【第4回】次世代リーダー育成における選抜⽅法

前回は、次世代リーダー育成の予算や期間、実施内容について確認し、期間や実施内容からうかがえる、取り組みの本気度の違いについて解説しました。
第4回では、次世代リーダーの育成の対象者と選び⽅について、⾒ていきたいと思います。

⼈材像が定義・共有されていない企業も多い

選抜・育成にあたっては、どのような⼈材を必要としているのかという「⼈材像」を明確にし、組織的に共有しておくことが重要になります。
なぜなら、⼈材像が明確になっていないと目的があいまいになったり、利害関係者の間で認識にズレが⽣じたりしてしまうからです。
また、そもそも⼈材像が明確でなければどのような⼈材を選抜すればよいかを決めることも難しいでしょう。

では、実際はどうなのでしょうか。図1は、選抜・育成の前提となる「⼈材像」の定義を明⽂化しているかどうかについて、たずねた結果です。
「⼈材像が明⽂化されている」企業と「⼈材像が明⽂化されていない」企業はいずれも5割となりました。選抜型育成を実施していながらも、求める⼈材像を明⽂化していない企業が半数に達しています。
 
次いで、図2は、選抜・育成の前提となる「⼈材像」が組織的に共有されているかどうかについてたずねた結果です。
「⼈材像が組織的に共有されている」企業は4割強(43.3%)にとどまり、「⼈材像が組織的に共有されていない」企業が6割弱(56.7%)に達しています。
さらに、図3は選抜の際の基準が明⽂化されているかどうかを尋ねた結果です。
⼈材像が定義・共有されていない企業も多いことが影響してか、選抜にあたっての基準が明⽂化されていない企業はさらに多くなり、2/3(66.7%)を占めました。
⼈材像が定義・共有されておらず、選抜基準も明⽂化されていない中で選抜するのはなかかなか難しいように思えます。
では、実際にはどのように選抜しているのでしょうか。図4は選抜の⽅法を尋ねた結果です。中⼼となっているのは「過去の⼈事評価」と「ラインによる推薦」です。
実際に状況を聞くと、各部門のエース級を推薦してもらい、⼈事部門で⼈事評価等の結果を踏まえて、最終的に候補者を選ぶというケースが多いようです。
ただし、注意しなければならないのは、求める⼈材像が共有されていない場合、ライン部門の主観的な評価によって選抜することが妥当なのかということでしょう。
それぞれの部門ごとに異なる基準でメンバーを選んでしまう可能性が⾼くなります。また、現職務のパフォーマンスで選ぶ場合、それが次世代リーダーとしての資質を表すものかどうか、慎重に検討する必要もあるでしょう。
選抜型育成では、育成も重要ですが、「誰を対象とするか」という部分が非常に重要になります。
こうした点を考えると、それぞれの企業で今⼀度選抜のあり⽅を問い直していただくことも必要ではないでしょうか。

ちなみに、選抜において公募を⾏っている企業は少数派です。
図5は、選抜型育成において公募を実施しているかどうかを尋ねた結果です。過去の結果と⽐較して若⼲の変動はありますが、2割前後で推移しています。
選抜型育成については、選抜されなかった⼈への配慮などから、必ずしも積極的に社員に対して情報を公開しない企業も少なくないことから、公募というやり⽅はあまり広がらないのだと思われます。
さて、このようにあいまいな基準の中で⾏われている選抜ですが、そもそもどのような対象に対して⾏われているのでしょうか。
次回は、選抜の対象について⾒ていきたいと思います。