強い組織をつくるために⼈材育成ができることとは?【第1回 最近の若者の特徴】

第1回目は、最近の若者の仕事に対する意識や考え⽅の傾向などについて、オリジナルデータをもとに産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 研修企画⽀援センターの関 和之が解説します。
学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所
経営管理研究所 研修企画⽀援センター
関 和之(せき かずゆき)

本当にいまどきの若⼿は育てにくいのか?

「若⼿が育ってない」という声を、ここ数年、業種に限らず、多くの経営者や管理者からお聞きします。⽇本全体の企業・組織の課題といっても差し⽀えないと思います。皆様の現場では、どうでしょうか?
若⼿が育っていない原因はさまざまで、⼀概に「これが原因だ」とは⾔い切れません。教わる側(若⼿)の意識に原因があるかもしれませんし、教える側(経営に携わる⽅々や現場の先輩)の教え⽅に原因があるかもしれません。またその両⽅かもしれません。

今回の連載では9回に渡って、新⼊社員・若⼿社員に焦点を当て⼈材育成をテーマにお伝えしていきたいと思います。⽇々、⼈材育成に取り組まれている⼈材育成ご担当者の皆様にとって、⼿がかりやヒントになれば幸いです。

第1回目の今回は、「まず相⼿を知ろう」ということで、若⼿の意識や傾向を調査結果などを交え、⾒ていくことにしましょう。

若⼿世代の特徴は時代とともに変化する

さて世間では、とかく「今の若⼿は・・」とネガティブに⾔われがちですが、実のところ、特徴⾃体に良い悪いはありません。そう発⾔する上の世代と若⼿側とで、ものの考え⽅や意識が異なるということに過ぎません。⼈は社会的な⽣き物です。社会の状況変化に応じて適応的に成⻑します。
つまり時代背景が変われば、その状況で育ってきた世代の持つ特徴も変わるということです。

まずは本題に⼊る前に、簡単なクイズを出したいと思います。

車、バイク、パソコン、海外旅⾏、字幕映画、結婚式

これらの⾔葉に共通するものは何だと思いますか?

答えは、「若者の○○離れ」です。

これは、マスコミなどで若者の消極的な消費傾向を⽰すためによく使われます。この消極性は、消費傾向だけではなく、仕事の場⾯でも現れています。

皆さんは、「ミレニアム世代」という言葉を耳にされたことはあるでしょうか?
最近の若⼿世代(特に20代)を表すキーワードです。
この世代は、「⽣活や⼈⽣を縛るものは持ちたくない」「ラクが⼀番」「傷つくのが嫌い」「損をするのが嫌い」といったような傾向を持っています。その⼀⽅で、「人生に手ごたえを求めている」「⾃分の存在を認められたい」という傾向も持ち合わせています。総じて⾔えば、「⼀所懸命頑張りたいわけではないが、周りから認められたいし、やっていることに⾃分なりの意味を求めたい」といったところでしょうか。

若⼿社員の「動機の源泉」と「ストレス発⽣源」

ここからは、本学が行った調査のデータ(30歳以下の社員が対象)に基づいて、組織で働く若⼿の特徴を2つの観点で⾒ていきましょう。

ひとつは、「動機(モチベーション)」の側⾯で、"仕事において、どういう価値を⼤事にしているか"についてです(図1.動機の源泉)
もうひとつは、「ストレス」の側⾯で“仕事において、どういう状況にストレスを感じやすいか”についてです(図2.ストレス発⽣源)
仕事において、どういう価値を⼤事にしているか(図1)については、「承認」「⼀体感」「⾃⼰成⻑」がトップ3になっています。そのそれぞれの具体的な意識の傾向は以下の通りです。
 ※承認:周囲から認められたり、褒められたりしたい
 ※⼀体感:みんなで⼀丸となって(仲間で)仕事すると楽しい
 ※⾃⼰成⻑:仕事がもっと出来るようになりたい
⼀⽅、どんなときにストレスを感じるか(図2)については、「失敗」「達成・成⻑感のなさ」「不明確な仕事」がトップ3になっています。同じく具体的な意識の傾向は以下の通りです。
 ※失敗:仕事で失敗すると、すごく落ち込む
 ※達成・成⻑感のなさ:⾃分がやりたいことや成⻑に繋がらない仕事はイヤ
 ※不明確な仕事:いつまでに、何をやればいいのかが分からないとイライラする

仕事において、どういう価値を⼤事にしているかについては、「承認」「⼀体感」「⾃⼰成⻑」がトップ3になっています(詳細は図1参照)。⼀⽅、どんなと きにストレスを感じるかについては、「失敗」「達成・成⻑感のなさ」「不明確な仕事」がトップ3になっています(詳細は図2参照)。
こうした仕事における「動機」と「ストレス」の2つの側面を眺めてみると、最近の若⼿像が⾒えてきます。

1.仲間で、お互いに認め合うことを⼤事にする

2.仕事で失敗したくないので、はじめに、その仕事の目的ややり⽅を明確に教えておいてほしい

3.⾃分が目指す姿に直接繋がるような仕事がしたい (いわゆる“雑⼱がけ”はイヤ)


こうした傾向を掴んでおくことで、若⼿をやる気にさせ、成⻑を促す⼿がかりが⾒つかります。ただし、当然ながら、若⼿全体の傾向なので、⼀⼈ひとりの意識 や特徴はそれぞれ異なります。育成する際には、⼀⼈ひとりの意識や特徴を理解し、真剣に向き合い、ケアをしていくことが必要になるのは⾔うまでもありません。

では、第2回以降では、こうした若⼿の特徴を踏まえながら、育成の考え⽅や⽅法について、お伝えしていきたいと思います。

(学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 研修企画⽀援センター 関 和之)