【企業事例】全員活躍と自立的実行力の育成を図るカルビー株式会社における「体感型研修 Beyond ~新入社員編~」の活用

2030ビジョン「Next Calbee 掘りだそう、自然の力。食の未来をつくりだす。」を掲げるとともに、2019年度から新たな中期経営計画をスタートさせたカルビー株式会社。その実現のために、どのような考え方や仕組みで人財育成を行っているのか、また、新たに「体感型研修 Beyond ~新入社員編~」を導入した理由やその効果などについて、お話を伺いました。

カルビー株式会社 概要

本社所在地〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-8-3
丸の内トラストタワー本館22階
設立1949年4月30日
代表取締役社長
兼 CEO
伊藤 秀二
事業内容菓子・食品の製造・販売
(2019年10月現在)
  • 今泉様人事総務本部 人財・組織開発部今泉 格 様
  • 冨永様人事総務本部 人財・組織開発部冨永 玲奈 様

カルビー株式会社の人財育成

―御社の事業の概況について、お聞かせください。

冨永様国内市場では、ポテトチップスに代表されるスナック事業とシリアル事業を2本柱として事業を行っています。ここ10年で、シリアル事業が大きく拡大したのですが、近年はその成長は鈍化傾向にあります。そのため、いかにもっと国内市場を成長させていくのかという点に、海外展開を併せた2点に注力しています。特に後者については、今までは多くの国に進出してきましたが、今後は限定した国に資源を集中する形で展開を図っていきます。

―そのような事業展開を図るうえで、人財育成については、どのような点に注力されているのでしょうか。

冨永様2019年度より、新たな中期経営計画がスタートしています。その中で人財育成分野のキーワードとなっているのが、「全員活躍」です。人財育成の施策を考えるうえでも、このキーワードを重要視しています。
今泉様中期経営計画を受けて、私たちが所属している人事総務本部では、全員活躍できる組織をつくるために「キャリアオーナーシップ」、つまり「自分で自分のキャリアを考えて歩んでいけるような人財の育成」を目指して、仕組みや風土づくりを行っています。

―キャリアの出発点とも言える新入社員に対して、どのような育成をされているのでしょうか。

冨永様今お話した背景などを踏まえて、今年度は新入社員研修の目的を「ビジネスパーソンとカルビーパーソンの土台を形成する」と定めました。この目的の一新により、今年度は研修の設計を大きく変えた年となります。

ビジネスパーソンとは、一般的な社会人として必要な能力を備えた人財のことを指します。この土台形成にあたっては、自ら考え自ら行動を起こす力を備える「自立的実行力」の育成を重視しました。

一方、カルビーパーソンとは、カルビーで一人前として活躍できる人財のことです。まず、そういった人財を目指すために必要となる最低限の知識を社内で定めました。そして、新入社員のうちに、それらを身につけてもらうことを目標として研修を企画しました。

―「カルビーパーソンの土台作り」として、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

冨永様ポテトチップス事業において、当社では、原料の段階からお客様の手にお届けする段階までを一貫させた、垂直統合型の管理体制「10プロセス」というサプライチェーンの仕組みがあります。この10個のプロセスを基にして、新入社員研修を設計しました。

10 Process

10 Process

原料の栽培から加工、包装や流通を経て小売店からお客様の手に渡るまでの全工程を10個に分けて管理することで、畑で採れた“自然の恵み”の鮮度を落とすことなく、そのまま高品質の商品として大量に安定供給することを可能にした、カルビー社独自のビジネスモデル。

今泉様研修の流れとしては、2週間の本社研修が終わった後、まずは製造部門に仮配属となり、製造の知識を得るために、実際の製造ラインに入ります。その後は、物流部門に仮配属となり、9月には馬鈴薯(ばれいしょ=じゃがいも)の収穫時期になりますので、北海道に行って収穫業務に携わります。最後は営業部門でお客様に商品が届く最前線の現場を経験し、ビジネスモデルの基幹となるプロセスに携わります。

期間としては、例えば製造部門であれば1.5ヶ月と、ある程度継続することになります。その期間内では、例えば機械が故障した際のトラブル対応に立ち会うなど、かなりハードな場面もありますので、とても濃い経験ができます。そして、研修がすべて終わって本配属になるのは12月です。 研修の流れ

―なぜこのような新入社員研修を導入されたのでしょうか。

今泉様昨年度までは、早期戦力化のため、新入社員は2週間程度の研修を経て、4月後半には本配属となっていました。研修期間が短いですから、現場経験としては、1日だけの製造ライン体験や営業同行、といった程度しかできていませんでした。

短期的に見ればそれで良かったのかもしれませんが、前後のプロセスの話がなかなか腹落ちしない、全体最適で物事を考えられない、といった課題も出ていました。工場や物流、営業といった、事業の全体像を理解できる最低限の知識や経験を得ることで、カルビーに対する理解を深めて、カルビーパーソンとしての基盤づくりを行ってもらいたい、短期的な成果ではなく、もう少し中長期的な視点で育成したい、という意図で見直しを図りました。

「体感型研修 Beyond ~新入社員編~」を導入した背景とその効果

―続いて、「ビジネスパーソンの土台づくり」についてお聞きします。今年度は、「体感型研修 Beyond ~新入社員編~」(以下、「Beyond」)をご活用いただきましたが、導入の経緯についてお聞かせください。

冨永様当社をご担当いただいている産能大のアドバイザーさんのご案内が契機となったのですが、導入前に私たち自身も体験させていただいたことで、「Beyond」の良さを理解できたことが導入を決めた一番の理由です。

iPadの活用手法が面白いと思いましたし、「正解のない中で、まずは自分で考え抜きながら、自分なりに答えを出していく」という視点は、現場でとても必要なことだと感じていましたので、そのような経験を新入社員のうちからできることに魅力を感じました。

―実際に体験された感想としては、いかがでしたでしょうか。

冨永様ワークを終えた後に「これが正解です」といった振り返りはなくて、「こういったことも考えられますが、どうでしょうか?」といったように、考えを深めさせるようなファシリテーションの手法に魅力を感じました。ただ知識を付けるのではなく、「こんなやり方もあった」「こんな場合はどうだったか」といったように、常に考えさせるようなサイクルが仕組み化されている点が面白いと思いました。

―実際の研修でオブザーブいただきましたが、その時にはどのように感じられましたか。

今泉様インプットとアウトプットが各ミッション(リアルな仕事場面を体験する10のミッション)ごとに分かれていて、それらが短サイクルでどんどん回っていくこと、特にアウトプットをする機会の多さに魅力を感じました。ミッションの内容も、メール返信や懇親会の設定など、若手のときに遭遇しがちなシチュエーションが多いのも良かったです。

また、iPadを使って、挨拶や名刺交換などをしている自分の姿が、その場で確認できることも面白いと思いました。振り返るときに「これは自分の姿ではない」などと思いたい気持ちもあると思うのですが、そういった弱点も含めて自分を客観視できる気づきの仕掛けは非常に効果的だと思います。
beyondの演習の様子
beyondの演習の様子
冨永様私もiPadの活用に魅力を感じました。チームで一緒に書き込みながら進めることができますし、書いた内容がファシリテーターの方のPCに送られて、すぐにプロジェクタで全員が見られるように映し出されるのも、効率的ですよね。ホワイトボードよりも見やすいですし、素晴らしいと思いました。
iPadを活用している様子
iPadを活用している様子
また、ミッションの後に必ず聞いていた「仕事センスとは?」という問いに対して、どんどんその内容が変わって、深くなっていったことが印象的でした。答えが変わっていく様子が目に見えて分かるのが、とても面白かったです。
仕事センス

仕事センスとは、顧客や組織の様々な期待に応えるために、周囲の状況を感じ取り、自分の判断・調整してやり遂げる総合的な力。本研修プログラムでは、仕事センスの重要性を理解し、センスを磨く感覚を得て、実際の仕事経験の中で自ら成長していけるきっかけを提供します。

―ご参加いただいた新入社員の皆さまからの反応はいかがでしょうか。

冨永様週報の中で「仕事センスってこういうことなのか・・」といったワードが見られました。また、直接的な言葉ではなくても、仮配属先の仕事をするうえで、「こういう形でやったらよいのではないか」「作業手順書をつくってみました」といったように、多くの人が、自分の考えを出して、自立的に仕事をしてくれているように感じています。10プロセスの長期間にわたる新入社員研修も、「Beyond」の導入も初めてのことですから、従来との比較はできないのですが、内面のところで良い影響があったのではないかと思っています。

―「Beyond」をもっと良い研修にするために、試行錯誤を続けていきたいと考えています。「Beyond」に期待することがありましたら教えてください。

今泉様現在はまだ新入社員研修中です。正式配属となった後、上司や先輩方からのフィードバック次第と考えています。しかしながら、現時点での評価は難しいものの、2日間という期間の中で、彼らが学んだことやそのアウトプットを見る限り、私としては良い学びの時間になったのではないかと思っています。
冨永様手法や仕組みの面白さ、答えのない中で自分なりに落とし所を考えて前に進んでいく、という内容にとても魅力を感じました。今後もBeyondの試行錯誤をされていくということですが、このコンセプトが続くのであれば、ぜひこれからも検討したいと思っています。

そのうえで1点感じたこととしては、チームの中で解決策を考えていく時間が多い一方で、個人で考える時間が少なかったように思います。良し悪しはあると思いますが、まずは一人で解決策を考えてからチームでシェアをする過程もあると、また違う気づきが得られたのではないかと思いました。

この記事で紹介した「体感型研修 Beyond ~新入社員編~」について

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