強い組織をつくるために⼈材育成ができることとは?【第6回 若⼿社員との信頼関係づ くり】

前回は、「⾒通しづけ 」というテーマで、若⼿社員に対して、⾃分の将来に関する展望を持たせることの重要性について考えてきました。

今回は、いかにして若⼿社員と信頼関係を築いていくかについて、産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 マネジメント研究センターの杉村 茂晃が解説します。
学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所
経営管理研究所
マネジメント研究セン ター
杉村 茂晃(すぎむら しげあ き)

若⼿社員への指導の浸透と、成⻑を促す信頼関係づくり

若⼿社員を成⻑させていくためにも、早い段階で信頼関係を構築することが重要なカギとなります。信頼関係を築けていなければ、こちらがどれだけ良い指導を⾏ったとしても、指導内容が相⼿の中にスムーズに浸透していかないからです。

お互いの期待に応え合う

信頼関係を構築するためにもっとも重要なことは、指導する側と指導を受ける側が、お互いの期待に応え合うということです。

あなたは、若⼿社員にどのようなことを期待していますか?例えば、「素直であって欲しい」、「分からないことがあれば、分かった振りをするのではなくきちんと質問して欲しい」、「困ったことがあれば、すぐに相談して欲しい」などでしょうか。「受⾝ではなく、⾃分で考えて動けるようになって欲しい」と期待している⼈もいるかも知れません。

⼀⽅で、若⼿社員もあなたに何かを期待しているはずです。いったいどのようなことを期待しているのでしょうか?「分からないことがあった場合には丁寧に教えて欲しい」、「質問しやすい雰囲気を出して欲しい」、「気になる点があれば、率直に指摘して欲しい」などがあるでしょうか。
「私は、⼿取り⾜取り、丁寧に教えて欲しい」という⼈もいれば、「⾃主性を尊重して、助けを求めたときにだけ教えて欲しい」という⼈もいるかも知れません。

いずれにしても、その期待に応え合うことが、信頼関係を築く上で⼤切なポイントといえます。

お互いの期待を伝え合い、指導する側は熱意を持ち続けて、信頼を得る

期待の種類

さて、その期待には、【図1】に⽰すように、「能⼒に対する期待」と「意図(やる気)に対する期待」がありますが、信頼関係の構築においては、どちらがより重要となるのでしょうか。

【図1】
それは、「意図(やる気)に対する期待」です。たとえば「先輩は、何を訊いても知っていて教えてくれる。でも、『こっちだって忙しいのになあ』というような嫌な表情をすることがあるんだよなあ・・・」と感じさせてしまっては、せっかくの指導も空しく、信頼の獲得は望めないでしょう。

⼀⽅で、「分からないことを尋ねても、先輩も分からない時があって正直困る。でも、あの⼈の、私を⼀⼈前にしようという熱意だけには、とてもかなわない」と感じさせたほうが、より信頼関係に結びつきやすいものです。

つまり、私たち指導者は、たとえ能⼒⾯に多少不安を感じていたとしても、相⼿を⼀⼈前にしようという熱意や想いをもって指導にあたれば、やがては強い信頼を獲得することに繋がるのだという⼼得をもつことが⼤切です。「私だって忙しいのに・・・」、「まあ、適当に教えておこう」という片手間意識は、必ず相⼿に伝わってしまいます。(【図2】参照)
【図2】
お互いの期待を知る

お互いの期待に応え合うためには、まずもって、相⼿にどのようなことを期待しているのかお互いに伝え合うことが第⼀歩です。

皆さんも、若⼿社員に対して、「私にどのようなことを期待しているの?」、「どのような指導をしてほしいのかな?」と、率直に訊いてみてはいかがでしょうか。意外な答えが返ってくるかも知れませんよ。

もちろん、皆さんからも、若⼿社員に対して期待していることを、きちんと⾔葉にして伝えることが⼤切です。「何でいつも分かってくれないのかなあ・・・」、「そんなことくらい、察してくれよ」というイライラは禁物です!

(学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 マネジメント研究センター 杉村 茂晃)