中国の経済と商機を追う(第2回)

中国の消費者を深耕するため、外資系企業も中国系企業もさまざまな試みをしているが、その前提として、中国市場の特徴を理解することである。

特徴の1つとして、中国市場は巨大で、まだまだ成長するマーケットであるが、競争は熾烈である。
もっと注目すべき点は中国の消費者も成熟し、洗練されていくことである。

中国の消費者は、日本の洗練された消費者に比べ、満足しやすいし、我慢も強い。外資企業(日系ではない)のPCや車、同じ故障で10回以上の修理に耐えるようなことがあっても、品質の悪い食品や日常用品を買っても我慢する。
一方、良いサービスに出会った時に、容易に感動し、忠誠も尽くす。

しかし、世界のブランドが競う場になった中国市場において、中国の消費者はいい意味で速いスピードで成熟・洗練してきている。海外ブランドだからというだけで高く売れるようなマーケットはだんだん縮小する傾向である。

とくに、沿海都市においては、その代わりに、確実に安全、安心、便利、サービスの質を求める欲求が高まってきている。この兆しは、今後中国で競争力を高めるカギとなり、商機にもなる。
ホンダのアフターサービスの「見える化」や、イトーヨーカドーやセブンイレブン、イオン、ユニクロといった日系企業のサービスの丁寧さ、センスの良さ、安心感などでは、中国の消費者に定評があり、優位を保っている。

一方、中国国内企業は、信頼と丁寧なサービスに目覚め始めているので、競争が激化することも予想される。
もう1つの特徴は地域間の違いが大きいことである。

中国は、国土が広く、地域の風土も違う。消費市場において、かなり多様で、複雑である。
「多階層」の顧客に、「多価格帯」の商品ラインと「多種類」の商品開発での対応力が要求される。
ある都市で成功したとしても、他の都市で同じように成功するとは限らない。なぜなら、地域間、世代間において、価値観、収入、生活習慣、好みなどに大差があるからである。
収入だけを例にすれば、中国の富裕層の30%は沿海地域の4大都市北京、上海、広州、深センに集中し、50%は10大都市に偏っている。米国のそれは25%という。
価値観に関してさまざまであるが、「80後」(1980年以降に生まれた人たち)と言われている世代はマーケティングのターゲットにされやすい。「80後」は親の世帯の貧しい生活を経験せずに育った人が多く、個性的で、生活を楽しむことを優先する世代と思われている。貯蓄よりも消費にカネを惜しまない「月光族」(毎月の給料を使い果たす人たち)とも呼ばれる。しかし、この「80後」も結婚、育児年齢になるにつれて、成熟し、ライフスタイルも変わりつつある。
また、同じ沿海都市でも消費意識が違う。麦考林の調査によると、同じ女性向けの商品を販売しても、北京の女性は上海の女性より20%多く買ってくれる。上海の女性はいい意味では賢く買い物をする。

ほかに、実店舗の衰退とネットビジネスの成長、観光や映画、他の娯楽の成長もある。

次回は、日系企業を含む外資企業の中国市場での工夫を紹介する。

(産業能率大学 経営学部 教授 グローバルマネジメント研究所 所員 欧陽 菲)

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