「職場の蘇生」~先手を打つ管理者こそが、活力ある職場を創り出す~【第5回】
第5回 「『適“所”適材』から『適“材”適所』への移行」
第5回では、人材の配置、「適材適所」という観点から、強い組織作りへ向けてさらに検討を行います。
1.「適“所”適材から適“材”適所へ」
まずは、これまでの組織内の状況を見てみたいと思います。
これまでの組織実態として、「(時代や状況によってあまり変わらない)仕事がまずあって、そこに人を当てこみ、その仕事に見合うような人へと育てていく」スタイルが多く見られました。ある程度歴史のある企業組織であればことさらです。
しかしながら、環境変化が速くなることなどから、求められる仕事そのものが変化しやすくなってきています。
そうすると、 “仕事を固定的に(既定的に、所与のものとして)捉える”という前提でだけでは、間に合わなくなってきました。
他方、組織状況として、“職場メンバーの増員ストップやメンバーの削減”といったような、以前と比べ、人員の余裕が益々なくなってきています。多くの組織では以前のように、「仕事が増えたから、人数を増やせ」と安易に手を打つことが出来なくなってきています。人員的な面に置いても、コストを出来ればかけたくないわけです。
そのような状況のもと、現場活動を担う管理者は、組織の要請に基づき、諸々の職場コストをできるだけ削減しながら、職場を運営しています。
組織全体の活動や自職場活動の効率化を進めるべく、各種施策やツールが導入されてきている自社の現状を見渡すと、ご納得される方も多いのではないでしょうか。
ただし、管理者の置かれている状況としては、一方で、以前と変わらず成果を求められています。コストはかけずに、成果を出してほしい、と。いや、コストをかけずに、以前よりも高い成果を求められるようにもなってきています。
こうなってしまうと、これまでのように仕事を“固定的・所与的に捉え”、“その仕事にメンバーを当て込んでいく”だけではなく、“一人ひとりのメンバーを活かし、活動の幅を広げて、人というリソースをさらに活用していく”余地を検討していかなければいけなくなってきます。同じ一人のメンバーにかかる人件費、活用の仕方で、職場の成果創出への寄与度が高まれば、職場にとってもメリットです。
また、このような状況も含め、様々な原因で、“仕事”と“人”とのアンマッチが見られるようになってきています。そうすると、“仕事”と“人”のマッチングを改めて見直していかなければいけません。アンマッチが原因で管理者とメンバーの関係も悪くなり、メンバー本人もやる気をなくしてしまっては職場にとっても本人にとっても良くはありません。
メンバーが働きがいを感じながら、主体的に業務を遂行できる方が、職場にとっても良いことです。職場の成果を高めることへ向けて、そして、本人の働きがいを創出する意味でも、“仕事”と“人”とのマッチングについてその前提を見直していかなければいけなくなってきています。
このようなことから、「(職場内の限られた)メンバー一人ひとりをしっかりと見極め、いかに活かしていくか、どんなことができそうなのかという人の可能性を探る形で、仕事を設計していく」スタイルがより求められるようになってきています。
これまでの組織実態として、「(時代や状況によってあまり変わらない)仕事がまずあって、そこに人を当てこみ、その仕事に見合うような人へと育てていく」スタイルが多く見られました。ある程度歴史のある企業組織であればことさらです。
しかしながら、環境変化が速くなることなどから、求められる仕事そのものが変化しやすくなってきています。
そうすると、 “仕事を固定的に(既定的に、所与のものとして)捉える”という前提でだけでは、間に合わなくなってきました。
他方、組織状況として、“職場メンバーの増員ストップやメンバーの削減”といったような、以前と比べ、人員の余裕が益々なくなってきています。多くの組織では以前のように、「仕事が増えたから、人数を増やせ」と安易に手を打つことが出来なくなってきています。人員的な面に置いても、コストを出来ればかけたくないわけです。
そのような状況のもと、現場活動を担う管理者は、組織の要請に基づき、諸々の職場コストをできるだけ削減しながら、職場を運営しています。
組織全体の活動や自職場活動の効率化を進めるべく、各種施策やツールが導入されてきている自社の現状を見渡すと、ご納得される方も多いのではないでしょうか。
ただし、管理者の置かれている状況としては、一方で、以前と変わらず成果を求められています。コストはかけずに、成果を出してほしい、と。いや、コストをかけずに、以前よりも高い成果を求められるようにもなってきています。
こうなってしまうと、これまでのように仕事を“固定的・所与的に捉え”、“その仕事にメンバーを当て込んでいく”だけではなく、“一人ひとりのメンバーを活かし、活動の幅を広げて、人というリソースをさらに活用していく”余地を検討していかなければいけなくなってきます。同じ一人のメンバーにかかる人件費、活用の仕方で、職場の成果創出への寄与度が高まれば、職場にとってもメリットです。
また、このような状況も含め、様々な原因で、“仕事”と“人”とのアンマッチが見られるようになってきています。そうすると、“仕事”と“人”のマッチングを改めて見直していかなければいけません。アンマッチが原因で管理者とメンバーの関係も悪くなり、メンバー本人もやる気をなくしてしまっては職場にとっても本人にとっても良くはありません。
メンバーが働きがいを感じながら、主体的に業務を遂行できる方が、職場にとっても良いことです。職場の成果を高めることへ向けて、そして、本人の働きがいを創出する意味でも、“仕事”と“人”とのマッチングについてその前提を見直していかなければいけなくなってきています。
このようなことから、「(職場内の限られた)メンバー一人ひとりをしっかりと見極め、いかに活かしていくか、どんなことができそうなのかという人の可能性を探る形で、仕事を設計していく」スタイルがより求められるようになってきています。
このことを、“既定の「所」(仕事)があってその「所」(仕事)に、合わせる形で「材」(人)を当て込み、業務遂行や人材を育成する”前提から、“「材」(人)があって、その「材」(人)をより活かすような形で「所」(仕事)を当て込んでいく(創り出していく)”前提へシフトしていると捉え、「適“所”適材」の時代から、「適“材”適所」の時代へと移ってきた、と捉えます。
現状として、このようなことが明白であるにも関わらず、企業現場では未だ、既定・所与の業務ありきでメンバーのアサインを行うことも多々あり、その結果、将来性も含めて、職場の成果創出のロスを生み出していることは、あまり気づかれていないようです。
既定・所与の業務ありきで、その効率化を前面に押し出すことが、メンバーを締め付け、メンバーのモチベーションを低下させ、仕事とのアンマッチをも引き起こしてしまっている状況への対処はあまり問題視されていません。コスト対効果をメンバーの活用と合わせて考えていかなければいけないと考えています。
これまで以上に一人ひとりのメンバーを見て、その特徴を活かしていくことが職場にとっても、本人にとっても、必要となってきているわけです。
既定・所与の業務ありきで、その効率化を前面に押し出すことが、メンバーを締め付け、メンバーのモチベーションを低下させ、仕事とのアンマッチをも引き起こしてしまっている状況への対処はあまり問題視されていません。コスト対効果をメンバーの活用と合わせて考えていかなければいけないと考えています。
これまで以上に一人ひとりのメンバーを見て、その特徴を活かしていくことが職場にとっても、本人にとっても、必要となってきているわけです。
「メンバーを把握すること」の必要性を改めて確認~“材”を見る
本コラム第2回における「メンバーを把握すること」のねらいとして「メンバーをさらに活用するための情報収集」を挙げましたがそれは、「適材適所」を実現するために必要となります。
職場内の各メンバーは、「どのような“材”なのか。長所や短所はどのようなもので、その人らしさとはどのようなものか」などを、現在の本人の志向や希望ととともに把握しておくことです。
職場の「先」から考える今後の業務 ~“先”を見ること
本コラム第3回で「先」を管理するのが管理者の仕事について述べたことともつながりますが、「先」(職場全体の今後)をイメージできないと、目前の業務のみに視野が限定された上でメンバーのアサインを検討する傾向が強くなってしまうため、メンバーの活用可能性を限定してしまうことにつながってしまいます。
「先」(職場全体の今後)を踏まえた上で、今後どのような業務が職場には求められるのかなどをイメージアップすることが前提となります。そしてそれに伴う、業務の明確化です。
ですので、職場の今後向かう方向性を想定した上で、職場に今後必要と想定されるであろう業務を検討します。一方で、メンバー一人ひとりの特徴を把握していきます。そして、メンバーがよりいかされるような仕事を、設定し、つくり出していきます。
その際には、本人にとってもやりがい、働きがいを感じられるものか、職場・組織の成果創出につながるものかといった観点から見ておきます。
[観点]
・【本人】にとって、やりがい・働きがいを感じ成長が促進されるものか
~チャレンジがあり、本人の適性・志向を踏まえたものか。
・【組織】にとって、成果が創出されるものか
~将来構想の実現へ向けて、寄与する仕事になっているか。
職場の成果創出に結びついたものとして見えているか。
「先」(職場全体の今後)を踏まえた上で、今後どのような業務が職場には求められるのかなどをイメージアップすることが前提となります。そしてそれに伴う、業務の明確化です。
ですので、職場の今後向かう方向性を想定した上で、職場に今後必要と想定されるであろう業務を検討します。一方で、メンバー一人ひとりの特徴を把握していきます。そして、メンバーがよりいかされるような仕事を、設定し、つくり出していきます。
その際には、本人にとってもやりがい、働きがいを感じられるものか、職場・組織の成果創出につながるものかといった観点から見ておきます。
[観点]
・【本人】にとって、やりがい・働きがいを感じ成長が促進されるものか
~チャレンジがあり、本人の適性・志向を踏まえたものか。
・【組織】にとって、成果が創出されるものか
~将来構想の実現へ向けて、寄与する仕事になっているか。
職場の成果創出に結びついたものとして見えているか。
では、“人”と“仕事”のマッチングの重要性をさらに確認するためにも、ここで、仕事のアサインの仕方によって、人が積極的にも消極的にもなることについて、触れておきます。
3.“積極的な人”、“消極的な人”と一概に決められない ~“意図的な”活用
「あの人は積極的な人だ」、「あの人は消極的な人だ」と、ついつい固定的に捉えてしまっていませんでしょうか?
企業をご支援させていただく中で、「あの人は~のような人だ」、「あの人は、~のような人だ」、と何か決まりきっているかのように、形容される場面に時々遭遇します。
人は性格など実際に変わりづらいものはありますが、積極的な人(積極的行動)か、消極的な人(消極的行動)かに関してまでもが固定的に捉えられているということです。
もともと人は積極的にもなり、逆に、消極的にもなる可能性があるものです。そして、どちらに転ぶかは状況による部分が大きいのです。
下記のような場面はないでしょうか?
企業をご支援させていただく中で、「あの人は~のような人だ」、「あの人は、~のような人だ」、と何か決まりきっているかのように、形容される場面に時々遭遇します。
人は性格など実際に変わりづらいものはありますが、積極的な人(積極的行動)か、消極的な人(消極的行動)かに関してまでもが固定的に捉えられているということです。
もともと人は積極的にもなり、逆に、消極的にもなる可能性があるものです。そして、どちらに転ぶかは状況による部分が大きいのです。
下記のような場面はないでしょうか?
例1は、消極的な人が積極的に変わっていった例であり、例2は積極的な人が消極的に変わっていった例です。
どのような組織でも一度は見かける光景でしょう。
これらの光景が偶発的に発生していることも多いようです。
例1のように消極的な人が積極的になればよいのですが、例2のように積極的な人が消極的になってしまうと組織にとってはリソースの活用上のロスになってしまいます。
そして、消極的行動を取っている人に対し、「そもそも消極的な人だ」という一面的な見方をしてしまうと、さらにその後の活用の可能性を狭めてしまう、ということにもなってしまいます。
ですので、“意図的に”、例1のような消極的行動を取っている人を積極的な行動へと移していく、例2のような積極的な行動を取っている人が消極的な行動に変わってしまう状況を出来るだけ少なくしていく、あるいは可能性を探っていくことが職場・組織にとっても必要となります。
当たり前ではあるものの、職場マネジメントの現場では、この“人は積極的にも消極的にもなりうる”ということが、いつの間にか軽視されていることが多いようです。
もちろん、人が積極的になるか消極的になるのかは、職場での人間関係など、他の要因からも影響を受けます。しかし、アサインの仕方は無視できない大きな要因ですので、ここで改めて、確認しました。
4.まとめ
~メンバーを活かすか活かさないかは職場・仕事・組織
環境変化が激しく、人員数に余裕がなくなってきている職場には、よりよい職場運営を進める上において、「仕事」と「人」のマッチングは重要なことです。
今回お伝えしたことは、
“材”(人)を見て
“先”を見て(職場の将来構想、職場のゴールを捉えて)、
“材”(人)を活用する形で、“所”(仕事)をマッチングしていく(創り出していく)
ことを通じて、メンバーのやりがいや積極性を引き出す一方で、組織としても将来へ向けた成果創出へと結び付けていく“適材適所”を実現させていくということでした。 今回お伝えしてきたことは、年度替わりの時期、年度初めに、あるいは、各メンバーの目標設定を行っていく際に有効です。 では次回は、最後に、ここまでのまとめを行います。
(学校法人産業能率大学 経営管理研究所 主任研究員 中村 浩史 氏)
- テーマは変更することがあります。予めご了承ください。
- 著者の所属・肩書きは掲載当時のものです。