第2回 イノベーティブ組織の実態(インタビュー調査)

第2回は、インタビュー調査の結果について、紹介します。

調査対象企業

日経ヒットランキングやイノベーション指数など、複数観点から総合的に勘案し、市場や業界構造の組み換えを起こすような変革型イノベーションを創出していると評価しうる企業を選定し、協力の得られた以下の8社に対して、インタビューを行いました。

インタビューのイメージ写真

調査対象企業

対象企業 業種区分 従業員規模(連結) 売上規模(連結)
IT 1,000~3,000人未満 1,000~5,000億円
食品 10,000人以上 1~5兆円
通信 10,000人以上 1~5兆円
小売業 100~300人未満 500~1,000億円
輸送用機器 10,000人以上 5~10兆円
IT 10,000人以上 1~5兆円
運輸業 3,000~5,000人未満 1~5兆円
医薬品 3,000~5,000人未満 1,000~5,000億円

分析の観点

インタビューで得られた情報を定性的に分類し、2018年度調査から抽出された5つの課題ごとに整理しました。結論から先に述べると、変革型イノベーション創出企業においては、5つの課題についていずれも取り組まれていることが確認できました。ここでは、「課題1:人材マネジメントに首尾一貫性を持たせる」および「課題3:人的資源ポリシーの再構築」を取り上げ、変革型イノベーション創出企業の実際の取り組み内容を見ていきたいと思います。

5つの課題とコメント

課題1:人材マネジメントに首尾一貫性を持たせる

  • A社基本的にリスクをとらない人間は評価しないと決めている。リスクをとらないと会社が将来生き残れないとシンプルに考えている。・・・物事を素直に受け入れて、協調性高く周囲の人間とも付き合えて、変化に対応できる人材を重視している。
  • B社こういうところに挑戦しました、でも現状はここまでにとどまっています、という状況をあまりネガティブに評価しないようにしている。・・・一人ひとりのポテンシャルを最大限に発揮させるために、入社後10年間で3つの部署を経験させるルールになっている。その後、本人の適性を見極めて方向性を固めていく。
  • D社実力次第で抜擢人事はある。どんどん仕事は任せていくので、仕事に役が付いてくる感じである。
  • H社過去のことばかり話すのではなく、未来のことを語れる評価制度に改定する。キャリア開発を推進し、上司と部下でキャリアの話をするしくみを構築中

課題2:内外ネットワークを通じたオープンイノベーションの強化

  • A社週1回2時間の役員ミーティングで30分から1時間必ず雑談をする。その内容は、競合の動きとかマスメディアの動きとか、広く社会の動きについて雑談することが多い。
  • B社普段から社外の人と交流して勉強していることが重要一旦外に出て帰ってくるってことや異業種交流みたいなことも含まれる
  • C社内弁慶みたいな状態がもともとない。"うちにないんだったら他所と組もうよ"とか、そういう柔軟な発想そのものは文化としてあると思います。
  • G社事業を拡げ始めているその中で、具体的には外部との連繋など、当社だけではなくて、もう少しアライアンスを組んでいろいろな新しい事業に踏み込んでいく必要性が出てきた

課題3:人的資源ポリシーの再構築

  • A社人事部門の中に社内の人材をヘッドハントする部署がある。転職をするかのように、社内の流動性を高める専門チームである。・・・タレントデータベースのようなシステムがあり、そこには社員の評価結果などが掲載されているが、マネジャーは見ることができず、ヘッドハントできる役員だけが見ることができる。
  • C社会社の成り立ちもあり、新卒採用、中途採用など、さまざまな社員から成り立っている会社であり、究極のダイバーシティの状態とも言える・・・副業を認めている。これは転職リスクを高めるのでは? と聞かれることも多いが、「自社で働きながらもともとやりたかった仕事ができるようになりました」という声もあり、むしろ転職リスクをカバーしてくれると思っている。・・・副業は本当に好きなことをやる。社員はそれで収入もあり、将来のキャリアの選択肢も増えて、会社はその経験を仕事に活かしてもらえる悪いことは何もないと思っている。
  • F社もはや日本人だけでは戦えない。外部から採用する、海外から採用するのが当たり前になっている。・・・もともと外国人社員が多いということもあり、年齢や性別だけが取り上げられて課題となることはない

課題4:チームで取り組むイノベーション創出

  • A社10人の役員と4~5人くらいの社員でチームを作って3案ぐらい作ります。一か月前ぐらいからプロジェクトチームみたいのが作られます。社長に対してプレゼンをして順位が決まり、取締役の名前が書かれた順位表が公開されるっていうルールです。
  • C社新規事業提案制度があります。チームが中心です。個人で提案してもいいんですけどやっぱりチームでやっている方がものになっている感じはします。
  • E社採用については、価値観が合うかどうかが大切。企業理念に共感いただけるかどうか、例えば当社ではチームワークを大切にしており、そこに共感いただけないと一緒に働くことは難しい
  • G社井戸を見つける人と井戸を掘る人、どこに井戸を掘ればよいか分かる人、役割がやはり違って、その後ちゃんとフォローして実行した人間も評価するそういう意味でのダイバーシティでありイノベーティブです

課題5:求心力と遠心力のバランスをとる

  • A社会社が21世紀を代表する会社を創るというビジョンを抱えているということが実は大きい。今は、現実と理想のギャップを埋め続けているという状態です。・・・今の事業で21世紀の代表になれるのかっていう問いが常にあるので、何か新しいチャレンジをしていかないとそうにはなれないという考え方が常にある
  • B社今でもトップマネジメントがイントラでも毎月のように社員を鼓舞するいろいろなメッセージを出しています
  • E社多様な人材が増えれば増えるほど、求心力を高めるための理念共有活動が必要。標準化し過ぎてもいけないが、コアの部分で共感できる価値観がないとチームワークは成り立たない

「課題1:人材マネジメントに首尾一貫性を持たせる」に対する取り組み

変革型イノベーション創出企業が挙げている人材像は、“変化対応”、“挑戦”といった、変革型イノベーションにダイレクトにつながるような、極めてシンプルなものです。

そして、そうした人材に持てる能力をいかんなく発揮してもらうために、A社ではチャレンジングさを積極的に評価し、B社ではチャレンジの結果としての失敗を必ずしもネガティブには評価していない。つまり、求める人材像と評価制度は、完全に一致しているのです。また、H社では、「過去を語ってもイノベーションは生まれない」という信念のもと、評価制度の改革に乗り出しています。
また、B社では、個々の能力を最大限引き出すために意図的なローテーションを行い、D社ではより難しい決断経験をさせる“タフ・アサインメント”を行っています。特筆すべきは、これまで多くの日本企業が守ってきた“内部公平性”が崩れることを厭わず、一部の人材に対して挑戦する機会を組織側が積極的に付与している、という事実です。

「課題3:人的資源ポリシーの再構築」に対する取り組み

変革型イノベーション創出企業は、年功序列や終身雇用に代表されるような“メンバーシップ型の人的資源ポリシー”からは脱却しつつある様子がうかがえました。
C社には、既に新卒・中途問わず様々なバックボーンをもつ多様な人材がいますし、さらに進んでいるF社では、海外から人材を採用するということが当然のごとく行われています。ポイントとなるのは、(新旧問わず)事業を成功させるために、必要に応じて柔軟にアサインを行う、という組織の姿勢です。つまり、事業の成功に向けて重要なポジションや機能がまず先にあるという、“ジョブ型の人的資源ポリシー”を採用しているのです。そして、そこにいかにして(場合によっては外部から調達してでも)優秀な人材をアサインするか。適材適所ならぬ、適所適材を強く意識しているのです。

変革型イノベーション創出企業では、その手段のひとつであるタレントマネジメントへの着手も既に進んでいます。A社では、タレントデータベースの活用を通じた社員の見える化をはじめ、目利き人材(ヘッドハンター)を駆使したり、One-on-Oneミーティングを徹底したりすることを通じて、全社員を対象とした“包括的タレントマネジメント”を実践しています。他にも、程度の差こそあれ、何らかの形でタレントマネジメントに着手している、あるいはこれから着手する、という企業が何社か見られました。

能力の最大化を通じた、イノベーション創出への道

このように、変革型イノベーション創出企業は、ネオ日本型の人的資源ポリシーを採用し、内外の労働市場から多様な方法で優秀な人材を獲得していることが明らかになりました。そして、獲得した優秀な人材に会社に定着してもらい、その能力を十分に発揮してもらうために、首尾一貫した人材マネジメントの仕組みを構築していることも確認できました。さらには、社員一人ひとりに着目して、能力やスキルを正しく把握している企業も見られました。いずれにせよ、社員能力の最大化をはかることで、イノベーション創出へとつなげているのです。

次回は、これまでの調査結果を概観し、変革型イノベーション創出の鍵に迫りたいと思います。

「データで読み解く~イノベーションを生み出す人材と組織の要件」の掲載スケジュールは以下のとおりです。

3月下旬第3回 変革型イノベーション創出の鍵

イノベーション創出に向けた人材マネジメント調査報告書

2018年度「イノベーション創出に向けた人材マネジメント1(現状と課題)」および、今回の調査結果をまとめた2019年度「イノベーション創出に向けた人材マネジメント2」を用意しております。
より充実した内容をお届けします。