「社員の声を汲み上げる」JR東日本グループが実践するボトムアップ型人材育成事例とは?
今回、国内屈指の鉄道インフラをもつ東⽇本旅客鉄道株式会社の⼈財戦略部の後藤様と樋⼝様に、経営ビジョンの実現を⽬的とした⼈材育成⽅針の策定、またそれと連動した⼈材育成施策の取組みについてお話を伺いました。
東⽇本旅客鉄道株式会社 概要
1987年4⽉1⽇、⽇本国有鉄道(国鉄)が⺠営化されて発⾜。2021年4⽉1⽇現在現在の社員数は49,780名。1⽇当たり12,000本を超える列⾞を運⾏する輸送サービスのほか、駅ビル、ホテルなどの⽣活サービス、Suicaを中⼼としたIT・Suicaサービスなど、ヒトの⽣活における豊かさを起点とした新たな価値の提供を⽬指している。
この⽅々にお話をうかがいました
⼈財戦略部 ⼈財育成ユニット(⼈材育成)
マネージャー 後藤 光 ⽒
駅・⾞掌・運転⼠を経験し、IT・Suica事業、総合企画本部(経営企画)等を経て2021年より現職
⼈財戦略部 ⼈財育成ユニット(⼈材育成)
樋⼝ 雄治 氏
駅・⾞掌・運転⼠を経験し、JR東⽇本総合研修センター、⽀社⼈事課を経て2018年より現職
3つの事業ドメインにより「信頼」の基盤を構築
私たちの強みは、⽣活インフラを⽀える重層的で“リアル”なネットワークとヒトの交流の拠点となる駅などを持ち、⾸都圏を中⼼に、ヒト・モノ・カネ・情報が交流・蓄積していることです。
この独⾃の強みを活かし、技術⾰新や、移動・購⼊・決済のデータ活⽤により「ヒト(すべての⼈)」を起点に「安全」「⽣活」「社員・家族の幸福」にフォーカスし、都市と地⽅、そして世界を舞台に、“信頼”と“豊かさ”という新たな価値を創造していきます。
JR東⽇本グループのインフラを⽀える3つの事業
「輸送サービス」の強みは、東⽇本エリアに広がる重層的で“リアル”な鉄道ネットワークと⼈が交流を⾏う拠点となる駅などのインフラに加え、「安全」を裏付ける技術⼒を持っていることです。JR東⽇本グループは、社会インフラとしての役割を果たしていく中で、顧客や地域からの「信頼」を築いてきました。
⽣活サービスでは、輸送サービスで築いた「リアルに⼈が集い、動く場」である駅などを中⼼に、顧客や地域住⺠にとって魅⼒的な「くらしづくり(まちづくり)」を展開できる基盤が整っていることが⼤きな強みです。スタートアップとの連携や不動産事業など幅広い事業展開を進めつつ、地域や⾃治体との繋がり・ネットワークを活⽤し、「⼼豊かな⽣活」の実現を⽬指していきます。
IT・Suicaサービスの強みは、Suicaを中⼼としたデジタルネットワークを保有していることです。これまで鉄道ネットワークをベースに交通・決済のインフラとしてSuicaを拡⼤してきました。今後はMaaS、JREPOINTを加えたデジタルネットワークをさらに拡充し、部⾨を超えた新サービスの創造とデータを活⽤したOne To Oneアプローチによるマーケティングを実現していきます。
JR東⽇本グループの新たな経営ビジョン「変⾰2027」
JR東⽇本グループが推進するグループ経営ビジョン「変⾰2027」は、2018年の発表当時、⼈⼝減少やEコ マースを中⼼とした⼈々のライフスタイルの変化を踏まえ、10年後の未来に向けて我々⾃⾝のビジネスモデ ルを変⾰することを⽬指し策定しました。しかし、コロナ禍の影響により当初想定していた未来が突如、⽬ の前に現れたことから、この「変⾰2027」の実現に向けた取組みのレベルとスピードを上げ、ポストコロナ 時代に求められる新たなテーマに挑戦しています。
「変⾰2027」では、運輸セグメントとそれ以外のセグメントの営業収益⽐率を「6:4」に設定してますが、将来的には「5:5」の早期実現を⽬指すこととしました。多くのお客さまにご利⽤いただく鉄道や駅という限られた領域の中でサービスを展開することをメインとしてきましたが、今後、⼈が集まる機会や移動する機会が縮⼩していくことが想定されるため、お客さま⼀⼈ひとりに焦点を当てた価値提供に発想を変えていくことが重要になります。
当社グループは、輸送サービス、⽣活サービス、IT・Suicaサービスの3つの事業を有しています。お客さまのニーズに合わせ、これら3つの事業が重なる部分を広げ、それぞれが相乗効果を発揮させていくこと新たな価値を提供するサービスを創造することに取り組んでいます。
はじめに、経営ビジョン(変⾰2027)と⼈材育成⽅針を連動させる際に留意したことについてお聞かせください。
JR東⽇本グループ経営ビジョン「変⾰2027」では、「鉄道のインフラ等を起点としたサービス提供」から「ヒト(すべての⼈)の⽣活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値の提供」へと「価値創造ストーリー」を転換していくというものです。そのため、従来通りの⼈材育成ではなく、内向き志向の打破や新たな価値創造につながるような、これまでにない柔軟な⼈材育成をしていこうと考えています。
例えば研修教材についても、これまでは紙の資料を使っていましたが、柔軟な⼈材育成を⾒据え、全社員にタブレットを⽀給したうえで、紙の⽂化からデジタルデータの⽂化への転換をしています。ただ単にタブレットを⽀給するだけでなく、ITリテラシーを⾼めるために、タブレットを活⽤した研修の設定や、「SANNO e ACADEMY」のようなeラーニングを受講料全額補助のうえで導⼊する(※)など、さまざまな取り組みを進めています。
※2022年3月31日時点
ソフト⾯に加えて、ハードの⾯からもいろいろアプローチされているということですね。では、⼈材育成⽅針を策定する上で、どのようなことに苦労されましたか?
JR東⽇本グループ経営ビジョン「変⾰2027」では、従来の「鉄道のインフラ等を起点としたサービス」中⼼から、「⼈の⽣活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値の提供」へと⽅向性を転換しています。これを実現するためには、トップダウンだけでなく、社員の声を汲み上げるボトムアップ型のしくみも必要だと思います。⼈材育成⽅針の策定についても同様であると考えていますが、社員の声の集め⽅については苦労しました。やはり社員が求めていることを理解することが重要だと考えています。