでやる気がない若手」という評価を受けることになってしまいます。
本人は頑張っているはずなのに周囲からは評価されていないという若手社員が多いのであれば、どのような活躍が期待されているのかを理解してもらったうえで、自分が活躍する具体的なイメージを描くよう働きかけてはどうでしょうか?

入社から4年目以上の
中堅社員にオススメ

【集合研修】中堅社員研修 Stance

  1. 自分の強みや持ち味を再発見し、自分らしい活躍の仕方を認識し、モチベーションを高める
  2. 自分および職場(組織)にとって意味のある仕事(課題)を、自ら作り出す考え方を理解する
  3. 課題に取り組むための仕事の進め方や関係づくりを、自分自身でデザインする方法を学ぶ

教育担当者に求められるのは、問題構造を俯瞰する視点

今回は、「若手社員のやる気がない」という問題について、上司のマネジメント、先輩社員の関わり方、若手社員の戸惑いという視点から原因を考えてみました。この問題が、若手社員のモチベーションだけの問題ではないことが少し見えてきたでしょうか。

ナカダ

実際の職場で起きている問題はもっと複雑です。
「やる気がない」という一言で片づけられがちな問題も、何事に対してもやる気がないのか、あるいは言われたことに対しては高いパフォーマンスを発揮するが、明示されないことは積極的に引き受けようとしない、など実際にはさまざまなケースがあります。
冒頭のケースでは、オーダー通りのモチベーション研修を実施しましたが、期待される効果は見られませんでした。どのような振る舞いがあれば「やる気がある」と言えるのか?そのためには何が必要なのか?という検討が不足していたからかもしれません。1つのキーワードに飛びつき短絡的に考えず、問題構造の仮説を立てたうえで研修を企画することが重要と言えるでしょう。

人材育成に関するお悩み、課題など、お気軽にご相談ください。

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