第1回 イノベーティブ人材の特徴とは(アンケート調査の結果から)

第1回は、アンケート調査の結果から、イノベーティブ人材の特徴について明らかにしたいと思います。

分析の観点

前回調査から、変革型イノベーションを創出するための5つの課題が抽出されました。
今回の調査では、5つの課題への取り組み状況を確認するために、以下の7つの設問項目を設定し、「1 できていない」~「5 非常によくできている」でたずねています。

図表1 2018年度調査から抽出された5つの課題2019年度7つの設問
抽出された5つの課題 設問(課題への取り組み状況)
課題1 人材マネジメントに首尾一貫性を持たせる
  1. 貴社では、人事制度と教育内容の連動性を高めることで、社員の能力を最大限に発揮させることができていますか。
課題2 内外ネットワークを通じたオープンイノベーションの強化
  1. 貴社では、イノベーション創出のために、セクショナリズム(縄張り意識)に陥ることなく部門間で連繋できていますか。
  2. 貴社では、新しい価値を創出するために、社内外の技術やノウハウを組み合わせることができていますか。
課題3 人的資源ポリシーの再構築
  1. 貴社では、人材マネジメント上のしくみや施策(目標管理制度、評価制度、報奨制度、15%ルールなど)によって、社員一人ひとりの挑戦的な取り組みを促進することができていますか。
課題4 チームで取り組むイノベーション創出
  1. 貴社では、イノベーション創出のために、特定社員の能力に過度に依存することなくチームとしての総合力を発揮できていますか。
課題5 求心力と遠心力のバランスをとる
  1. 貴社では、イノベーション創出に向けて貴社の経営トップが発信したメッセージを、社員一人ひとりが理解し実践・行動できていますか。
  2. 貴社では、社員一人ひとりが自律的に、イノベーション創出に向けた活動に取り組むことができていますか。

7つの設問に対する回答を「1 できていない」=1点~「5 非常によくできている」=5点として合算し、その結果をまとめたものが以下のヒストグラムです(図表2)。
回答企業200社のうち、上位約2割を“取組度:高群”、それ以外を“取組度:低群”として群分けし、両群を比較しています。

図表2

高群はイノベーション創出に貢献している社員が「いる」企業が圧倒的に多い

イノベーション創出に貢献している社員の有無についてたずねた結果をまとめたのが、図表3です。
高群は、イノベーション創出に貢献している社員が「いる」と回答している企業が8割台半ばと、低群より圧倒的に多いことがわかります。取り組み度の違いが、ダイレクトにイノベーション創出に貢献している社員の有無につながっていると見ることができます。

図表3 イノベーション創出に貢献している社員の有無

ノベーション創出には“想い”“スキル”“センス”のいずれも必要

イノベーション創出に貢献している社員が「いる」と回答した企業に対して、その特徴についてたずねた結果をまとめたのが、図表4です。
「1 強い問題意識・高いモチベーション」は、両群とも共通して最も選択率が高いことがわかります。しかし、2位以降は若干異なり、高群は「8 ビジネスセンスの良さ」「5 旺盛なチャレンジ精神」「3 潮流をよみとるうまさ」の順であるのに対し、低群は「6 知識の幅の広さ・専門性の高さ」「5 旺盛なチャレンジ精神」「12 粘り強さ、責任感の強さ」と続きます。こうした結果から、高群は、“センス”、低群は“スキル”に関する要素を選択する傾向にあることがわかります。
ただし、ここで注意が必要なのは、高群が“センス”を選択しているのだから、イノベーション創出においては“センス”が最も重要なのだろう、と安易に結論づけてはいけない、ということです。“想い”“センス”“スキル”は、いずれも必要な力なのではないか、というのが本学の考えです。

図表4 イノベーション創出に貢献している社員の特徴

多様な力をチームとしていかにまとめあげていくかが鍵

では、なぜ両群の違いが出たのでしょうか。それはただ単に取り組みのステージによって必要な力が異なるためではないでしょうか。
低群は、その名のとおり取り組みが進んでいません。そのため、イノベーション創出に向けた組織の状態が不十分な状態であるといえます。それゆえ、高群よりも障害や阻害要因が多く、社員個人の“想い”が強くないと組織的なハードルを乗り越えていけないはずですし、“スキル”がないとうまく周りを説得したり巻き込んだりすることが難しいのではないでしょうか。
一方、高群は、乗り越えるべき組織的なハードルは低いかもしれませんが、“想い”や“スキル”だけではより際立った提案をすることが難しいはずです。

ここで問題なのは、こうした多様な力をすべて兼ね備えた人材はなかなか存在しない、という現実です。
そのため、大切なのは、人材の多様性を高めていくこととあわせて、多様な力を持った人材が互いに協力して、各々の力を最大限発揮することができるような環境を、いかにうまくつくり込んでいくか、いかにチームとしてまとめ上げていくか、ということです。

創造的コラボレーションの“場”を演出するリーダーの必要性

そこで重要な鍵を握るのが、多様な人材をうまく束ねてマネジメントするリーダーの存在です。
世の中を大きく変えるような変革型イノベーション創出において求められるのは、これまでのように先頭に立ってひっぱる“強いリーダー”ではなく、個々の多様性を殺すことなく、創造的コラボレーションの“場”を演出できるリーダーです。そのためには、各人の立場や事情、気持ちを慮ることができる“想像力”を持ち合わせていないといけないし、各人の魅力や能力を最大限引き出せるような“影響力”がなくてはいけません。イノベーション創出に向けて、メンバーの多様性を高める一方で、それをまとめるリーダーのあり方についても検討する必要がありそうです。

次回は、世の中や市場、業界構造を変えるような、“変革型イノベーションを創出”している企業8社へのインタビュー調査の結果から、イノベーティブ組織の実態に迫りたいと思います。

「データで読み解く~イノベーションを生み出す人材と組織の要件」の掲載スケジュールは以下のとおりです。

2月下旬第2回 イノベーティブ組織の実態(インタビュー調査)
3月下旬第3回 変革型イノベーション創出の鍵

イノベーション創出に向けた人材マネジメント調査報告書

2018年度「イノベーション創出に向けた人材マネジメント1(現状と課題)」および、今回の調査結果をまとめた2019年度「イノベーション創出に向けた人材マネジメント2」を用意しております。
より充実した内容をお届けします。