中国の経済と商機を追う(第3回)

消費者が成熟・洗練するスピードが速い市場においては、チャンスを掴むため、現地の各階層、各地域の消費者に密着して柔軟かつ迅速に対応できる経営システムが重要である。

外資企業にとって、自社の事業インフラと事業の現地適応とのバランスが重要である。

中国では、マクドナルドが統一したマニュアルの経営スタイルに徹するのに対し、ケンタッキーフライドチキン(KFC)は、標準化を重視しながらも、朝食におかゆのメニューを設けて、現地のニーズに柔軟に対応する経営スタイルになっている。これが強みになって、KFCは中国での店舗数はマクドナルドの3倍近く多い。

P&Gと資生堂は強いグローバルブランドを中国市場に浸透させながら、現地の消費者を研究し、現地化商品の開発に力を注ぐ。

セブンイレブンは、基本的に長年にわたり蓄積した本社ノウハウといった事業インフラを柱にしている。
それは、競合他社や現地のフォロワーが店の表面だけ見ても簡単にまねできないために有効である。同時に、現地市場への最適化対応も無視していない。
中国で展開している店では、「快餐島」(ファストフードコーナー)を設け、12種類のメニューを用意し、中華料理なら、炒め物、日本料理なら煮物・焼き物、揚げ物が主流で、迅速に温かい出来立て料理を販売している。食事の時間になると、ホワイトカラーの人々が列を作る。
本社のインフラと現地の最適化とのバランスが良かったのか、中国のコンビニエンス業態の中で、セブンイレブンの日販額(北京)がトップである。

中国のマーケットは、日本より多様かつ複雑で、地域によって、まるで違う。
イオンの青島店(山東省)や北京店が消費者に支持されている。中国の1号店の青島店の売り上げは世界のイオン店舗の中で、1、2を争う繁盛ぶりである。店舗を展開するにあたって、本社の理念や方針、コンセプト、システムをしっかり守りながら、現地の最適化を図っている。
青島店も日本と同様に、大型店舗に総合性を備える、モータリゼーション社会を見据えた出店方針であるため、商圏のまだできていない地域に出店するケースが多い。あまりにも先を見ているせいか、最初は誘っても有名企業や知名ブランドは入ってこないことがしばしば起こるという。

一方、中国は、日本のようにライフスタイルは標準化されていない。地域・商圏ごとに、認知するブランドも、好みの味も、場合によってチラシのデザインも全部違う。日本や中国の他の店との情報・ノウハウの共有化を最大限に図りながら、出店する地域の消費者をさまざまな方法でアプローチをし、現地に最適なマーケティング戦略を練る。品揃いでは、日本はもちろんのこと、他店舗のモデルを全く参考にできない場合もある。青島店と同じ山東省でありながら、「永旺淄博購物中心」(イオン淄博ショッピングセンター)の周辺は、農民、公務員、勤め人という客層が多い。

イオンは、それぞれのサンプルの顧客に「どうすれば店に来てもらうか」を調査し、時間帯によって差別的な品揃いとイベントを企画するといった巧みさと機敏さで対応する。安さの要望と時間の余裕がある農民層に対しては、朝市を、夜しか来店のできない勤め人に対しては、夜市を;公務員に対して休日にファミリーを対象としたイベントを開催する。

次回は、顧客を取り込む中国企業の工夫を紹介する。

(産業能率大学 経営学部 教授 グローバルマネジメント研究所 所員 欧陽 菲)

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