Z世代新入社員の仕事に対する価値観の特徴を探る
筆者プロフィール
はじめに
Z世代とは?
Z世代とは、1990年代中盤から2010年代初頭にかけて生まれた人々を指す言葉です。
この世代は、生まれたときからインターネットやデジタル技術が身近に存在する環境で育ち、「デジタルネイティブ」とも呼ばれ、テクノロジーを自然に取り入れる能力が高いとされています。情報の取得やコミュニケーションの手段として、スマートフォンやSNSを日常的に使用しています。
本記事の目的と概要
この記事では、2023年3月~4月に実施した「2023年度 新入社員の会社生活調査(第34回)」の結果と私のこれまでの研修講師としての経験をもとに、Z世代の新入社員が仕事に対してどのような特徴の価値観を持っているのか、そしてこの世代とどのように関わって行くべきなのかについて考察します。
調査結果から読み取るZ世代の価値観
それでは、「2023年度 新入社員の会社生活調査(第34回)」の結果を踏まえ、Z世代である2023年の新入社員の特徴を確認していきましょう。
「働く」上で重要だと感じること
あなたは「働く」上で、どのようなことが自分にとって重要だと感じますか(3つまで選択可)という質問に対して、「長期間、安心して働けること(50.9%)」、「仕事を通じて自己成長を遂げること(46.2%)」が上位にきました。
副業に対する関心
副業制度について、「利用したい(40.8%)」と回答した割合が過去最高を記録しました。「どちらかといえば利用したい(41.1%)」も合計すると、副業に興味があるという人が8割以上に上りました。
企業選びの基準
働く上で企業に求めるものは何ですかという設問(当てはまるものをすべて選択)では、「長期的な安定性(67.4%)」、「将来の成長性(53.2%)」が上位にきました。
自己啓発への取り組み
就業時間外や休日において、どの程度の時間を自己啓発に充てたいかでは、「年10時間以上20時間未満(14.6%)」が最も多い結果となりました。
これらの結果から、「生活基盤を安定させることを優先し、成長可能な企業で働き、できれば副業で収入を増やしたい。そのためにも自己成長に努めよう。自己啓発には月に1~2時間充てよう。」という意識が読み取れます。将来への不安感が際立ちますが、自己投資については多少甘い見通しも感じられます。また、プライベートの時間もしっかり確保したいという意識も見て取れます。
研修現場から見えたZ世代の特徴
次は定性的な側面から新入社員の特徴を考察していきます。私は、毎年新入社員研修や新入社員フォロー研修に多数登壇しており、延べ1,000人以上の新入社員と接点機会があります。そこで感じたことは以下のとおりです。
将来不安はとにかく強い
「このままでよいのか」「他の同期と比べてどうなのか」「将来どうなるのか全く想像がつかない」といった意見が多いです。
受講者に対してその背景を確認すると「仕事の任され方や成長実感のなさ」によることから来ているようです。一方で、すでに仕事を任され、活躍し始めている方はしっかりと次のステップもイメージできています。
現実的、あるいは冷めている
暗い話題が多いためか、前向きな活力に満ちた人は少ないです。「生活のために仕事はしっかりやる」といった声が多く聞かれます。それが自分自身に言い聞かせるような発言であることも感じます。あまり高望みしない姿勢は現実的とも言えますが、同時に冷めた印象も受けます。
あいまいさに不満・不安を持つ
期待はしないようにしつつも、しっかりと不満は持っています。「上司の指示があいまいだ」と不満を吐露します。事前に目的や手順を明確に説明されないことがストレス源のようです。「自分から質問すればいいのでは?」と言うと、不満気な表情を浮かべながら「そうですね」と回答します。自分から行動を起こすという考え方になかなか至らないようです。
想像力は高い
研修内で自由度の高いワークをおこなうと、ユニークなアイデアが多く、こちらの予想を大幅に上回るアウトプットを出してくれます。この世代の可能性を引き出すためには、遊び心を持たせるための仕掛けや働きかけが重要になりそうです。
Z世代の新入社員との関わり方を見直す
Z世代の新入社員の特徴や価値観を理解した上で、どのように関わっていくべきなのでしょうか。
この世代との適切な関わり方について詳しく見ていきましょう。
ネガティブな意識の背景を探る
私が新入社員と接する中で、「仕事に対して期待を持てない」という意見をよく耳にします。そのような状態を打破するために、ネガティブな発言が社内で飛び交っていないか?会社全体で閉塞感を醸し出していないか?新入社員の周辺の社員が「どうせ結果は変わらない」「頑張っても給料は上がらない」といった発言をしていないか?など、新入社員を取り巻く環境について再評価してみることをおすすめします。
期待と挑戦の機会を提供する
また、新入社員に対して「過度にリスクを避け、確実にできる仕事しか振らない」「無理をさせないようにしよう」という姿勢が見えないでしょうか?期待をかけられなければ、新入社員はなかなか自ら行動に移すことはありません。
時には困難な仕事を与えるなど、挑戦の機会を提供することも必要です。
上司・先輩としての役割を再考する
上司や先輩としては、新入社員を丁寧に教育したいという気持ちは分かります。しかし、閉塞感を打開し、向上心を引き出すような行動を自ら示すことも大切です。私たち教育する立場の人間も、常に‘何ができるかʼという前向きな意識で仕事に取り組み、新入社員の鑑になる行動を心がけたいものです。
まとめ
さて、これらの内容を踏まえ、皆様の組織では新入社員の期待にどれだけ応えられるでしょうか。また、どれほど期待に応えようと考えていますか。
人材育成の視点から考えた場合、新入社員に「成長感」を感じさせることが望ましいと考えられます。また、成長感を持たせるためには、適切な成長環境を整える必要があります。
例えば、「OJT制度を効果的に機能させる」こともその一つです。「いやいや、OJT制度?今更?当社は昔から導入して、きちんと受け継がれているから問題ない」と考えるかもしれません。
しかし、それが今の状況や現代の世代のニーズに適しているのでしょうか。現場で関わる人たちは制度を本質的に理解し、適切に運用しているでしょうか。
自組織の状況を見て、うまくいっている職場とそうでない職場があると感じたら、その違いは何かを改めて問い直してみてください。
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