データで振り返る2024年度新入社員と企業の育成課題

2024年度の振り返りと新入社員育成のポイント

2024年度もいよいよ終わりが近づいてきました。今年もビジネスの世界ではさまざまな出来事があり、企業経営や働き方にも多くの影響を与えました。日銀のマイナス金利解除による資金調達や投資動向の変化、20年ぶりの新紙幣発行、賃上げの動きなど、日本経済に関する話題が注目されたほか、7月の東京都知事選や11月のアメリカ大統領選といった政治的イベントも、都政の方向性や国際経済、さらには日本企業の海外戦略に影響を及ぼす重要な出来事となりました。

こうした変化の中、企業の人材育成においても、新たな課題が浮かび上がった一年だったのではないでしょうか。今年の新入社員の育成は、皆様の会社ではどのように進められたでしょうか? 近年の若手社員は、デジタルネイティブ世代としての強みを持つ一方、対面でのコミュニケーションに苦手意識を持つ傾向があり、OJTの進め方やフィードバックの方法を見直した企業も多かったかもしれません。

そして、もうすぐ2025年度の新入社員が入社してきます。新しい世代の特徴を理解し、より効果的な育成方法を考えることが、企業にとってますます重要になっています。そこで、本学が昨年実施した「2024年度 新入社員の会社生活調査(第35回)」の内容から、改めて2024年度の新入社員の特徴を振り返り、2025年度の新入社員育成に向けたヒントを探っていきましょう。

筆者プロフィール

山中 悠輝 (Yamanaka Yuki)

学校法人産業能率大学 経営管理研究所
戦略・ビジネスモデル研究センター 主任研究員

山中 悠輝
(Yamanaka Yuki)

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※所属・肩書きは掲載当時のものです。

データから見る今年の新入社員!

注目ポイント1:不安に思っていることは何か?

  • 上司・先輩とうまくやっていけるか(63.6%)
  • 自分の能力で仕事をやっていけるか(62.5%)
  • 心身を壊すことはないか(39.3%)

注目ポイント2:仕事でストレスを感じそうな状況は?

  • 仕事でのミスや目標達成が難しく、自分の能力不足を感じるとき(67.3%)
  • 上司や同僚、顧客との関係でトラブルがあり、人間関係が原因で悩むとき(52.8%)
  • 仕事量の多さや難易度が高い任務に直面し、自分一人では対応できないと感じるとき(36.1%)

注目ポイント3:働くうえで上司や先輩に期待することは?

  • 実践前にやり方や手順などを細かく教えてくれること(62.3%)
  • 誰に対しても平等に接してくれること(57.2%)
  • 良い仕事ぶりに対して褒めてくれること(54.7%)
  • 率直かつ建設的なフィードバックを提供してくれること(52.0%)

以上をまとめると、「1.周囲のメンバーと良好な関係を築く」「2.自分の力で目標を達成する」「3.仕事で失敗しないために事前に手順を細かく教えてもらう」といった傾向が見て取れます。しかし、もう一つ注目すべきデータがあります。それは自己啓発に対する姿勢です。

注目ポイント4:就業時間外にどの程度自己啓発に時間を充てるか?

  • 年50時間未満の回答者が60.9%

自身の能力が発揮できるかを不安視する一方で、勤務時間外の自己啓発に対する姿勢は前向きとは言えません。これは、ワークとライフをきっちり切り分けたいという意図がうかがえます。したがって、職場内での学習支援が求められるでしょう。

想定される課題

新入社員向けの調査データと日頃の研修現場での観察から、以下の課題が考えられます。

1.職場での安心環境の整備

不安を解消するためには、安心できる環境整備が必要です。新入社員フォロー研修では「業務マニュアルがない」「相談相手が忙しそうで話しかけづらい」といった話題が頻出します。「新入社員であるならば、遠慮せずどんどん質問してほしい」と言いたいところですが、周囲に迷惑をかけたくないという気遣いが勝っているようです。職場では1on1ミーティングなどを通じて不安を解消できるようサポートすることが重要です。もちろん、人間関係だけでなく、職場になじむ過程でつまずかないよう配慮することが必要です。

2.職場での成長環境の整備

自己成長に対しては貪欲であり、新入社員フォロー研修内でも既に転職の話題が上ることがあります。丁寧に教えることを踏まえると「厳しすぎても不可」、能力不足を解消するには「緩すぎても不可」といったように、適度に成長環境を整える必要があります。また、失敗回避の傾向があるものの、失敗は成長の糧になります。重要なのは「失敗させないこと」ではなく、失敗後の適切なフォローによって成長に結びつけることです。そのためには、次に活かすための内省のサポートが有効です。具体的には「次に修正すべき点は何か」「もっとうまく進めるにはどうすればよいか」と問いかけることが効果的です。また、キャリア開発支援やOff-JT(Off the Job Training)などでサポートすることも重要です。

結びに

過保護すぎると感じられるかもしれません。正直、私もそう思うことがあります。「取りあえずやってみるべきだ」「見て学べ、それでも無理なら聞きに来なさい」と言われて育った世代からすると、このアプローチには共感しがたいかもしれません。しかし、現在の人手不足の時代では、転職は比較的容易であり、他社の情報も簡単に入手できる状況です。自身のキャリアに不安を感じるならば、より成長しやすい環境を求めるのは自然な流れです。

さて、今年新入社員を配属した職場では、「安心環境」と「成長環境」は整っているでしょうか。この数年で若手社員の離職率が増加している場合、何かしらの安心できない要因がある、もしくは成長が停滞していることが背景にある可能性があります。これらの要因は、企業にとって黄色信号であると認識し、対策を講じるべきでしょう。

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