分け⽅・名付け⽅のポイント【第3回 誰でもできる情報整理術】

情報整理の要「分類・ラベリング」

前回の記事では、いかに⽂書・データの量を減らして⾏くか、ということについて論じました。
最終回である今回は、量を減らして絞り込まれた情報を、どのように分けて⾏くかについて考えます。
加えて、分けたものに名付け(⾒出しづけ)を施す際の留意点についても述べておきたいと思います。

ひとことで⾔うならば、今回のテーマは「分類・ラベリング」です。
「ラベリング」とは、紙媒体ならば⽂書の表題やバインダの⾒出しを、デジタル媒体ならばファイル名やフォルダ名を、どのようにつけるかということです。いかに分け、名付けて⾏くかは、情報整理の要ともいえるでしょう。

分け⽅のポイント

まず分け⽅のポイントについて考えてみましょう。
これは、前回の「捨て⽅/残し⽅」と同様、何らかの基準を設けることが有効です。
  1. 種類別に分ける
  2. プロジェクト別に分ける
  3. 相⼿先別に分ける
  4. 時系列で分ける
  5. 形式別に分ける
最も⼀般的だと思われるのが、「種類別に分ける」というやり⽅でしょう。
例えば、企画書をひとまとめにする、議事録をひとまとめにする、というような要領です。

しかし、このやり⽅ですと、ひとまとまりの仕事の単位で情報を把握することが難しくなる場合があります。
例えば、会社の50周年記念イベントの企画実⾏に携わっていて、⾃分も含めた実⾏委員会のメンバーが共有しなければならない⽂書・データが次々と発⽣するような場合です。

このような場合には、“50周年記念プロジェクト”という背表紙のバインダを作って、関連する企画書や議事録を⼀緒に綴じておいた⽅が便利かもしれません。
つまり、「プロジェクト別に分ける」という分類基準を採⽤するわけです。

視点を⼤きく変えて、種類やテーマではなく誰とやりとりした情報か、という分け⽅をするのも⼀つの⼿です。この場合、「相⼿先別に分ける」という基準を採⽤しているわけですね。特に、電⼦メールなどはこの基準を採⽤すると便利であることが多いようです。
⼀⽅で、“誰とやりとりした情報か”よりも“いつ頃やりとりした情報か”が重要になってくる場合もあるかと思います。その場合は、「時系列で分ける」という基準が採⽤されることになるでしょう。

さらに視点を変えて、書類の物理的な形状に着目して「形式別に分ける」というやり⽅も、有効な場合があります。同じ形式の伝票が、同じバインダに綴じられている、というのはよく⾒る光景ですね。

ここまで、5つの基準の例を紹介してきましたが、実際にはどれか1つの基準でフラットに分けるということは少ないでしょう。実務上は、いくつかの基準を組み合わせて階層的に分ける必要があると思われます。

ラベリングの留意点

分けるための基準が頭に⼊ったら、ラベリングをする際の留意点も押さえておくことにしましょう。

まずは、「あいまいなラベリングは避ける」という意識を持ちましょう。
特に「○○類」とか「××系」といった柔軟性の⾼い⾒出しをつけてしまうと、本来そこに分類されるべきでない⽂書・データがその場所に雑多に放り込まれるようになってしまい、後から困るという事態を招く危険性が⾼まります。

次に、「⻑すぎる名前をつけない」ことが⼤事です。
⾒出しを⾒ただけで内容の⾒当がつくようにすることは⼤切ですが、内容を⾒出しに反映しようとし過ぎて⻑すぎるラベリングになってしまっては本末転倒です。

また、「⾃分の⽿になじんだ⾔葉を使う」ことを意識することも⼤切です。
職場で共有する⽂書だから少しカッコいいタイトルにしてやろう、とばかりに普段⾃分が使わないような⾔葉でラベリングをすると、しばらく経ってから⾃分でも内容の⾒当がつかなくなってしまうことがあります。

分類・ラベリングの着眼点

最後に、有効な分類・ラベリングを実現する上での着眼点について述べておきたいと思います。

図:分類・ラベリングの着眼点

(1)「内/外」の視点を持つ

会社の外とやりとりした情報なのか、社内限定の情報なのかという視点で分類・ラベリングをすると、後で探しやすくなると同時に、情報セキュリティの⾯からも好都合になることが多いようです。

(2)情報に対するアクションを識別する

メールなどでは、無意識に⾏っている⽅も多いと思いますが、読んで終わりなのか、何か⾏動を起こさなくてはいけないのか、⾏動の結果を返信しなければならないのかを、分類・ラベリングによって明確にします。

(3)緊急度・重要度を意識する

前述の2つの視点を掛け合わせると、たとえば「社外、かつアクション要」といったような「重要度」が⾼いと思われる情報が載った⽂書・データが括り出されてくることになります。
そして、ものごとの優先順位をつける際に重要度とセットで考えなければならないのは、「緊急度」です。

(4)ヒト・モノ・カネに関わるものか否かを判別する

仕事をしていく上で基本となる「経営資源」に着目することも忘れてはいけませんね。⼈の配置に関わる情報、商品の⽣産・配送・納品に関わる情報、⾦銭の出納に関わる情報は、ひと括りにしておくと便利な場合が多いようです。

全3回に渡って情報整理について述べてきました。
捨てる/残すの基準にしても、分類・ラベリングの基準にしても、「誰に対してもどんな状況であっても100%あてはまる」といえるような決定版はありません。⽂書・データ整理にまつわる問題に対しては、唯⼀絶対の正解などないのです。
⼤切なのは、⾃分の携わっている仕事の特徴や、やりとりする⽂書・データの量や頻度に応じて「⾃分なりの基準」をつくることです。 この記事が、読者の皆さん⾃⾝の基準を確⽴するきっかけとなれば幸いです。

(仁宮 裕 学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管理研究所)



※本コラムはZDNet Japanへの寄稿を⼀部修正して掲載しています。
※著者の所属・肩書きは掲載当時のものです。
誰でもできる情報整理術

公開日:2013年11月11日(月)