株式会社システムサポート 様「知識だけでなく、 自ら考えて 行動する力を持つ自立型社員の育成をめざして」

企業のプロフィール

1980(昭和55)年に石川県金沢市で設立されたIT企業。2018(平成30)年、東京証券取引所マザーズ市場へ上場した。独立系としてのオープンな立場とグローバルな発想で、ICTを通じて顧客のビジネスを支援するサービスを展開しており、システムのコンサルティングから、企画・開発・構築、運用・保守、システムライフサイクルを支援する専門サービスなど総合的に行っている。社是は『至誠と創造』。顧客に誠実に接し、新たな価値を生み出すことを目標としている。
技術の進化が日進月歩のIT業界において、技術水準を常に最新に保つのは当然のこと。加えて、顧客の要望に技術的に応えるだけでなく、その背後にある経営課題のソリューションまでをワンストップで提供しようとするとき、単に技術力にとどまらない高いヒューマンスキルが欠かせないという。単なる知識やスキルとは違う『仕事センス』を養う、体感型新入社員研修プログラム『Beyond』は、IT企業の新人研修の場で、どのように導入され、どのような役割を果たしたのか。システムサポート人事グループで人事・人材開発を担当する武士垣外マネージャに導入の経緯と効果、課題などについてうかがった。

『不条理』という壁を越えて『仕事センス』を身につける。現実の現場にもある、その切り口に魅力を感じた。

─ 独立系のIT企業として成長を続けてこられた御社が、今回、Beyondを採用された背景やきっかけなどについて お聞かせ願えますか。
 弊社はいわゆるIT企業、中でもシステム開発を得意としていますが、エンドユーザーとの直接取引を重視しており、単にシステムを構築するだけでなく、その背景にあるお客様のニーズに応え、経営戦略や経営課題の解決までをワンストップソリューションで提供することを強みとしています。
 こうした業態にある中で、技術力を身につけることは当然ですが、ヒューマンスキル全体を重視した人材育成方針を打ち出しています。新入社員に対しても、真面目で誠実は良いが技術だけのエンジニアにならず、お客様のニーズを掘り起こして積極的に提案をするような、チャレンジできる人材に育てるということを目標にしています。そうした折、東京オフィスの部門長から紹介されたのがBeyondでした。
 マナーや報連相、状況に応じた対応といったものを知識やスキルとして学んでいても、実際の場面では『不条理』が存在し、こうした学びをなかなか思い通りに生かすことができないという壁にぶつかります。Beyondはそうした現場で起こりうる『不条理』を疑似体験しながら、『不条理』であることをネガティブに受け止めるのではなく、自身で考え抜くプロセスを通じ克服の解を自ら創り出す、耐性をつけていく、『仕事センス』を身につけるという切り口が大変面白いと思いました。同時に、これまで弊社は体系的な研修ができておらず、どちらかといえばスポット的な研修ばかりだったのですが、研修を一時的なものではなく継続的に実施し、体質改善を全社的に行っていきたいと考えていた矢先であったため、貴学であればBeyondからさらにフォローアップ研修など体系的な学習につなげていくことができるという点も魅力的に感じました。

あえてきれいな言葉でまとめず、 とことん考えさせる。 くさびを打つようなプロセスが印象的。

─ 実際にBeyondを導入し、体験していただいて、どのような感想や印象をお持ちですか。
 この数年、さまざまな研修をみてきた経験からすると、報連相やロジカルシンキングなど、知識として学んでいても実際の業務では生かせていない社員が多いという印象があり、知識だけが増えてしまい、実務に生かされていないのであれば、研修を見直さなくてはならない時期に来ていると感じていました。今回、研修で学んだ知識を現場に生かすとどうなるかを考えてもらうために、知識やスキルを得るだけのレクチャーをすべてなくし、Beyondを取り入れた背景があります。ねらい通り、言葉を知るだけで分かったつもりになり、知識だけが一人歩きするのではなく、問いかけを続けることで、自分なりに考えた持論を展開できるようになり、実践をともなう研修になったのではないかと思います。
 例えば研修中、貴学のナビゲーターが「御社が大切にする“相手志向”をどういう意味でとらえていますか?」と、あえてきれいな言葉でまとめたくなるところを、そうさせずに、くさびを打つように考えさせていました。もっとも印象的だったのは、最初にグループ分けされたときのチーム名について、ナビゲーターから「なぜそのチーム名にしたのですか?」と聞かれた社員が「特に意味はありません。自分たちだけに分かればいいと思って…」と答えた場面です。これはまさに言葉が一人歩きして、自己中心的な考えをしている例であり、実際の運用のことをまったく考えていないと強く感じました。これは本当に衝撃的でした。そういう場面で、「なぜですか」、「どうしてですか」と問われると、「あれ?」と一度立ち止まって考えることができます。
 ワークの時間が少なく、その後の発表に時間をかけていた点も非常に良かったと思います。発表に対して講師が感想を伝えて終わりではなく、「そこはどう考えましたか?」「なぜそう考えたのですか?」と問い続け、かなり新入社員に考えさせていました。今までの研修ではそこまで突き詰めて聞くことはほとんどありませんでしたし、普通は、どちらかと言えばワークの方が長く、ディスカッションや評価の方が短いので、こういうフィードバックに時間をかける時間配分も通常の研修とはまったく違っており印象的でした。後で受講者の感想を取りまとめましたが、「考え疲れた」という声が多かったです。相当、脳みそに汗をかいたんじゃないかと思います。

効果はさまざまだが、やはり自ら考えて行動する。そうした顕著な変化が見てとれるようだ。

─ 受講した方々は、その後、現場に配属されていかがでしょうか。また昨年の新入社員と比べて違う点などありますか。
 Beyond研修を受けた43名の新入社員たちは、その後、技術研修を受け6~7月には現場に配属になります。お客様のところに常駐する社員もいますので、まだ全体がどうなのか見えてこない部分もありますが(注:2018年7月取材)、技術研修の様子などを見ているとやはり差がついています。まだ主体的に動けない新入社員もいる反面、相手のことを考えながら行動したり、チャレンジしながら行動したりする新入社員も見受けられます。研修の効果としては、ばらつきもありますが、これは当然のことで、これからお客様のところに常駐したり、要望に応えたりしているうちにまた変わっていくのではないかと思っています。
 昨年の新入社員と今年Beyondを受講した新入社員との違いで言えば、物事を言われた通りにだけやるのではなく、言われたことを踏まえて、こういうふうにしたらもっといいんじゃないかというように、考えて行動する習慣が身についているという感じがします。場面に応じて自分なりに考えてやってみたり、いったん立ち止まって考えたりといったことですね。それは去年に比べると変わったかなと思えるところです。

求めるのは自ら主体的に動く自立型人材。すべての階層の社員に 『仕事センス』は必須と言える。

─ 今後、Beyondなどの研修を通じて期待する人材像や課題などがあれば教えていただけますでしょうか。
 やはり、自ら考え、自ら動き、自ら発信できる自立的、自発的人材になってほしいと願っています。失敗しても、間違ってもいいので、試行錯誤しながら自分の頭で考え、『仕事センス』というものをつかみとってほしい。現場で「そういえばBeyondではこういうふうに学んだけれど、それはこんな意味だったのか」と改めて理解を深めるということもあるだろうし、「Beyondで学んだ知識をこの現場で使ってみよう」とBeyondを通して勉強したことを一つの柱にして、自分自身で確かめながら成長してほしいですし、そうした積極的な姿勢を期待しています。
 『仕事センス』ということで言えば、日常、接している部下に、そのセンスの良さや悪さを感じるときがあります。それは具体的にこのスキルと言えるものではありませんが、例えばタイミングとスピードも『仕事センス』の一つと考えます。
明らかに私が忙しいのに構わずに声をかけてくる部下がいる一方で、私に余裕があるときを見計らって相談にくる部下もいます。こういう違いは、観察力やヒアリング能力など、さまざまに分解されるものかもしれませんが、全体でまとめればまさに『仕事センス』だと思います。タイミングやスピードですから、『仕事センス』というものは、実は新入社員だけに求められるものではなく、すべての階層の社会人に求められているものではないでしょうか。
 これは、これからの人材育成の課題でもありますが、会社の組織が大きくなると、マニュアル人間、指示待ち人間と言われる自ら主体的に動くことができない社員が多くなっているように思われます。新入社員に限らず、そうした受け身のスタンスに切り込み、体系的に指導していく、育成していくということが今後必要だと感じています。