シリーズ「各国の駐在妻が見た、新型コロナと現地の今」【第1弾】アメリカ・カリフォルニア州

新型コロナウイルス感染拡大に直面する世界の駐在妻がリポート! ~駐在家族たちは、今、何に戸惑い、何を思っているのか~

執筆者プロフィール

小川 理恵
(おがわ・りえ)

2005年〜2009年 地方銀行にて融資係を経験。
転勤族の夫との結婚を機に退職し、契約社員や派遣社員として大中小企業、官公庁など約10か所にて貿易事務、学校事務、金融事務を経験。勤務地は栃木県、大阪府、奈良県、広島県におよぶ。その間にライターとしてWebを中心に女性向け記事を執筆。
2019年12月 車メーカーに勤める夫の転勤により、1歳になる娘と3人でアメリカ・カリフォルニア州に初めての海外移住。
Barめぐりだった趣味が、子どもができてからは公園めぐりに。

スタートしたばかりの駐在生活

4ヶ月前にアメリカ・カリフォルニア州に移住したばかりの私たちの生活は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、激変してしまいました。

住み始めたばかりの頃、平日は仕事の夫を見送った後、簡単な家事を済ませてから1歳になる娘と公園へ行くのが日課でした。
娘の機嫌がいいときはそのままスーパーへ足をのばし、足りない食材を買って帰ったり、コーヒーショップに立ち寄って一息ついたりと気ままな生活を送っていました。
休日は、家族で日系スーパーへ1週間分の食材を買いに行ったり、天気が良ければ、ビーチや国立公園へドライブしたり、アメリカでの生活を楽しんでいたものです。

ようやく生活にも慣れ始めた頃、新型コロナウイルスの感染が、ここカリフォルニア州にも着実に広がってきました。

自宅退避令(Stay at home order)の発動

そして、2020年3月19日、カリフォルニア州には自宅退避令(Stay at home order)が出されました。
そのとき、カリフォルニア州での感染者数は978人(在サンフランシスコ日本領事館発表)。
3週間経った今 (2020年4月8日) 現在、州政府が公表している感染者数は、16,957人となっています。

自宅退避とは言っても、生活必需品の買い物や、他人と6フィート離れていれば散歩も許されています。それは3週間経った今でも変わりません。

毎週末に行っていた日系スーパーへの買い出しは、それまで私の運転練習も兼ねて家族3人で行っていましたが、子どもがまだ小さいため夫だけが行くようになりました。
日系スーパーでは、店内の客が密集しないように、人数制限をするようになり、時間帯によっては行列ができています。

公園にも、多いときには1日に午前と午後の2回行っていましたが、現在は週1回となりました。しかも公園の遊具には黄色いテープが巻かれ遊べなくなっています。
1歳の子どもと、ほぼ毎日家の中だけで過ごさなければいけないので、子どもだけでなく私自身もストレスが溜まっていると感じます。

一方で、窓から外の様子を見ていると、犬の散歩をしている人やランニングをしている人、子連れの家族など、天気が良ければ何組も見かけます。顔馴染みの人たちが毎日何組も家の前を通り過ぎるのです。

顕在化した差別問題

一番心配していることは、新型コロナウイルスに感染することと同じくらいに“差別問題”です。

アメリカにはもともと白人至上主義者がおり、渡米してすぐのときも差別かな?と思うようなことがありました。それは雑貨屋さんで買い物をしていたときです。通常、レジでは店員さんが、「How are you?」と話しかけますが、会計を進めていても私には挨拶がなかったのです。少し気になり、次のお客さん(白人)への接客を見ていると、何事もなく挨拶を交わしていました。
私は、「アジア人だから挨拶をされなかったのかもしれない」と感じたものです。

差別と言ってもその程度で、危険を感じたことはありませんが、この新型コロナウイルスが蔓延してから、アジア人に対する差別から暴行事件などが多発しているとニュースで知りました。
欧米人から見れば、中国人も韓国人も日本人も区別がつきません。
小さい子どもを連れての外出はとても慎重になりました。
この新型コロナウイルスが収束したとしても、差別問題は別なところに原因があり、簡単にはなくならないだろうと思うし、むしろアジア人に対してより差別がきつくなると感じています。

今、できることを。

夫の会社では、自宅退避令が出たとき、すでに在宅勤務指示を出していました。
在宅勤務が始まってすぐに感染者が1人確認され、建屋の消毒と接触者には体温確認が行われました。近所に住む別の会社の日本人駐在家族は、会社から帰国指示があり、早々に日本に帰国しました。
それを聞き、明日は我が身だと思っていましたが、今のところ夫の会社からの帰国指示は出ていません。
また、別の会社に勤める日本人駐在家族には、家族のみ帰国指示推奨というものが出ており、その知人は全員、アメリカに残ることにしたと言っていました。
会社の指示もさまざまであるし、時期もさまざま、家族としての判断もそれぞれであり、何が正しいとは言えない状況であると思っています。

どこが安全なのか分からない中で、どうすべきか、どうしたいかを常に話し合っています。
結論としては家族が一緒にいること、感染しないように最大限努力することです。
会社からも、もし疑わしい症状が出たときには、どこに連絡するかなどの案内が出ています。
むやみに恐れることなく、心の健康にも気を使いながら過ごすようにしています。
最近は皆で動画を見ながらダンスをしています。運動不足にもなっているので、できるだけ体を動かすようにしていたら、塞ぎがちになっていた気持ちが少し明るくなってきたと感じています。
同時にカリフォルニア州における新規感染者が大幅に減少しているというニュースを見ました。

今は、1日でも早い収束を祈るばかりです。
どのような収束を迎えるか、まだまだ想像がつきません。
経済も国際関係も予想がつかない状況です。
新型コロナウイルスが発生する“前”と“後”において、人種差別が顕在化したアメリカ生活は、より人との距離に敏感になるだろうと感じています。
しかしながら、アメリカに来てまだ4か月程度。まだまだアメリカを満喫したいという思いもあります。収束したら、まずはデスバレーに行って思いっきり空気を吸いたいです。
またドライブできる日をただただ想像している毎日です。

(2020年4月8日 アメリカ合衆国)

  • このコラムは、『駐妻カフェ』を運営する〈グローバルライフデザイン:飯沼ミチエ氏代表〉にご協力いただきました。