【第5回】次世代リーダー育成の対象

前回は、次世代リーダー育成の選抜基準や⽅法などにについて確認し、あいまいな基準で選抜を⾏っている企業が少なくない状況を確認しました。
第5回では、次世代リーダーの育成の対象と、育成後の状況について⾒ていきたいと思います。

対象は「部⻑クラス」・「課⻑クラス」・「⼀般社員クラス」

図1は、育成対象者の選抜において、選抜の対象としている階層についてたずねた結果です(複数回答)。
最も多かったのは「課⻑クラス」(63.6%)で、以下「部⻑クラス」(47.9%)、「⼀般社員クラス」(38.8%)が続いています。「特に階層を限定していない」とする企業は2割弱(17.4%)ありました。

過去の調査結果と⽐較すると、「課⻑クラス」と「⼀般社員クラス」を対象とする企業の割合がわずかながら増加しており、より下の階層を対象とする企業が増加しつつある可能性も考えられます。
 

複数階層での実施が主流

次に実施階層数を⾒てみましょう。
図2は、次世代リーダー育成を狙った、選抜型教育を実施している階層数をたずねた結果です。
最も多かったのは「3階層以上」で47.1%を占めています。以下「2階層」(34.5%)、「1階層」(18.5%)が続きます。
過去の調査結果と⽐較してみると、3階層以上実施している企業が⼀貫して増加しており、選抜型育成において多階層における実施が進んできている様⼦が⾒て取れます。

上記の結果を合わせてみると、次世代リーダー育成においては、「部⻑」・「課⻑」・「⼀般社員」の3階層を対象に選抜と育成を実施している企業が多いといえそうです。
将来の次世代リーダーを育てるために、複数階層にわたって、段階的に育成していく仕組みを構築しているわけです。
 

対象者を継続的なウォッチしておらず、点の教育に留まる企業も多い

しかし、その⼀⽅で気になる点があります。
図3は次世代リーダーの選抜型育成を受けた⼈を対象とした⼈材プールの管理を⾏っているかどうかを尋ねた結果です。
⼈材プールの管理を「⾏っている」企業は4割強(44.5%)にとどまり、「⾏っていない」企業が半数強を占めました(55.5%)。
この結果からは、選抜型教育を受けた⼈を継続的にウォッチしながら経験を付与して中⻑期的な観点から育成していくような取り組みがなされていない企業が多いようです。
 
次世代リーダーをOff-JTだけで育てることはできません。育成システムの効果性を⾼めていくためには、選抜され、教育を受けた⼈材について、その後のパフォーマンスや成⻑度を把握し、次のステージに向けてさらなる選抜や育成を⾏っていくことが⼤切になります。
特に多階層で実施している場合は、そうした⼈材の継続的な管理の重要性が増します。

しかし、今回の調査結果を⾒ると次世代リーダーの育成が各階層の教育という「点」にとどまってしまっている企業が少なくないのではないかと思われます。
各階層の教育という「点」だけでは育成の効果は限られます。「点」をつなげ、「線」「⾯」として育成の効果性を⾼めていくために、選抜・育成された⼈材をプールし、その後も継続的にウォッチしながらさらなる選抜・育成を⾏っていく仕組みや運⽤を確⽴に取り組む必要があるのではないでしょうか。

ここまで、本学が実施した調査結果に基づいて、⽇本企業における「次世代リーダーの選抜型育成」の現状を概観してきました。
次回は、具体的な展開例をご紹介しながら、次世代リーダーの育成に取り組む上でのポイントについて検討していきたいと思います。