【第1回】日本企業のイノベーション創出の実態と傾向
日本企業はイノベーションに長けていない
“イノベーティブな企業とは?”との問いに、AmazonやGoogle、Apple等の海外の企業を挙げる人は多いかと思います。また、世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)がまとめたグローバル・イノベーション指数(GII:The Global Innovation Index)の2017年および2018年の結果(表1)を見ても、日本は昨年より順位をあげたものの13位、アジア勢の中でも3位という結果です。
本調査においても、多くの日本企業は開発型イノベーションや改善型イノベーションには積極的であるものの、変革型イノベーションには後ろ向きであることが明らかになりました。
こうしたことから、“日本という国として”みても、“日本企業”としてみても、残念ながらイノベーションに長けているとはいえない状況のようです。
“老舗企業”や“重たい企業”でも、変革型イノベーションは起こせる?
製造業/非製造業とイノベーションの型のクロス集計を行ったところ(グラフ1)、製造業は、開発型>変革型>改善型のですが、ほぼ同じような割合にばらけていることがわかります。
そして、非製造業は、開発型>改善型>変革型の順で、開発型が半数近くを占めています。その他は、変革型が4割強と最も多く、開発型、改善型が続きます。
次に業種とイノベーションの型のクロス集計を見てみると(グラフ2)、変革型の割合が相対的に高かった業種は、電力・ガス、その他、金融・保険・不動産、化学・薬品、自動車・造船、建設・住宅・工事、機械・電機、精密・その他製造です。
興味深いのは、この中には日本において比較的歴史が長そうな業種も意外にも多く含まれていることです。特に、金融・保険・不動産、自動車・造船、機械・電機は、変革型、開発型、改善型が同程度見られることが特徴として挙げられます。つまり、これらの業種に属する企業は、従来どおり開発型や改善型イノベーションに注力している企業と、そこから脱却して変革型イノベーションを生み出すことに成功した企業とでわかれた、と見ることができそうです。
さらに、従業員規模とイノベーションの型のクロス集計(グラフ3)について見てみると、300人未満および300~500人未満は開発型・改善型ともに多く、500~1000人未満は開発型が5割超と圧倒的に多いことがわかります。そして1000人以上は、変革型が最も多く、開発型も同程度。改善型は1割強とかなり少ないのが特徴です。つまり、1000人以上の比較的規模の大きな層においても、変革型に属する企業は少なからず見られたのです。
これらの結果から、古く歴史がある“老舗企業”や、規模の大きな“重たい企業”においても、変革型イノベーションを起こすことができることを示唆しています。
“ベンチャー企業でないと変革型イノベーションは起こせない”は思い込み
今回の調査の結果からは、日本企業全体で見ると、改善型や開発型イノベーションは多くの企業で取り組まれているものの、変革型イノベーションに取り組む企業は多くはないことが明らかになりました。とはいえ、業種や従業員規模別に見てみると、変革型イノベーションを起こせている企業の中には、いわゆる老舗企業や重たい企業も含まれている可能性があることが明らかになりました。
こうしたことから、一般的によくいわれるように、スタートアップやベンチャー企業、中小企業でないと、世の中や市場、業界構造を変えるような変革型イノベーションは起こせない、というのは単なる思い込みや決めつけであるといえそうです。問題なのは、老舗企業や重たい企業を、いかに変革型イノベーションを生み出せる組織に変えていくか、ということです。
次回は、変革型イノベーションを生み出す組織の要件について考えてみたいと思います。