シリーズ「各国の駐在妻が見た、新型コロナと現地の今」【第4弾】アメリカ・イリノイ州

新型コロナウイルス感染拡大に直面する世界の駐在妻がリポート! ~駐在家族たちは、今、何に戸惑い、何を思っているのか~

執筆者プロフィール

浅見 明美
(あさみ・あけみ)

銀行の融資課にて個人ローンをメインに担当
マレーシア クアラルンプール滞在
第1子出産のため日本に10か月滞在
アメリカシカゴ郊外在住

夫、3歳と0歳の娘の4人家族。新しい場所を開拓することが好きで、カフェや公園、図書館、イベントを探しては出かけています。語学(英語)の勉強も好きで、目標は英語でジョークを言えるようになること!まだまだ遠い道のりですが、コツコツ頑張っています。

感染者数の急増、現在も収まらず。

私は今、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ郊外で、日本人駐在員が多く住むシャンバーグという街に住んでいます。

新型コロナウイルスの感染拡大により、3月21日午後5時、外出禁止令(ロックダウン)が施行されました。当時州内の感染者数は750人程でしたが、1か月経った現在(4月24日)は3万9千人を超え、ほぼ毎日1,500人以上の新たな感染者が出ています。
外出禁止令も当初3週間程の予定でしたが、5月31日まで延長。学校については、今年度の休校が決定しており、元の生活に戻れる目途は立っていません。

ロックダウン発令直後、最も心配していたことは食料品や日用品の供給が続くか否かでした。
実際、買い占めが起こり、一部の食料品や日用品の棚はすべて空っぽという日が続きました。
しかし、それも1週間経ったころから徐々に回復し、現在は、消毒薬などを除けば、ほぼ手に入れることができます。

休業中で使われていない店舗の駐車場に車がズラリ。向かい側にある自動車屋の在庫だとか。リーマンショックのときも似たようなことになっていたそうです。
飲食店は店内営業はできないので、どうにかお客さんに来てもらおうと必死です。店舗前で注文を取っているお店
横断幕を作って営業を知らせるお店

ソーシャルディスタンスは意識して守られている

アメリカは、日本に比べて人との距離が近い国です。街中で友人に会えば、挨拶のキスやハグをしている場面をしょっちゅう目にしたものです。
しかし、そういった光景は今や街中では全く見られなくなりました。今回の新型コロナウイルスの流行により、1.8m以上のソーシャルディスタンシングの指示が出されたためです。

スーパーでは入場制限やレジスタッフとの間に透明のアクリル板を設置したり、レーンを一方通行にしたり、顧客同士や店舗スタッフとの距離を保てるように工夫をしています。

スーパーの入口のドアにもソーシャルディスタンシングのアナウンス
(左)スーパーでレジ待ちの場所を知らせるスティッカー
(右)スーパーのレーン一方通行とソーシャルディスタンシングを促すスティッカー

散歩中であってもマスクをし、人とすれ違うときは大きく避けるなど、フランクなコミュニケーションを楽しむアメリカとは思えぬほど、ガラリと雰囲気が変わってしまいました。
それでも、配達員への感謝の言葉をドアに掲げたり、コミュニティに向けたメッセージや絵を家の前に描いたりするなど、この困難な状況下でもお互いに励まし合っています。
大人数で飲み会を開いて逮捕された人もいますが、社会全体としては、きまりを守って乗り越えようという姿勢が強く、一致団結の雰囲気を感じ私も励まされています。

国や州の迅速さと決定力、そして学校やコミュニティの臨機応変さ

今回の新型コロナウイルス感染拡大におけるアメリカの対応は、個人的にとても頼もしく感じました。
経済的損失が免れないなか、ロックダウンを実行する決定力、また大人1人あたり最大13万円の現金給付を可決から2週間程度で、申請などの必要もなく給付するという迅速さにとても感心しました。

また、学校の柔軟な対応にも驚いています。
娘の通うプリスクールでは、普段コンピューターを使うことはありませんが、ロックダウンによる休校の長期化が決定すると、すぐにオンライン授業の実施と毎日のレッスンプランが届きました。
外出できないのなら家でできることはないか、学校としてできることはないか、手探りながらも状況の変化に怯むことなく、子どものことを考えてくれている学校に感謝しています。

子どもはオンライン授業で先生やお友達と会えることを楽しみにしていますし、親としても学校で学んでいることを知ることができ、とても助かっています。

学校のグラウンドも閉鎖

小さなことにも楽しみを見いだす!

自宅待機が始まる前は、一体どんな生活になってしまうのか、とても不安でしたが、 いざ始まってみると、意外に早くこの生活にも慣れてきました。
1週目は、私も子どもも生活リズムが掴めず、イライラすることが多かったのですが、2週目に入るとリズムを掴み、「親子で成長する機会にしよう!」と前向きに日々過ごしています。

娘は、お菓子づくりやお料理、ひらがななど、新しいことに挑戦しています。私も負けずに、新しいお料理やパンづくりに励んでいます。

一番の変化は、小さなことにも楽しみを見いだし、外に刺激を求めず「自分で刺激をつくる」ことを考えるようになったことです。
今あるもので何ができるか、必要以上に持ちすぎていないかを考え、生活を見直す好い機会になっています。

森林公園は散歩の人が沢山訪れる
プレイグラウンドは使用禁止

振る舞いを正す!

今年2月、ニューヨークでマスクをしていたアジア人女性に対する暴行事件が発生しました。
今でこそアメリカ人もマスクをしていますが、以前はアメリカでマスクをしていると、重病人扱いされ白い目で見られていました。
日本人にとっては予防のためのマスク着用が、アメリカ人にとっては普通ではないということ、そして今はその「違い」が事件へと繋がってしまう可能性があることを、ニューヨークの暴行事件で思い知りました。

今までは、早く現地に馴染みたくて、アメリカの文化や習慣の違いを受け入れ、真似をしてきましたが、今は自分が被害に遭わないために必要なことと捉えています。自分の振る舞いが他のアジア人ひいては日本人への差別に繋がる可能性もあるということを肝に銘じ、外での振る舞いには、特に気をつけています。

治安の悪化を懸念

イリノイ州では3月下旬にロックダウンとなり、現在のところ5月末まで解除のないことを決定していますが、それも延期されるのではないかと言われています。
長期化への不安とともに、家族の心身の健康に一層気を配っていかなければなりません。
また、新型コロナウイルスの影響でアメリカの失業者が記録的ペースで増加、刑務所内での集団感染を防ぐために、一部で受刑者の釈放を行ったと報道がありました。ロックダウン前の3月には銃の売上が増えたとも聞き、加えて外出制限に対する抗議デモが各地で相次いでいるので、今後、治安が悪化するのではないかと懸念しています。

普段は交通量が多い交差点も車はまばら

自宅待機の生活はストレスも疲れもありますが、家族の絆はずっと強くなり、お互いが成長していることを感じています。とはいえ感染者数が一向に減らず、予断を許さない状況に不安がないわけではありません。少しでも早く収束に向かうことを祈るばかりです。

(2020年4月24日 アメリカ合衆国)

  • このコラムは、『駐妻カフェ』を運営する〈グローバルライフデザイン:飯沼ミチエ氏代表〉にご協力いただきました。