今こそ、求められる「コネクティブ・リーダーシップ」
第1回 パンデミックの今、求められる「コネクティブ・リーダーシップ」

はじめに
2020年秋、米国では大統領選挙が行われ、国家のリーダーとはどうあるべきか、どのようなリーダーが必要なのかといった議論が各所で展開されました。我が国も同年、内閣総理大臣の交代がありました。
米国、我が国、共に国家のリーダーに注目が集まっていますが、かつて米国のカーター政権時代、ホワイトハウスで国家運営に携わったリーダーシップ論の大家の一人に、ジーン・リップマンブルーメン教授がいます。
ジーン・リップマンブルーメン教授は、あのピーター・F・ドラッカー教授が絶賛した人物とも評されます。ドラッカー教授により何度も要請された後、ドラッカースクールに招聘され、35年間にわたりリーダーシップ論、組織行動論、クライシスマネジメント等を研究・指導しました。また、組織行動論の父として著名なスタンフォード大学で教鞭を執ったハロルド・J・レヴィット教授と、数十年にわたる共同研究を行い、独自のリーダーシップ論を開発しています。そして、このリーダーシップ論はこれまで世界各国で学ばれ、ご自身も各国のリーダーシップ教育を展開してきました。
さて、今、世界は、新型コロナウイルス感染拡大により未曾有の危機的状況に陥り、様々な問題が各所で発生しています。これまで経験したことのない困難な局面を乗り越えるヒントを、ジーン・リップマンブルーメン教授の提唱するリーダーシップ論を一つの道標としながら、探ってみたいと思います。
「コネクティブ・リーダーシップ」が成果を創出する
ジーン・リップマンブルーメン教授は、全世界が直面するパンデミックの今こそ、「コネクティブ・リーダーシップ」が求められていると強調しています。「コネクティブ・リーダーシップ」とは、ジーン・リップマンブルーメン教授が提唱するリーダーシップ論の一つです。それは、異なる人々をつなぎ合わせる、すなわち、異なる目標、関心、信念、経験、能力を持った人たちが協働する新たな機会を創出し、成果創出へ向けて活動を推進するリーダーシップです。
このリーダーシップによりメンバーは活動する上で、これまでのやり方に囚われない、状況を的確にとらまえた新たな手法を生み出していきます。日本国内も、パンデミックにより、不安や恐怖心が広がり、今後へ向けた見通しも立たないといった状況が見られます。そんな中、各人に光を感じさせ、周囲を新たなステージへと連れていこうとするのが、「コネクティブ・リーダーシップ」と言えるでしょう。
必要となる「高潔さ」
「コネクティブ・リーダーシップ」を発揮する「コネクティブ・リーダー」に付随する特性として、「高潔さ」があるとジーン・リップマンブルーメン教授は述べています。ピーター・F・ドラッカー教授のことをご存じの方は、ドラッカー教授が述べた「真摯さ」と繋がるものをお感じになるかもしれません。
ジーン・リップマンブルーメン教授によると、利己主義なリーダーの時代は終わりを告げ、広く世の中に貢献しようとする高潔さを持ったリーダーの時代が訪れているとのことです。
世界がつながる中で、コロナをはじめとした危機的状況を乗り越えていくには、利己主義的観点を廃し、互いに、崇高な目的のもとに集うメンバーを束ねるようなリーダーが期待されます。自分たちのメリットだけにとどまらず、広い範囲に向けてメリットを生み出すことができるようなリーダーとも言えるでしょう。

あらゆるものがつながる時代のリーダーシップ
コロナとの付き合い方が分かってくる今後、様々な資源がつながるこれからの時代においては、「コネクティブ・リーダー」の活躍が期待されます。昨今、IoTなどをはじめ技術の進展により、あらゆるものがつながる時代になってきました。技術の進展は、ICTにより人同士がつながることを可能にしただけではなく、つながりを強いるような状況をも作り出しています。
そうなると、ともすると、人や組織同士がぶつかり、対立するような不調和が生まれやすくなります。そのような不調和や葛藤を乗り越え、つながりをいかに良い形で実現することができるかがポイントとなります。つながりをよい形で生み出そうとすることも「コネクティブ・リーダーシップ」と言えます。
では、「コネクティブ・リーダーシップ」とは、具体的にどのようなものであるのか、次回以降、4回にわたってジーン・リップマンブルーメン教授の見解をご紹介しながら、これから求められるリーダーシップについて検討していきたいと思います。