2020年、コロナ禍に取得した男性育休を振り返って。(前編)

2020年、コロナ禍に取得した男性育休を振り返って。(前編)

執筆者プロフィール

岩元 宏輔 氏
(いわもと・こうすけ)

学校法人産業能率大学 総合研究所
経営管理研究所
技術経営&コミュニケーション研究センター 主任研究員

著者は、主に新入社員・若手・中堅社員向けにリーダーシップやキャリア、コミュニケーション、デザイン思考研修等を担当。対話やファシリテーションの指導なども行う。現在はオンライン研修としての企画・実施に注力。

2020年6月の第3子誕生を機に、2度に分けておよそ3か月間の育児休業を取らせていただきました。
未だ取得率の低い「男性育休」*1 をコロナ禍に取得した経験をご紹介いたします。前編は育休取得を考え始めたきっかけから、取得に向けての調整事項のエピソード、そしてコロナ禍の対応についてです。

育休を取りたいと考えだしたきっかけ

育児休業取得を考え始めたのは、2019年の夏ごろでした。当時は1年後に迫った東京オリンピックを前提に20年度の仕事の調整が進み始めたころでした。(研修講師のスケジュール調整は概ね1年前くらいから動き出します。)すると、オリンピック期間を避けて研修実施を検討している企業や団体が多く、1か月間くらい丸々スケジュールが空くかもしれない、という状況になりました。

第三子を望んでいたこともあり、「もしもこの期間に授かったならば、育児休業を取得したいな」という考えがふと浮かび上がりました。制度的にもスケジュール的にも取得できる可能性があること、また泊りがけの出張が多い仕事であるため、産後すぐに妻1人で3人の育児はとても大変だということ、そして何より上の2人の子どもを含め、幼少期に一緒に過ごす時間を多く取ることができるチャンスはこの一度きりであろうということから、実際に取得に向けて動き出してみようと考えました。

近い未来を考えたとき、さまざまな要素から「育児休業の取得」を思い立ちました。

心強かった上司の最初の一言

その後ありがたいことに妊娠が判明し、20年6月が出産予定日とされました。当初はオリンピックシーズンを軸に、7~9月の間でできれば3か月程度、少なくとも1か月程度取得したいと考えました。私の場合、取得の大きなハードルとなるのがスケジュール調整です。例年であれば、年間を通じて満遍なく入っている研修登壇の予定を、春と秋・冬に集中的に立ててもらい、できるだけ既存の業務をお断りすることなく育休を取得したいと考えていました。

自分なりにスケジュールを想定した上で、まずは上司に取得意向を伝えようと考えました。ふだんから気さくに接してくださる上司ではありましたが、やはりどういった反応をしめすだろうか?受け入れてもらえるだろうか?という不安がありました。本学内では既に男性職員で育休を取得されている方は数名いましたが、講師・コンサルタントである研究員では初めての事例となります。

そんな思いの中、勇気を出して伝えると、上司は開口一番「いいんじゃない?喜ばしいことだから。」とおっしゃってくださいました。この言葉が本当にありがたく、一気に気持ちが軽くなりました。「取れるかどうかわからない」という心情から、「取れるように周囲や組織が協力してくれそうだ」という心情になれたことは、とても大きな意味がありました。

その後、少しずつ関係各位への調整をしていきました。人事部やお客様との調整窓口となる普及部門スタッフだけではなく、お客様にもご協力いただき、スケジュール上、ほとんど滞りなく調整を進めることができました。

当初の私は「可能な限りお客様にご迷惑をかけず、組織に対しても研修業務をはじめとする担当業務量を担保しながら、メリハリをつけてしっかり育休を取りたい」といった思いで、念入りに調整をせねばならないと思っていました。しかし、いい意味で拍子抜けするくらい「それはいいですね!」「調整は任せてください」と、明るく対応してくださった方が多く、本当に助かりました。ちょうど「男性育休の取得」が世の中的にも話題に上がっている時期でもあったので、そういった「時代の機運」も後押ししてくれていたように思います。

想定外のコロナショック

多くの方の協力で、育休取得の見込みが立った2020年の年明けころ、想定外の事態となりました。新型コロナウイルスの流行です。全く先が見えない状況となり、4月以降の研修の多くが「延期・中止」状態になりました。これまで調整してきたスケジュールは完全に「白紙」となり、「これは育休を取るか取らないかどころではない事態になってしまうのではないか」とも思いました。なにより「妻とお腹の赤ちゃんの安全と健康をどう守るか」「無事出産を迎えるために何ができるか」が最優先事項です。家庭では、子どもたちと「清潔・元気・なかよし」を合言葉に、おうちにいながら楽しく過ごそう!と決めてみたり、みんなで前向きに乗り切ることに注意を払っていました。

感染対策の徹底やオンライン型研修のスタートなど、慌ただしく「新しい生活様式」がはじまりました。

仕事の面では、緊急事態宣言が発出され、研修もオンラインで対応することが多くなりました。「ZOOMのZの字」すら知らなかった状況から、オンラインでの研修の進め方を習得し、まずは3日間のオンライン版新入社員研修を実施してなんとか乗り切りました。こうしてコロナ禍の仕事環境に適応しながら、いよいよ出産を迎えるという段階に入っていきました。
後編に続きます。

  • 厚生労働省によると2019年度の男性の育児休業取得率は7.48%で、7年連続の過去最高となったが、前年度の6.16%から小幅の上昇にとどまっており、女性の取得率(83%)とは大きな開きがある。政府は2025年までに男性の育児休業取得者の割合を30%にすることを目標にしている。(出所:朝日新聞DIGITAL2020年7月31日 参照:2021年1月26日