今こそ、求められる「コネクティブ・リーダーシップ」
第4回 「コネクティブ・リーダーシップモデル」の各スタイル(1)

今こそ、求められる「コネクティブ・リーダーシップ」第4回 「コネクティブ・リーダーシップモデル」の各スタイル(1)

今回は、コネクティブ・リーダーシップモデルにおける、各スタイルの概要を見ていきます。

「コネクティブ・リーダーシップモデル」内の「アチービング・スタイル」は、大きく「ダイレクト(直接的)セット【Direct】」、「インストルメンタル(人的資源の最大活用)セット【Instrumental】」、「リレーショナル(関係的)セット【Relational】」、という3つのカテゴリセットがあり、それぞれに3つのスタイルがあることを前回確認しました。

コネクティブ・リーダーシップモデル図

「ダイレクト(直接的)セット【Direct】」はコネクティブな時代以前から広く使われてきたものです。そして、「インストルメンタル(人的資源の最大活用)セット【Instrumental】」と「リレーショナル(関係的)セット【Relational】」は、「ダイレクト(直接的)セット【Direct】」に加えて、今の時代に必要なものです。

ダイレクト(直接的)セット【Direct】

「ダイレクト(直接的)セット」は、歴史的にこれまで多くの場面で使用されてきた行動スタイルのセットです。自身のタスク(課題)や目標に関して、直接、自ら行動していきます。仲介者を入れることはあまりありません。自分でやってしまおうとする行動傾向と言えるでしょう。

「ダイレクト(直接的)セット」内の アチービング・スタイルには、「内発的・本来的(Intrinsic)」、「競争的 (Competitive)」、「パワー(Power)」があります。

内発的・本来的(Intrinsic)

この行動スタイルは、個人の内的な基準に基づきます。課題に対して、パーフェクトであろうとします。自分の内的な基準をもとに成果を測ろうとします。チャレンジを好み、自分で取り組もうとします。過去の自分と比較して今日の自分はどうか、とより良くあろうとします。

競争的 (Competitive)

この行動スタイルは、個人の外的な基準に基づきます。すなわち、他者の成果よりも、より良くあろうとします。ここでは自分がパーフェクトであるかどうかにはあまり関心がなく、他者と比較して、一番であることが目標になります。他の誰よりも自分がより良いものを成し遂げることが関心の的です。

パワー (Power)

この行動スタイルは、支配権を握ることであり、他者やプロセス、そして資源を組織化し統制しようとします。他者に仕事を委任する際も、全般的な統制やリーダーシップを保持します。混沌状態から秩序を生み出します。目的へ向けて各種手段を統制するので、良くない側面としては、マイクロマネジメント(無駄に細部まで細かく管理しようとすること)になってしまうことがあります。

これら、「直接的(ダイレクト)セット」は過去の時代ではよく見られました。しかし、今、私たちは新しい時代に入っており、他のスタイルが求められます。

インストルメンタル(人的資源の最大活用)セット【Instrumental】

「インストルメンタル(人的資源の最大活用)セット」は、タスク(課題)や目標を達成するために、自身や周囲の人々を活用しようとする行動スタイルのセットです。
ただし他者を一方的に操ろうとするのではなく、他者に依頼し、許可を求めたりしながら物事を倫理的で公明正大に進めます。他者には、必要としていることを明確に伝えます。コネクティブ・リーダーは、常に倫理的であり、信頼できる行動を取ります。他者を不正に扱うようなことはありません。

「インストルメンタル(人的資源の最大活用)セット」内のアチービング・スタイルには、「自身の資源の活用(Personal)」、「相互の資源の活用(Social)」、「相手の資源を信頼し任せて活用(Entrusting)」の3つのスタイルがあります。

自身の資源の活用(Personal)

このスタイルを取るリーダーは、自身が持つあらゆるものを活用します。たとえば、自身の知性や身体的な魅力を活用したり、ユーモアや気転を利かせたりします。意図的に衣装やジェスチャーを活用しながら、他者の警戒心を解いていきます。説得することや、交渉すること、あるいは仲立ちすることなどが得意であり、リーダー自身のタスク(課題)に導くよう、他者を魅了します。

相互の資源の活用(Social)

このスタイルのリーダーは、他者とのネットワークを活用します。例えば、個々人についてどんな経験をしてきて、どんなスキルを持っているか、どんな教育や訓練を受けてきたか、どんなネットワークを持ち共有できそうか、年齢や家族といった背景を覚えておき、それらを活用します。タスク(課題)や目標を達成する上で助けを必要とする場合には、ネットワークの中から、その状況に適した人をピックアップして活用します。

相手の資源を信頼し任せて活用(Entrusting)

このスタイルのリーダーは、他者に対して期待を示しつつ、リーダーシップを発揮します。その他者が過去にその業務を遂行した経験があろうとなかろうと期待を示します。そして、信頼し任せていきます。任された相手はその期待に応えようと行動していきます。任された相手が過去に業務を遂行した経験がない場合には、すでに経験がある人のやり方を越えて、より革新的な方法を生み出し遂行していくことも見られます。

第4回では、「ダイレクト(直接的)セット【Direct】」、「インストルメンタル(人的資源の最大活用)セット【Instrumental】」における個別スタイルを見ました。
次回(最終回)は、「リレーショナル(関係的)セット【Relational】」のスタイルについての概要を確認します。

執筆者プロフィール

中村 浩史
(Hiroshi Nakamura)

学校法人産業能率大学 総合研究所
経営管理研究所 主幹研究員 総合研究所准教授

  • 九州大学 教育学部 教育心理学科 卒業
  • 九州大学大学院 人間環境学研究科 行動システムコース 修士課程修了

現在は、様々な業種において、職場マネジメント研修、リーダーシップ研修、組織改革推進指導に従事。リーダーシップや職場活動向上に寄与する国内外の知見を研究中。

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中村 浩史