【第2回】次世代リーダーの選抜型育成の位置づけと目的

第1回では次世代リーダーの選抜型育成の取り組み状況を概観し、「次世代リーダーの選抜型育成」は、多くの企業で実施されるよう⼀般的な取り組みへと移⾏し、取り組む企業の裾野が広がっている状況を確認しました。

第2回では、次世代リーダーの育成が、どのような位置づけで、どのような目的で⾏われているのかを⾒ていきましょう。

3割が⼈材育成上の最重要課題と認識

図1は「次世代リーダーの選抜型育成」の位置づけを尋ねた結果です。
⼈材育成上の最重点課題として位置づけている企業が3割、重点課題として位置づけている企業が約6割となっており、課題の重要性を認識している企業が多いことがわかります。
次世代リーダーの育成は、⼈材育成上の課題のみならず、経営課題の⼀つでもあることを考えると当然の結果といえるでしょう。
 

育成対象者に将来期待する役割は「職能部門トップ」、「企業経営者」が増加

では、そうした重点課題である取り組みにおいて、育成の対象となる⼈材に将来どのような役割を期待しているのでしょうか。

図2は,「選抜型教育を受けた⼈に対する将来の期待役割」を尋ねた結果です。最も多いのは、「職能部門トップ」(72.7%)、次いで「事業経営者」(62.8%)、「企業経営者」(48.8%)となりました。過去2回の調査結果と⽐較すると、「事業経営者」はほぼ横ばいで、「企業経営者」、「職能部門トップ」が増加しています。
 

規模が⼤きい企業ほど、将来「企業経営者」の役割を担うことを期待

もう少し詳しく⾒てみましょう。
図3は、企業規模で群分けして、次世代リーダーに期待する将来の役割として「企業経営者」を選択した企業の⽐率を⽐較したものです。これを⾒ると、「500⼈未満」は21.4%、「500⼈~1,000⼈未満」では21.1%と少数ですが、「1,000⼈~3,000⼈未満」では45.2%、「5,000⼈以上」では69.7%となっており、従業員規模が⼤きい企業ほど、選抜型教育を受けた⼈材に対して、将来の期待役割として企業経営者を想定している企業が多くなっています。
 

規模が⼩さい企業ほど、将来「職能部門トップ」の役割を担うことを期待

同様に、図4は、企業規模ごとに群分けして次世代リーダーに期待する将来の役割として「職能部門トップ(担当役員/職能部門⻑)」を選択した企業の⽐率を⽐較したものです。
「500⼈未満」で100%、「500⼈~1,000⼈未満」では78.9%、「1,000⼈~3,000⼈未満」では74.2%、「3,000~5,000⼈未満」では52.9%「5,000⼈以上」では63.6%でした。
すなわち、従業員規模が⼩さい企業ほど、選抜型教育を受けた⼈材に対して将来職能部門トップとしての役割を期待している企業の割合が多い傾向があるのです。
 

企業規模によって異なる目的

つまり、規模の⼤きい企業の場合は将来の期待役割として企業経営者までを⾒据えた育成を⾏っている傾向があり、⼀⽅、規模が⼩さい企業では、将来の期待役割として職能部門トップを想定した育成を⾏っている傾向があることになります。
⼀⼝に「次世代リーダーの選抜型育成」といっても、その目的がやや異なっている可能性があります。

これらの結果からは、次世代リーダーの育成における2つの流れが浮かび上がります。
⼀つは規模の⼤きい企業を中⼼に、経営⼈材(将来の⾃社の経営を担う⼈材)を育成しようとする取り組みです。もう⼀つは、規模の⼩さい企業を中⼼に、必ずしも経営を担うことまでを想定せず、将来の職能部門トップを育てようとする取り組みです。
取り組みの裾野が広がるにしたがって、「次世代リーダーの選抜型育成」の目的や位置づけにも違いが⽣じてきているのではないかと思われます。

実際に本学が関わらせていただく際も、経営を担う⼈材に焦点化せず、将来のゴールイメージとして、職能部門のトップの育成を目指した取り組みも少なくありません。いずれにしても、⾃社の現状を踏まえて、目的を明確にした上で、それに合わせたやり⽅を組み上げていくことが⼤切になります。

では、こうした多くの企業で⾏われる取り組みへと移⾏してきた「次世代リーダーの選抜型育成」では、実際どのように⾏われているのでしょうか。
次回は、次世代リーダーの選抜型育成の予算、対象、実施内容などについて⾒ていきたいと思います。