強い組織をつくるために⼈材育成ができることとは?【第4回 やりがいを求める新 ⼈・若⼿社員の存在意義の確⽴】

前回は、新⼈・若⼿社員の不安を解消し、仕事に取り組む姿勢をマイナスからゼロの状態に引き上げるための3つのポイントを整理しました。
今回は、やりがいを求めている若⼿社員に対する「仕事の意味づけ」に注目します。社員に仕事の意義を感じさせ、モチベーションアップにつなげることの重要性について、産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 研修企画⽀援センターの関 和之が解説します。
学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所
経営管理研究所 研修企画⽀援センター
関 和之(せき かずゆき)

若⼿社員は「仕事のやりがい」を求めている

最初に、組織で働く20代の若⼿社員が「仕事をする上で⼤切にしていること」について、調査結果を⾒てみましょう。以下に⽰した2つのグラフは、2014年3⽉に(学)産業能率⼤学が実施した「ビジネスパーソン調査(20代~60代、2000⼈)」のうち、20代・400⼈の結果になります。
「仕事のやりがい」が最も多くなっています(3割強)。以降、「給与の⾼さ」、「良好な⼈間関係」(1割半ば)と続きます。給与に関⼼が⾼いのは当然の結果ですが、それよりも20代の若手社員は、仕事のやりがいを⼀番に求めていることが分かります。
さらにもう⼀つ、「今の仕事にやりがいを感じているかどうか」についての調査結果も⾒てみましょう。
「やりがいを感じている(あてはまる、どちらかと⾔えばあてはまる)」という回答と、「やりがいを感じていない(あてはまらない、どちらかと⾔えばあてはまらない)」という回答が、およそ半々になっています。実際、今の仕事にやりがいを感じるのは、なかなか難しいことがうかがえます。
今の職場の中で、社員にやる気を持って前向きに仕事に取り組んでほしいと思ったとき、経営者が給与アップで報いるのは現実問題なかなか難しいと思います。そこで重要な考え⽅が、「仕事の意味づけ」です。意味づけ次第で、やりがいを感じさせることができます。要は“気の持ちよう”ということです。 意味づけの重要性をよりイメージしていただくために、イソップ寓話の「3⼈のレンガ積み職⼈」の話を簡単にご紹介します。

イソップ寓話の『3⼈のレンガ積み職⼈』

世界中を回っている旅⼈が、ある町を歩いていると、1⼈の男が道の脇で何やら作業をしていました。

旅⼈は、その男にたずねました。「ここでいったい何をしているのですか?」
その男は答えました。「⾒ればわかるだろう。レンガ積みをしているんだよ。毎⽇毎⽇、⾬の⽇も強い風の⽇も、暑い⽇も寒い⽇も⼀⽇中レンガ積みだ。なんで俺はこんなことをしなければならないのか、まったくついてないなぁ。」

旅⼈がしばらく歩くと、レンガを積んでいる別の男に出会いました。旅⼈はその男に、先ほどと同じ質問をしました。
その男は答えました。「俺はね、ここで⼤きな壁を作っているんだよ。この仕事で俺は家族を養っているんだ。だから⼤変だけど頑張らないとな。」

旅⼈がさらに歩いていくと、また別の男がレンガを積んでいました。
旅⼈はまた同じ質問をしました。
その男は答えました。「俺たちは歴史に残る偉⼤な⼤聖堂を造っているんだ。⼤変かって?とんでもない。ここで多くの⼈々が祝福を受け、悲しみを追い払うんだ!素晴らしい仕事だと思わないかい」

やりがいを感じさせる「仕事の意味づけ」

同じレンガ積みの仕事をしている3⼈のうち、仕事や⾃分の存在に意義を⾒出し、最もイキイキと取り組んでいるのは、何⼈目の職⼈だと思いますか? ⼀目瞭然だと思います。答えは3⼈目の職⼈です。
この話はさまざまな多くの仕事にも当てはまります。技を磨くという意味で、若⼿社員ならなおさら理解しやすいかもしれません。

3⼈目のレンガ積み職⼈のように、新⼈・若⼿社員⾃⾝が、⾃ら気付いて、⾃分に与えられている目の前の仕事(仮に雑⽤的な内容であっても)の意味を見出せるようになれば理想的ですが、なかなか難しいものです。そこで、その職場の中で、⾃分にその仕事が与えられている意味(⾃分の存在意義)を、周囲の⼈々(経営者や先輩社員)が気づかせてあげることが⼤切になります。
ここで⾔う「意味づけ」には、2つの側⾯があります。

【1】 " 職場全体の中で” その仕事をすることの意義

【2】 " ⾃分にとって” その仕事をすることの意義


この両⽅が重要です。

以下は、○○という仕事の意義を気づかせるためのコミュニケーション例です。
【1】 「○○は⼀⾒地味な仕事だけど、お客様はそういう細かい点を⾒て企業の良さを判断しているんだよ。だから非常に重要なことなんだ。しっかり頑張ってね。」

【2】 「○○をミスなく完璧にこなせるようになれば、今後難しい□□というサービスにもすごく活きる技が磨けるよ。君の成⻑にとって、とても⼤事なことだと思うよ。」

そして何より重要なのは、新⼈・若⼿社員に仕事の意義を気付かせる側(経営者や先輩社員)が、仕事に対して⾃分なりの“よい意味づけ”ができていなけれ ば、それこそ意味がありません。
まずは、「⾃分にとって仕事とは?」「この職場にいる意義は︖」について、⾃分⾃⾝に問いかけることから始めてみてはいか がでしょうか。

(学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所 研修企画⽀援センター 関 和之)