なぜ、OJTがうまくいかないのか?【第2回 ゆとり世代の育て⽅-今、あらためて OJTを考える-】

【第2回】なぜ、OJTがうまくいかないのか︖

はじめに

前回のコラムでは、OJTについて考える前にまず、最近のいわゆる「ゆとり世代」と呼ばれる若⼿の傾向・特徴を整理してみました。
今回は、新⼊社員を受け⼊れ、育てる側の職場で今、どのような問題が起こっているのかについて⾒ていきたいと思います。

なぜ、OJTがうまくいかないのか︖

本学が2010年に⾏った調査によると、回答企業の9割近くがOJTを中⼼とした⼈材育成を⾏っているにも関わらず、現在OJTが「機能している」と回答した割合は1割強にとどまっており、「指導者の時間の確保が難しい」「指導者の能⼒が不⾜している」「⼈材育成の重要性が社内に浸透していない」といった問題がOJTの妨げになっている状況が明らかになっています。

最近では、OJTを受ける側である新⼊社員のメンバーシップ(教わり⽅)が問題視されるケースもありますが、皆さんの職場でもOJTがうまくいかない理由として挙がってくるのは、⼤半が「忙しい」「教え⽅が分からない」「(⼈を育てる)風⼟がない」といった声ではないでしょうか?
※出典:(学)産業能率⼤学 総合研究所(2010)「経済危機下の⼈材開発に関する実態調査」
しかし、皆さんももうお気づきかと思いますが、実はこうした状況はゆとり世代に特有の話という訳ではありません。

実際に、今から50年近く前、1966年の企業内教育に関する調査研究の中でも、OJTがうまくいかない理由として「実施する余裕がない(≒指導者の時間の確保が難しい)」「管理者の教育訓練の⽅針の認識如何(≒⼈材育成の重要性が社内に浸透していない)」「教える習慣が⾝についていない(≒指導者の能⼒が不⾜している)」と、今⽇と全く同じような理由が挙げられているのです。
※参照:(社)⽇本産業訓練協会(1966)「企業内訓練の効果的な展開-現状とその活⽤」
さらに、1967年に出版された『松下電器の部下指導(宮⽊勇著、⽇本経営出版会)』の中にも、次のような⼀⽂が記されています。

『今⽇これまで、⼈材育成の柱はOJTと部下本⼈の⾃⼰啓発であるといわれながら、あまり効果をあげてこなかったのは、OJTを⾏うために必要⽋くことのできない基本的な要件を整えることに、努⼒しなかったからである。』

つまり1960年代から既に、OJTがうまくいかない状況が⽇本を代表する⼤企業の中にもあったということです。これでは、OJTがうまくいかない理由をゆとり世代のせいだけにはできませんね。

最近は何かと、“相⼿がゆとり世代だからOJTが⼤変だ”という論調を目にすることが多いですが、前回『古(いにしえ)からくり返される、“最近の若い奴らは…”論争』でも触れたように、何もかも相⼿のせいにするだけでは何も解決しません。

さらに⾔えば、「忙しい」「教え⽅が分からない」「(⼈を育てる)風⼟がない」と⾔っている⼈たちが、もしそれらの問題が解決したとしたらきちんとOJTに取り組んでくれるかというと、これも怪しいところです。
OJTが機能しない原因を⾒定めることはもちろん重要ですが、それと合わせてOJTに関わるメンバーが当事者意識を持ち、“OJTにまつわる負の連鎖を今こそ断ち切る”という強い意志を持って取り組みを進めていかなければ、⾔い訳ばかりが増えて結局、何も変わらないという状況から抜け出ることは難しいのではないでしょうか?

おわりに:ではどうすれば、OJTがうまくいくのか︖

今回は、本学の調査結果を糸⼝として、OJTがうまくいかない原因について考察してみました。 次回は、“ではどうすれば、OJTがうまくいくようになるのか?”について、皆さんと⼀緒に考えていきたいと思います。