強い組織をつくるために⼈材育成ができることとは?【第3回 新⼈・若⼿社員の不安 を 解消する】

前回は、厳しい環境の中でも、新⼈・若⼿社員が定着・成⻑するような、強い組織にするためのポイントを整理しました。

その中から、今回は、さまざまな厳しい現実に直⾯する新⼈・若⼿社員が抱く不安を解消し、仕事に対する取り組み姿勢をマイナスからゼロの状態に引き上げるために、押さえておくべき点についてご紹介します。

1.「これまでと違う様⼦」に気づく

⼀般的に、新⼈・若⼿社員は仕事や⽣活において、次のような不安な気持ちに陥りがちです。 「徐々に担当する仕事が増えているが、期待に応えられるのだろうか」 「毎⽇忙しくて、将来の⾒通しが⽴たない」 「先輩に聞きたいことがあっても、忙しそうで話しかけられずにいる」・・・。

このような気持ちを把握するためには、職場で⽇頃から新⼈や若⼿の⾔動に注意を払い、本⼈が⼝にしなくとも、次のような「これまでと違う様⼦」に気づいてあげることが必要です。
・これまで正確にできていた仕事に、ミスが目⽴つようになった
・ルールを守らなくなった
・⼝数が極端に減った(あるいはその逆)
・以前に⽐べて表情に活気がなく、元気がない 等

図表1 新⼈・若⼿社員の不安を解消する【 3つのポイント 】

2.新⼈や若⼿の気持ちを理解する

「これまでと違う様⼦」に気づいたら、その新⼈や若⼿から話を聴きましょう。
皆さんは、誰かに話を聴いてもらうことで、気持ちが楽になった経験はないでしょうか?
たとえ実際に本⼈は話をしなくても、「つらいときは、あの⼈に話せる、聴いてもらえる」という相⼿がいるだけで、⼼の⽀えになるものです。

また、話の聴き⼿は、新⼈や若⼿の不安の原因を明確にすることができます。
その際、ポイントとなるのが、先⼊観を持たず、素の状態で本⼈の⽴場に⽴って聴き、気持ちを理解しようとすることです。

ただし、不安な気持ちを抱えた本⼈が、⾃発的に相談してくるとは限りません。また、定期的に⾯談する機会があったとしても、相談することは特に無いと⾔うかもしれません。
しかし、皆さんが新⼈や若⼿に関する情報を収集することができる機会です。
次のような質問をして、新⼈や若⼿社員の現状について理解を深めましょう。
・仕事や⼈間関係で気がかりなことはないか
・どんなことにチャレンジしたいと思っているか
・⽇々どんなことに⼼がけているか
・仕事の負担感はないか

このように⼝を開かせることが、新⼈・若⼿が不安な気持ちを⼀⼈で抱え込むのを防ぐことにもつながります。

3.ポジティブ思考を伝授する

新⼈や若⼿の不安な気持ちを理解したうえで、その気持ちをポジティブ思考で捉え直すことを助⾔するとよいでしょう。
ここで⾔う「ポジティブ」とは、次のように、前向き、積極的、肯定的に捉える意識のことです。
・「前向き」: どのような障害も「⾃分が成⻑する機会だ」と捉える
・「積極的」: どのような悪い状況の中でも「良い状況を探す」
・「肯定的」: どのようなときも⾃分を信じ、「⾃分はできるはずだ」と励ます

「積極的」について、具体的な事例でご説明しましょう。
営業として配属された新⼈のAさんは、明⽇、社内の朝礼で初めてのスピーチをすることになりました。
Aさんは緊張するタイプで、今からうまく話せなかったときのことばかりを考え、非常に不安です。そんな時、ポジティブ思考で捉え、「これまで何度も練習して準備してきたのだから、多少ぎこちなくても精⼀杯取り組んで、営業トークの練習と思って頑張ろう」という気持ちになりました。

次回は、新⼈・若⼿社員に⾃⾝の存在意義について考えさせることで、仕事に対する取り組み姿勢をゼロからプラスの状態に引き上げるために、皆さんが押さえておくべき点をご紹介します。

(学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 研修企画⽀援センター 関 和之)