働き方改革を足元から推進する ~若手社員からのスケジュール管理教育のすすめ

去る2019年8月22日(木)、大阪にてイベント「川崎重工業株式会社様の事例から学ぶ 働き方改革を足元から推進する~若手社員からのスケジュール管理教育のすすめ」が実施されました。
当日は、川崎重工業株式会社様の事例紹介と本学研究員によるプログラム紹介の2本立てで進行しました。
この記事では、本学のプログラム「若手のためのスケジュール管理力向上研修」の概要について紹介します。

プロフィール

齋藤 義雄(Saito Yoshio)

学校法人産業能率大学 総合研究所 主任研究員

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齋藤義雄 研究員の写真

研修の目的と構造

研修の目的

第一線で活躍する若手社員のスケジュール管理力の向上

上記が、この研修の大きな目的となります。
スケジュール管理力は、「業務計画力」と「業務遂行力」から成り立つと考えます。これら2つの項目を養うねらいは、以下のとおりです。

スケジュール管理力=業務計画力+業務遂行力

  • 業務計画力を養うねらい
    いつまでに何を完了する、いつまでに何をするかを的確に計画できる力を身につける。
  • 業務遂行力を養うねらい
    手持ち時間を減らしたり、リスクに対応するなど、滞りなく迅速に業務を遂行するための観点を学ぶ。

done_outlineここがポイント

この目的とねらいを意識して、若手社員がPDCAを回せるように研修を進めていきます。
一般的なイメージでは、PDCAというと、上記の「業務計画力」が先だと思われる方も多いと思われます。しかし、この研修では「Do」「Check」「Action」をまず行います。
もちろん、これには理由があります。若手社員の場合、まずは日常の仕事・日頃の仕事をこなすことが大前提です。そこがきちんとクリアーされたときに、より良い仕事の計画を立てることができます。こういった趣旨から、「遂行力」→「計画力」、「Do」「Check」「Action」→「Plan」といった流れとしています。

研修の目的

二日間の研修プログラム

研修プログラムは二日間の実施で、1日目は業務遂行力の向上、2日目は業務計画力の向上を目指します。
前述した「Do」「Check」「Action」についても、研修の進行は少し特殊です。
進行順序と合わせた、研修の項目と内容は以下のとおりです。

1日目のプログラム

Check(生活分析、複式活動分析、事務工程分析)
仕事を客観的に把握することがねらい。業務分析の手法を説明し、実際に分析を行う。
Action(個別業務中の「手待ち」等問題の発見)
まず個人ワークで、業務の問題点・改善点を考え作図を行う。考えた内容をグループの中で発表する。
Do(業務遂行のためのリスクマネジメント)
日常業務を行うなかで起こりうるリスクに目を向けることの重要性を説明。

2日目は業務計画力(Plan)の向上を一日かけて研修します。
ここでは、最終的に日程・ガントチャートの作成まで行います。ガントチャートを見慣れている人も多いかと思われますが、実際の仕事に活かせるよう、ここではガントチャートができるまでのプロセスの再現・体験を設けています。
以下の3つの工程をもとに、グループで演習していきます。

複式活動分析
事務工程分析

2日目は業務計画力(Plan)の向上を一日かけて研修します。
ここでは、最終的に日程・ガントチャートの作成まで行います。ガントチャートを見慣れている人も多いかと思われますが、実際の仕事に活かせるよう、ここではガントチャートができるまでのプロセスの再現・体験を設けています。
以下の3つの工程をもとに、グループで演習していきます。

1日目のプログラム

仕事内容を洗い出す(WBS:work breakdown structure)。
着手順と期間を決める(スケジュール・ネットワーク図)。
日程を作成する(ガントチャート)。

実際の研修の様子(スケジュール・ネットワーク図)
実際の研修の様子(スケジュール・ネットワーク図)

若手社員が陥りがちなスケジュール管理の失敗

2つの事前課題

この研修に参加する前に、受講者には2つの事前課題が与えられます。

まず、事前課題(1)はスケジュール管理の失敗エピソードです。
出来事の詳細やその影響などさまざまな項目がありますが、この課題で最も重要なのは「失敗の原因」を自身で認識・決定することです。

そして、事前課題(2)は生活分析です。
出勤から退勤まで、仕事生活の一日を書き出します。2日目に作成するガントチャートの実績版のような形で記入していきます。

イベント当日は実際に研修で使われている事前課題も配られました。写真は事前課題(2)の生活分担表となります。
イベント当日は実際に研修で使われている事前課題も配られました。
写真は事前課題(2)の生活分担表となります。

研修内容を説明すると共に、最後に事前課題を紹介しました。
2016年8月から始まった本研修はだいたい年4回をペースに実施しています。これまでの受講者は300人を超えており、それだけ多くの事前課題が集まっています。
その中で、比較的多く見られた代表的な失敗を、差し支えない範囲で公開します。

代表的な失敗の原因(2019年8月~2019年5月調べ)

1位所要時間の見積もりが外れたため。
2位業務経験や知識が足りなかったため。
3位上司・指導員の報連相や関係者へのコミュニケーションが足りなかったため。

1位は「思ったよりも時間がかかってしまった」「2日くらいと見込んだものが、4~5日かかってしまった」といった話が2割弱ほどありました。ただし、これは2位との結びつきも強く、業務経験や知識が足りないために所要時間を推測することが難しかったともいえます。やはり若手社員は、業務そのもののスキルアップが重要といえます。
3位は関係者とのコミュニケーション不足が挙げられます。第1部の川崎重工業様の話では、ヒューマンスキル系の強化が必要で組織連携問題が課題であると述べられました。一般的に、他部署や協力会社と共に仕事を進めることも多いでしょうから、情報の連携や予定の共有は必要不可欠です。

done_outlineここがポイント

また、少数意見ではあったものの「突発業務や天候不良などに対するリスクマネジメントが不十分だった」といった興味深い失敗もありました。
この研修を企画するにあたり、突発業務は起こりうるものとして考え、予期せぬ事態に対応し余裕を作れるようになることも意識しました。あわせて、予期せぬリスクの芽を除去するねらいで、研修ではリスクマネジメントの話もしたうえで、効率よく並行して仕事を進められるよう計画立てることを目指しています。

school まとめ

  • まずは日常の仕事をしっかりこなせることが大前提。
  • 仕事の失敗の原因を自分で考え認識することでスケジュール管理力に活かす。
  • 突発的な仕事は起こりうるもの。予めリスクに備え、並行して仕事を進められるよう計画する。

齋藤義雄 研究員が担当し、この記事と関連するソリューションを下記に紹介します。
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