ミドルマネジャーの人事実態調査2023

ミドルマネジャーの人事実態調査2023

調査概要

産業能率大学総合研究所とHR総研(Profuture株式会社)は、日本企業の人事・教育部門の担当者を対象に、ミドルマネジャーに関する人事施策の実態調査を実施しました。
当調査では、課長職に相当するミドルマネジャーのモチベーションやスキルを人的資本価値と定義し、それらを向上させるために有効な人事施策を明らかにすることを調査の目的としています。

  • 調査期間  2023年5月22日~6月13日
  • 調査方法  インターネット調査
  • 調査対象  日本企業の人事部・人材育成担当者・責任者
  • 有効回答  331件

注目データ

(1)2022年度の教育費および管理職向け教育費は「横ばい」が約半数

2021年度と比較した2022年度の「教育費」と「管理職向け教育費」について、増減状況を尋ねました。
「教育費」「管理職向け教育費」ともに、「横ばい」の企業が半数を占めました(それぞれ53.2%、51.7%)。また、「管理職向け教育費」を設けていない企業も1割強ありました(11.5%)。

2021年度と比較した2022年度の教育費・管理職向け教育費2021年度と比較した2022年度の教育費・管理職向け教育費拡大

(2)職場構想力や事業戦略を立案する能力が求められている傾向

ミドルマネジャーの能力開発ニーズは、2010年から一貫して「部下を育成する力」が最も多くなっています。
より特徴的と言えるのは、2018年まで10位以下であった、「職場の構想を描く力」が12位から2位に急浮上し、その他にも「事業戦略を立案する力」(17位→5位)、「新しい事業・ビジネスを構想する力」(19位→9位)、「ものごとを決める力」(11位→10位)など、上位戦略を職場に展開する戦略的な思考や構想力が必要になってきているようです。

ミドルマネジャー(課長)の能力開発ニーズの経年劣化(順位)ミドルマネジャー(課長)の能力開発ニーズの経年劣化(順位)拡大

(3)マネジャーの問題解決を支援するコミュニケーション施策が課題

ミドルマネジャーに対するコミュニケーション施策の実施状況を尋ねたところ、肯定的な回答が多かったのは、「人事部門に寄せられた従業員の声をマネジャーにフィードバックしている(53.8%)」、「マネジャーには、人事部門から会議や研修を通じて人事方針を徹底して伝えている(49.3%)」でした。
否定的な回答が多かったのは「マネジャーの仕事上の問題や悩みを解決するために、コーチング等の支援施策を整備している(46.9%)」でした。
人事部門からミドルマネジャーに対して、従業員から寄せられた声への対応や、人事方針の伝達はできているものの、コーチング等マネジャーの問題解決を支援するための施策は講じられていない企業が多い傾向となりました。

人事部門とミドルマネジャーのコミュニケーション人事部門とミドルマネジャーのコミュニケーション拡大

(4)ミドルマネジャーの能力開発・育成が十分でない現状が浮き彫りに

全項目で、否定的な回答の割合が肯定的な回答を上回る結果となりました。ミドルマネジャー向けの能力開発・育成施策は十分とは言えない状況にあるようです。
比較的、肯定的な回答が多かったのは、「業務上改善を要するマネジャーに対して、OJTや研修等の教育訓練を行っている(37.4%)」でした。一般従業員だけでなくマネジャーに対しても、OJTや研修等による能力開発を行っている企業は一定割合でありそうです。
特に否定的な回答が多かったのは、「マネジャーが、高度な資格や学位(修士・博士)が取得できるよう、支援制度(費用援助や休暇付与等)を整えている(62.0%)」、「マネジャーの知識や技能が要求される水準を満たしているかどうか、定期的に確認している(52.3%)」でした。
人的資本経営において、博士等の高度専門人材の活用や、経営戦略の達成のために必要となる人材要件とのスキルギャップを把握することが求められていますが、企業が対応できていない現状が浮き彫りになりました。

ミドルマネジャー向け能力開発・育成施策ミドルマネジャー向け能力開発・育成施策拡大

(5)マネジャーの教育投資や、高度専門性の取得支援が不足

ミドルマネジャーの知識やスキルについて尋ねたところ、肯定的な回答が否定的な回答を上回ったのが「マネジャーは自身の知識、技術、ノウハウの陳腐化に対処し、知識や技術の水準を維持している(35.6%)」、「マネジャーの業務に関する知識や技術、ノウハウは、同業他社と同等以上の水準にある(33.8%)」でした。
マネジャーは業務知識やスキルの学習に努めており、同業他社を上回っていると自信を持っている企業がやや多い傾向となりました。
否定的な回答が肯定的な回答を上回ったのが、「マネジャーの高度な資格や学位(修士・博士)の取得の保有率は、2021年度と比較して上昇している(53.2%)」、「マネジャーへの研修時間は、2021年度と比較して上昇している(34.2%)」でした。マネジャーの高度資格や学位の取得が進んでいない状況や、マネジャーへの教育研修の投資は伸び悩んでいる状況が伺えました。マネジャーへの学習機会の提供が、企業の課題と言えるでしょう。

ミドルマネジャーの知識・スキルミドルマネジャーの知識・スキル拡大

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報告書では、能力開発の他、賃金や労務等の人事諸制度に関する調査データや、これらの人事諸制度とミドルマネジャーのモチベーションやスキルの関連性について、詳細な分析結果を掲載しています。
マネジャーの人的資本価値を向上させるための有効な人事施策とは何か、報告書で詳しい内容をご確認ください。

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担当:マーケティングセンター 高橋