【第2回】共働き世帯が多い台湾の子育て事情とは?

【第2回】共働き世帯が多い台湾の子育て事情とは?

5月に、台湾の病院で第3子を無事に出産しました。
出産予定日を過ぎて生まれた我が子は、令和元年生まれとなりました。

さて、今回は、共働き世帯が多い台湾の子育て事情をお伝えします。

まず、私が台湾に来て驚いたことの1つが、「平日の公園に子どもがいない!」ということでした。
日本で育休中に行った公園は、親子で溢れていて、そこが社交場となっていたものですから、このギャップに私自身がとても不安になったものです。

後に、先輩駐在妻や台湾人から聞いたことは、「暑すぎて昼間は公園にいられない」、そして「パパもママも働いている」ということでした。
そんな台湾での公園デビューを体験し、台湾の共働き家族は日本よりも随分と多そうだなと感じたのです。実際に調べてみると、台湾の6歳未満の子どもを持つ共働き世帯率は6割を超えています(2012年時点)

台湾での子育ての様子は、生活する中で見えてきました。

シャボン玉で遊ぶ子供の写真。
シャボン玉遊びは台湾でも人気です。休日に広場に行くと巨大シャボン玉や風船を売る売店がたくさん出ています
公園の遊具の写真。
遊具写真は、台湾の公園に必ずある遊具です。むしろ、どこもこの遊具しかないので、変わりばえがありません(苦笑)

その1 『産後2か月で職場復帰?!』 ⇒ 台湾の産休・育休制度

台湾の多くの女性は産後休暇を2か月取得した後、職場復帰をするといいます。育児休業制度があっても、利用しない人も多いようです。
実際に友人や夫の同僚に話を聞くと、「収入減になることを避ける」という意見もあれば、「休職期間はキャリアアップにマイナス」という意見も聞きました。

台湾の労働基準法では、8週間の出産休暇(産前産後含む)を義務づけています。その間の賃金は、企業が通常通り支給することと明記されています。
多くの女性は、産前ぎりぎりまで勤務し、出産後に8週間の産後休暇だけを取得します。

世界一出生率が低い台湾では、政府も近年多くの施策を打ち出しており、2009年の法改正により育児休暇制度も有給化されました。
子どもが3歳になるまで、最大2年間の育児休暇を申請することができ、その間は雇用保険から最大6か月、給与の60%を受給することができます

しかしながら、私の見聞きしている範囲において、育児休暇制度に対する台湾人の認識は、日本で男性が育児休暇制度を利用するかどうか、という目線と似たものを感じます。

その2 『誰が子どもをみてくれる?』 ⇒ 乳児の預け先

生後2か月から子どもたちは、親以外の人の手を借りて育っていきます。それは、誰なのか?

0歳から2歳くらいまでの乳児の預け先は、「祖父母」「託児所(公立・私立)」「保母(ベビーシッター)」が一般的です。
もともと祖父母や親戚みんなで子どもを育てる文化がある台湾ですが、昨今は核家族化の進行により、他所に預ける人も増えています。そのため日本と同様、台湾でも託児所の不足が問題となっています。

そして日本ではあまり一般的ではない「保母」については、台湾では政府が資格を付与し、地域ごとに登録・管理しています。保母を探す際には、その管理センターに仲介をお願いすることができます。
保母の自宅にて複数人の保育をするという形が一般的ですが、日本のベビーシッターのイメージ同様、依頼者の自宅での保育という形も可能です。
私と同時期に出産した台湾人の友人は、3歳の長男を同じマンションに住む保母に預けており、産まれたばかりの長女も生後2か月から同じ保母に預けて職場復帰をしました。預けに行く時間がほとんど必要ないため便利だと話していました。

私自身は、昨年の妊娠中に、1歳の息子を託児所や保母に預けてみようかと検討しましたが、難しさを感じました。
理由の1つは、託児所はほとんど空きがなく、また週5日預かりが基本なので、短縮・単発利用ができなかったこと。2つめは、私の自宅でシッターを依頼する場合、雇用主として中長期間契約を結ぶことを求められ、駐在生活中に利用するには物理的・心理的ハードルを高く感じました。
(保母により契約方法や条件は異なるため、一概ではありません。複数人と面談した際の感想です)
共働きが主流だからこそ、駐在妻が必要とする一時的な保育サービスは少ないように感じます。

託児所の不足は日本同様問題となっていますが、保母の利用などで、待機児童の問題はあまり起きていないようです。費用面に関しても託児所、保母利用どちらでも同額の費用補助があるので、親の志向で預け先を選んでいることがうかがえます。

親子カフェの写真。
台湾には、「親子カフェ」と呼ばれる、遊び場がついたカフェがたくさんあります。休日などは大繁盛しています。写真のお店のように、食べる席とは別に遊び場を設置しているお店が多いです。砂場も公園にはないけど、カフェにはあったりします

その3 『誰が子どもをみてくれる?』 ⇒ 幼児の預け先

そして、2歳以降の預け先は、「幼稚園」が登場します。
満2歳から小学校に入学するまでの4年間、幼稚園に入園できます。私の娘も3歳から、息子は2歳から現地の幼稚園に通っています。

絵を描く子供の写真。
美術の時間の風景です

台湾の幼稚園は、日本の保育園と幼稚園のいい部分を持っているようです。
たとえば、

保育という点では、

  • 朝7時から夜19時近くまで預かってくれます。
  • 給食は、朝ごはん、昼食、おやつと1日3回あります。
  • 長期休みはなく、企業の休みとほぼ一致しています。

教育という点では、

  • 毎日カリキュラムが組まれています。早期教育に熱心なため、かなりみっちり学習する時間がある園が多いです。
  • 体育・美術・音楽・英語などは、専門の先生が教えてくれます。
  • クラスのカリキュラムは16時に終了しますが、その後希望者は習い事を幼稚園内で行うことが可能です。

このように、幼稚園内で保育から教育、また習い事といったプラスαのことまで完結できるというのは、働く親にとって、とてもありがたいのではないかなと感じます。

上述したように、台湾ではかなり教育熱が高まっており、私立幼稚園の費用も平均給与額から考えるとかなり高額な印象です。平均月額給与が約3万元といわれている中、園の利用料は月額1万元前後。それに加えて、年2回の登録料が1回あたり1万~2万元かかります。
このあたりの事情が、台湾では子どもを産むことを躊躇する理由になっていると友人は話していました。

お椀の写真。
幼稚園で使うお椀です。どこの幼稚園に行ってもこの3点セットを持っていきます(お椀に入るスプーン付き)。朝ごはん、昼ごはん、おやつをこれで食べます。ご飯におかずを乗せてたべて、なくなるとスープを入れてもらって食べるそうです。ちょっと想像がつかない食べ方ですが……

その4 『こどもが病気になった。どうしよう?!』 ⇒ 台湾の病院事情

台湾の病院の診察時間を見てびっくり!
診察時間を午前・午後・夜と設定していて、朝は8時から、夜は21時くらいまで診察可能な病院が多いのです。

幼稚園から帰宅した子どもに風邪気味の兆候がある場合、その日のうちに診察を受けて手当をしてもらえるため、治りが早いと感じます。
通院が必要な場合も、仕事の帰宅後に通えるのはとてもありがたいですよね。大人も子どもも、病気への対応がしやすいと感じています。

台湾の病院の写真。
病院の前には、子供の遊具(お金を入れると動く乗り物)が置いてあることが、けっこうあります

共通の文化性を感じることが多い台湾だからこそ、子育て中のちょっとした習慣や考え方の違いが発見できて、おもしろいです。

次回は、台湾での妊娠・出産体験について。
「妊娠・授乳中はマンゴーを食べないほうがいい」など、たくさんの禁止事項を台湾人のあらゆる人から(道行く人からも)教えてもらいながらの妊娠出産生活は、台湾人の温かさと人情味をとても感じる機会となりました。
そんな生活の様子や、出産後の産後ケアセンターの様子など、どんな妊婦・産褥生活だったのかお話ししたいと思います。