今こそ、求められる「コネクティブ・リーダーシップ」
第5回 「コネクティブ・リーダーシップモデル」の各スタイル(2)

今こそ、求められる「コネクティブ・リーダーシップ」<br>第5回 「コネクティブ・リーダーシップモデル」の各スタイル(2)

前回は、「コネクティブ・リーダーシップモデル」内の「ダイレクト(直接的)セット【Direct】」、「インストルメンタル(人的資源の最大活用)セット【Instrumental】」について概要を確認しましたので、今回は、最後のカテゴリセットである、「リレーショナル(関係的)セット【Relational】」を確認します。

コネクティブ・リーダーシップモデル図

リレーショナル(関係的)セット【Relational】

「リレーショナル(関係的)セット」では、 直接・間接を問わず他者を支援することにリーダーは自身の歩調を合わせようとします。リーダーは、他者の目標やビジョンに自身を結び付けることを必要とします。「ダイレクト(直接的)セット」ではリーダー自身の目的・目標に焦点を当てていたのと対照的に、「リレーショナル(関係的)セット」では、他者の目標やタスクに焦点を当てます。

「リレーショナル(関係的)セット」内の アチービング・スタイルには、「協力的な関係(Collaborative)」、「貢献的な関係(Contributory)」、「他人の身になって感じるような関係(Vicarious)」があります。

協力的な関係(Collaborative)

このスタイルを取るリーダーは、グループで成果を出すこと、チームの一員であること、共に働く仲間同士で芽生える友情を好みます。チーム活動は刺激的なものです。ホットグループもここに関連します1。ただし、チームでの協力活動は常に笑顔でいられるものではなく、時にメンバー間において緊張関係や摩擦、軋轢といったものにも直面することも、この行動スタイルを取る人は認識しています。
そして、緊張関係、摩擦や軋轢といったものが発生したとしても、それらに対処していく術を分かっています。目標達成へ向けて、個々人のチーム内での役割や進め方は異なりますが、成功した時の賞賛や報酬、あるいは活動がうまく行かなかった時の否定的な結果を皆で共有していきます。

  1. ホットグループについては、書籍「最強集団 ホットグループ奇跡の法則―成果を挙げる『燃えるやつら』の育て方」(2007)東洋経済新報社を参照

貢献的な関係(Contributory)

このスタイルを取るリーダーは、どちらかというと舞台裏で活動することを好みます。他の誰かの成功に貢献しようとします。自身が貢献したことに関して他者に知られるかどうかはあまり気に留めません。たとえば、大統領や首相のスピーチライターのようなものです。大統領や首相がよいスピーチを成功させることが、スピーチライターの成功です。時にスピーチライターは、自分自身でもスピーチするだけの能力は十分有しているものの、舞台裏での活動をより好みます。他者が成功する方法を提供します。

他人の身になって感じるような関係(Vicarious)

このスタイルを取るリーダーは、他者が達成しようとする夢や目標を理解し、まるで自分事のように同一視します。たとえば、親が、子どものテスト結果に喜んだり、逆に落ちこんだりするようなものです。スポーツチームのファンのようでもあります。スポーツ選手が点数を取れば、まるで自分が取ったかのような感覚にもなります。他者の成功を誇りに思います。他者の活動に自ら着手する直接的な貢献ではなく、メンターやコーチのように、情緒面も含むサポートやアドバイスを行うといった間接的な貢献をします。

以上が「コネクティブ・リーダーシップモデル」の9つのスタイルです。多くのリーダーは、これら9つの中でも、2つ~3つのスタイルを使用するに留まってしまっています。また、状況や目的に適しているか否かに関わりなく、リーダー自身が親しんだスタイルに収まりがちです。
これら9つのスタイルはすべて重要なものです。リーダーは、自身が置かれている環境にある手掛かりを読み解き、目的や状況に適したスタイルを選び出し活用していくことが重要です。リーダーシップをよりよく発揮していくためには、9つのスタイルの活用範囲を広げることが求められます。

ここまで、全5回を通じて、ジーン・リップマンブルーメン教授の提唱するコネクティブ・リーダーシップを元に、リーダーのあり様やリーダーシップの発揮スタイルについて述べてきました。今回のご紹介は、あくまでもコネクティブ・リーダーシップの入口にすぎないものの、私たちが組織におけるリーダーシップを考えるうえでのヒントがちりばめられているのではないでしょうか。

新たな時代が訪れている現下の状況こそ、リーダーは、過去行ってきた解決策に頼るだけではなく、あらゆる人たちが協働しこれまでにない活動を生み出すチャンスとして、この状況を生かしていくことが期待されています。

執筆者プロフィール

中村 浩史
(Hiroshi Nakamura)

学校法人産業能率大学 総合研究所
経営管理研究所 主幹研究員 総合研究所准教授

  • 九州大学 教育学部 教育心理学科 卒業
  • 九州大学大学院 人間環境学研究科 行動システムコース 修士課程修了

現在は、様々な業種において、職場マネジメント研修、リーダーシップ研修、組織改革推進指導に従事。リーダーシップや職場活動向上に寄与する国内外の知見を研究中。

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中村 浩史