日本のグローバル化を考える(2) ~企業のグローバル化とは~
企業のグローバル化とは
興味深い事例を一つ紹介しましょう。東京中野区に本社をもつT社は、1970年代から中国をはじめとして東アジア各国で主として根菜類の大規模栽培を行い、日本向けに輸出販売するビジネスを展開しています。中国の地方政府と交渉して広大な農地を借り受け、日本の種苗会社から輸入した種を現地で育てて収穫する農業です。それまでその地を耕作していた農民を農業労働者として再雇用することで、こうした事業を成功させてきたのです。同社による農業の大規模事業化は、これからの日本の農業を考える上で参考にしたい事例と言えるでしょう。

また、国内外でのM&A(Merger & Acquisition:合併と買収)の活発化によって、本格的なダイバーシティ・マネジメントも必要になります。ダイバーシティ・マネジメントとは、「人種・宗教・言語・性別・健常者や障がい者・年齢などの区別なく、すべての労働者が生産性高く働くことができる環境を築き上げる統合的な管理」ということができます。その中でも多くの日本企業にとって課題となるのが、グローバル化のマネジメントではないでしょうか。 もちろん、社名が世間によく知られているような大企業の多くは、早くから海外拠点を構えるなどしてグローバル化が進んでいますが、日本経済にとっての課題は中小企業のグローバル化なのです。企業数で計算すると日本企業の99%以上が中小企業になりますから、数多くの中小企業もグローバル化の波に揉まれる時代がやってきた、と言っても過言ではないでしょう。 そこで、グローバル化の2つの側面を見ていきたいと思います。1つは日本企業が海外に拠点を構えてビジネスを展開する場面です。そして2つ目が、日本国内の拠点に外国人従業員を迎える状況です。
一般的に大企業は、人・物・金・情報という経営資源に余裕があると考えられますし、男女を問わず優秀な新卒者が就職してきます。そのような大企業では、彼ら新卒者に対してOJT(On-the-Job Training:職場での実務を通じての訓練)やOff-JT(Off-the-Job Training:職場を離れての集合教育)によって教育訓練を施して、海外派遣要員として育てることができます。
さらに、海外拠点をもつ日本の大企業は、程度の差はあるでしょうが、海外でもその存在が知られているということになります。そこで、日本の大学で学び、卒業後も日本に留まりたいと考える外国人留学生にとって、そのような大企業は魅力的な就職先となります。大企業ならば、日本国内の拠点における外国人従業員に対するダイバーシティ・マネジメントの体制を整備することも、それほど困難なことではないでしょう。
さらに、海外拠点をもつ日本の大企業は、程度の差はあるでしょうが、海外でもその存在が知られているということになります。そこで、日本の大学で学び、卒業後も日本に留まりたいと考える外国人留学生にとって、そのような大企業は魅力的な就職先となります。大企業ならば、日本国内の拠点における外国人従業員に対するダイバーシティ・マネジメントの体制を整備することも、それほど困難なことではないでしょう。

では、中小企業の場合はどうなのでしょうか。大企業の下請け企業のように、ビジネス上で大企業と密接な関係をもつ中小企業は、大企業のグローバル化に引きずられるように海外に製造拠点などを設置して、グローバル化へと乗り出していることは周知の事実です。彼らの場合には、大企業による人材を含めたさまざまな支援や指導が期待できますから、海外への進出もそれほど困難なことではないと考えられます。 しかし、大企業との関係が希薄な独立系の中小企業は多くの問題を抱えています。例えば、販路拡大を目指して市場となる先進国に営業拠点や製造拠点を新たに設置する場合、あるいは製造コスト削減のために中国や東アジアに製造拠点を置く場合、その拠点の責任者を社内の誰に任せるのか、大いに悩むことになります。 本学のグローバルマネジメント研究所が中小企業の社長や人事管理責任者への聞き取りをしたところ、以下のように興味深い事実が分かってきました。一般に海外に赴任する従業員には、英語をはじめとして外国語能力が必要だと思われがちです。しかし、調査に協力していただいた中小企業の皆さんは、異口同音に外国語能力の必要性を低く評価していました。
海外の営業拠点の責任者には、お客様からの信頼の厚い従業員を赴任させて、現地に着任してから付け焼刃のように語学の勉強をさせています。また、製造拠点の責任者には、仕事に精通していて性格的にオープンな従業員を選任しています。内にこもる性格では、異文化の環境下では精神的にまいってしまう傾向が強いからだそうです。とは言うものの、長期的に海外での仕事で成功するためには、外国語能力が必要になることは否定できませんが・・・。

次回は、個人レベルでのグローバル化を考えていきましょう。