【第1回】「次世代リーダー育成の取り組み状況」 不⾜する次世代リーダー

そもそも「次世代リーダー」とはどのような⼈材を意味するのでしょうか。
「次世代リーダー」という⾔葉は多義的で、企業によっても様々な意味で使われていますが、ここでは、「将来、⾃社の事業や組織を牽引する⼈材」と捉えます。

こうした⼈材は企業の成⻑・発展を担う存在であり、「次世代リーダー」を確保できるかどうかは、企業の盛衰を左右するといっても過⾔ではないでしょう。

では、⽇本企業は、こうした「次世代リーダー」を⼗分に確保できているのでしょうか。
図1は次世代リーダーを⼗分に確保できているかどうかを尋ねた結果です。次世代リーダーを「⼗分に確保できていない」とする企業が8割弱に達しています。
将来の組織や事業を牽引する⼈材を⼗分に確保できておらず、次世代リーダーの不⾜を感じている企業が⼤多数を占めることがわかります。
 
出所:学校法⼈産業能率⼤学総合研究所 『第三回「次世代リーダーの選抜型育成」に関する実態調査報告書』2012

グローバル化が進む企業に強い不⾜感

もう少し詳しく⾒てみましょう。
図2はグローバル展開度[※1]の違いによる、次世代リーダーの充⾜度の違いを⽐較したものです。
次世代リーダーを「⼗分確保できている」とする企業は、「グローバル展開なし群」が33.7%、「グローバル展開度低群」が17.0%、「グローバル展開度⾼群」が15.1%となっています。
すなわち、グローバル展開が進んでいない企業に⽐べて、グローバル展開が進んでいる企業の⽅が、次世代リーダーを「⼗分確保できていない企業」が多いわけです。

グローバル展開に伴って、事業の範囲が広がり、組織が分散化していく中で、事業や組織を牽引するリーダーの必要性は⾼まります。
しかし、組織や事業を牽引するリーダーの育成は⼀朝⼀⼣にできるものではありません。
事業や組織の成⻑にリーダーの育成が追いついていない状況か⽣じている企業が多いのではないかと思われます。
 
出所:学校法⼈産業能率⼤学総合研究所 『第三回「次世代リーダーの選抜型育成」に関する実態調査報告書』 2012
[※1] 「海外に拠点を設置している国の数」が0カ国の企業を「グローバル展開なし群」として抽出し、それ以外の企業(「海外に拠点を設置している国の数」が1カ国以上の企業群)のうち、「海外拠点設置国数5ヵ国以上、海外⼦会社数5社以上の企業」を「グローバル展開度⾼群」、「海外拠点設置国数1ヵ国以上5ヵ国未満および海外⼦会社数1社以上5社未満の企業」を「グローバル展開度低群」として抽出した。

実施企業は⼀貫して増加

このように、多くの⽇本企業が次世代リーダーの不⾜感を抱く中、「次世代リーダーの選抜型育成」に取り組む企業は増加しています。図3は「次世代リーダーの選抜型育成」の実施状況について、過去2回の調査結果と⽐較したものです。

実施企業は、2006年から⼀貫して増加しており、2012年度は50.6%と半数を超えました。さらに、現在実施していない企業でも、そのうちの半数は「今後の実施を予定」していると回答しており、実施企業と実施予定企業を合わせると、実に7割超(71.5%)に達しています。
次世代リーダーの選抜型育成は、多くの企業で⾏われる⼀般的な取り組みとなりつつあり、取り組む企業の裾野が広がってきているのです。
 
出所:学校法⼈産業能率⼤学総合研究所 『第三回「次世代リーダーの選抜型育成」に関する実態調査報告書』 2012

多くの企業で⾏われる⼀般的な取り組みに

さらに、取り組みの開始時期を⾒てみると、2000年前後から取り組み始めた企業が増加していることが⾒て取れます。
また、その⼀⽅で直近3年間に取り組み始めた企業の割合が1/3強に達しています。近年取り組みを始めた企業も少なくないことがわかります。
 
実際に本学に対するご相談でも、「他の優先課題があり、これまで⼿をつけてこなかったが、そろそろ検討を始めたい」、「他社の取り組み状況を知ったトップから我が社も検討するよう、指⽰があった」など、これまで慎重であった企業が取り組みを始めるケースが少なくありません。
こうした場合、⼤切なことは、「他社がやっている」からというスタンスではなく、⾃社の取り組みの目的を明確にした上で、目的に沿った仕組みや内容を検討していくことです。そうした意味で、本学が⽀援させていただく際には、まず背景や目的等を共有させていただくことが始まりとなります。

では、こうした多くの企業で⾏われる取り組みへと移⾏してきた「次世代リーダーの選抜型育成」は、実際どのような位置づけで⾏われているのでしょうか。企業によって目的や位置づけに違いはあるのでしょうか。

次回は次世代リーダー育成の目的や位置づけなどについて⾒ていきたいと思います。