2020年、コロナ禍に取得した男性育休を振り返って。(後編)

2020年、コロナ禍に取得した男性育休を振り返って。(後編)

執筆者プロフィール

岩元 宏輔 氏
(いわもと・こうすけ)

学校法人産業能率大学 総合研究所
経営管理研究所
技術経営&コミュニケーション研究センター 主任研究員

著者は、主に新入社員・若手・中堅社員向けにリーダーシップやキャリア、コミュニケーション、デザイン思考研修等を担当。対話やファシリテーションの指導なども行う。現在はオンライン研修としての企画・実施に注力。

2020年6月の第3子誕生を機に、2度に分けておよそ3か月間の育児休業を取らせていただきました。
未だ取得率の低い「男性育休」*1 をコロナ禍に取得した経験をご紹介いたします。後編はコロナ禍の出産、育休取得中の過ごし方、そして復帰後の現状についてです。

オンライン立ち会いでの出産

新型コロナウイルスの流行は、出産に向けての様々な場面に影響が出ました。たとえば産前検診に同行することができなくなり、産前の体操や治療などのプログラムは全て中止。本来はできるだけ歩いたり、適度な運動をしたい時期に入っても、なかなか外出できない状況でした。特に普段は開放されている近所の大学キャンパスが封鎖されてしまったことはつらいところでした。緑が多く、一般利用も可能なカフェやレストランがあり、子どもの習い事でもグラウンドを使用していたため、とてもよい散歩の機会になっていたのです。そういった身近な生活環境で様々な制限がされていくことは、仕方がないことではあるものの、出産を控えたタイミングでは苦慮する部分がありました。
そして特に大きな制限が、「出産の立ち会いと産後の面会ができないこと」でした。産院が徹底した安全管理をしてくれるありがたさがありつつも、やはり生まれる瞬間に立ち会うことができず、初めて対面できるのも退院後になってしまうのはとても寂しいことでした。

そんな中、ついに出産当日を迎えました。おそらく一人の助産師さんが撮影を担っていただいてのオンライン立ち会いとなりました。子どもたち2人も一緒に、画面越しにママを応援。無事生まれたときは心から安堵しました。会えない寂しさはあったものの、出産直後に妻の両親にもSkypeを活用して出産を伝えることができたのは、オンライン立ち会いだったからこそできたことでもあると感じました。

子どもたちとPCの前で妻の出産を見守りました。ご協力いただいた病院関係者の皆さんには本当に感謝しています。

育休期間の過ごし方

育休期間は、最終的に6月後半からの約2週間と、8月中旬からの2か月強に分けて取得しました。調べ始めた当初は知らなかったのですが、産後8週間以内に育児休業を取得した場合、2度目の育児休業が取得できる「パパ休暇」*1 という制度を活用しました。新型コロナウイルスの影響で、7月にどうしても外せない仕事が入っていたこともあり、この制度はとてもありがたいものでした。

育休期間中は、いわゆる「専業主夫」の日々でした。妻の産後の回復が少し長びいていたこともあり、日常的な家事や幼稚園の送り迎えなど、家事を一通り行いました。これまでほとんど何も作れなかった料理もするようになりました。はじめはパスタを茹でるときに焦がしてしまい、妻に「どうやったらパスタが焦げるの?」と呆れられてしまうレベルでしたが、育休終盤には何とか一食丸々一人で準備できるようになりました。仕事柄か「未経験の新入社員ってきっとこんな気持ちなんだろうな」と思いながら、できないことだらけ、時間がかかることだらけの日々から、徐々に自分が「家事の戦力になれてきていること」に喜びを感じていました。

また長女の幼稚園の送り迎えの中で、先生やママ友・パパ友と顔見知りになれたことも大きな収穫でした。娘の友達の名前とその友達のお母さんの顔が一致し、園庭でちょっとした会話を楽しめることができるようになったり、小学生の長男の友人とも平日公園で一緒に鬼ごっこをしたり、今までできなかった経験を多く味わうことができました。

何より生まれたばかりの次女との関わりの時間をたくさん取ることができ、ちょっとした成長や変化の瞬間を妻と共有できたことは、育休を取らなければできなかったことだと思います。特に今回はコロナ禍で次女を外に連れていくことも、直接親族に会わせることもほとんどできませんでした。もちろんまだ会話はできませんが、「会う人はみなマスクをしている」というのが、次女にとっての当たり前です。そんな中で、大半の時間を過ごす家の中で、家族とは表情豊かに過ごせたことは、きっととても大切なことだったのではないかと思っています。

仕事については全くと言っていいほど何もしませんでした。本学では育休中はメールアカウントが一時無効とされるため、休み中にメールが来ることはありません。上司への引継ぎやトラブル時の連絡体制はありましたが、ほとんど連絡を取ることもなく、むしろ毎日「家のことで仕事のことを考えている余裕がない」という状況でした。「時折じっくり本を読む時間が取れるかな」などと思っていましたが、そのような時間はありませんでした。とはいえ、全く仕事のことを気にせずに家のことに向き合える機会は本当に貴重な時間でした。

退院日まで面会ができないため、病室と隣接するビルの最上階から、新しい家族と初対面しました。

復帰後の今、思うこと

10月末から仕事に復帰しましたが、コロナ禍でイレギュラーな状態が続いていることに変わりありません。私自身、4月の緊急事態宣言発出以降、研修対応は100%オンラインで、一度も対面形式での集合研修を行っていません。出張で新幹線に一度も乗らない1年間は、少なくとも社会人になってからは初めてのことだと思います。
また、多くのやりとりをリモート環境で行うことになりました。社会復帰という感覚より、コロナ禍での新しい働き方にいかに適応していくか、いかに新たな価値を生みだせるかを主眼においている感覚です。

一方、育休から復帰したからといって、子どもが急に大きく育つわけではありません。今年は「コロナ禍」「5人家族」という新しい環境で日々の暮らしを充実させていくためのモデルチェンジの1年になったと感じています。
非常に厳しい境遇に置かれている方も少なくない中、無事出産を迎え、育休によりこれまでにないほど家族との時間を取ることができたのは、とてもありがたいことだったと思っています。まだまだ先行き不透明な状況で、月並みながらいかに仕事と家庭を両立していくか。今後も模索していき、これからのビジネスパーソンの方に参考になるような貢献をしていくことが、今回の恩返しになっていくのではないかと考えています。

  • パパ休暇:育児・介護休業法には、両親が協力して育児休業を取得できるように、「パパ休暇(出産後8週間以内に取得した場合の再取得)」、「パパ・ママ育休プラス(両親がともに育児休業を取得する場合、原則子が1歳までの休業可能期間が子が1歳2か月に達するまで延長可能)」等の特例がある。「パパ休暇」はママの出産後8週間以内の期間内にパパが育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度パパが育児休業を取得できる仕組みである。(出所:厚生労働省ホームページ 参照:2021年1月26日
    さらに、政府は出産から8週間以内に合わせて4週間の休みを2回に分けて取得できることや、出産の直後だけでなくその後も継続して育児を担えるように最大4回に分けて休みを取ることができることなどを盛り込んだ法律の改正案が決定された。(出所:NHK NEWS WEB 2021年2月26日 参照:2021年3月8日NHKニュース