消費⽣活アドバイザー (資格取得セミナー・インタビュー)


 販売チャネルの多様化や消費者向けサービスの⾼度化といった時代の流れを受けて、「消費⽣活アドバイザー」試験への関⼼が⾼まっています。
 消費者と向き合うことの多い企業や⾏政などが、この資格の取得を積極的に推進しています。⼀⽅で、定年後の消費⽣活センターへの再就職を⾒すえて、この試験に挑む個⼈も増えているようです。
 消費⽣活アドバイザー試験にくわしい本学・総合研究所プロジェクト・マネジャー緒⽅久⼈⽒と、本学で消費⽣活アドバイザーの資格講習会講師をつとめる⽵内夏奈⽒に、この資格が持つメリットや試験対策などについて、お話をうかがいました。



インタビュー

産業能率⼤学総合研究所 プロジェクト・マネ ジャー
緒⽅ 久⼈ ⽒
消費⽣活アドバイザー資格講習会講師 ⽵内 夏奈 ⽒
 

―― まず消費⽣活アドバイザーとは、どのような存在なのでしょうか。


— 緒⽅
 消費者と企業、⾏政のかけ橋的な存在と⾔われています。消費者からの提案や意⾒を企業経営や⾏政等への提⾔に効果的に反映させるとともに、消費者の苦情・相談等に対して、迅速かつ適切なアドバイスが実施できるなど、幅広い分野で、社会貢献を果たす⼈材が消費⽣活アドバイザーです。

 もう少し具体的にいえば、企業と消費者の間にトラブルが⽣じたとき、個⼈である消費者はどうしても⽴場が弱くなります。その際に、消費者が⼀⽅的に不利益をこうむることがないよう、企業内においては適切な対応をはかったり、⾏政では法律を作ったり改正する必要があります。こうした場に消費⽣活アドバイザー資格をもった⼈材が活躍することになります。
 また、2016年度からは消費⽣活アドバイザー試験に合格すると、国家資格である『消費⽣活相談員』資格も同時に付与されることになりました。まさに消費者問題の専門家と⾔うことができるでしょう。

— ⽵内
 消費⽣活アドバイザーという資格がスタートしたのは、1980年のことです。当時、新しい商品やサービスが世の中に登場したことによって、消費者の⽣活は便利になりましたが複雑化しました。それにより、企業と消費者の間にはそれまで起こらなかったようなトラブルが起きはじめたのです。そうした背景のなか、企業の中に消費者目線をもった⼈材を育てるために始まった資格とも⾔われています。また、最初は⼥性の社会進出を促進する目的もあったそうですが、その後の「消費者志向」や「顧客満⾜」といった考え⽅の広がりとともに、⼥性だけでなく男性を含め、企業の中で取得する⼈がますます増えている状況です。


―― この資格を取得した場合、企業などではどのような部門で⽣かされることが多いのでしょうか。


— 緒⽅
 当初はお客様相談部門が多かったのですが、顧客満⾜といった考え⽅が進んだ現在では、企画部門や開発、営業、さらに経営企画や経営層にも広がっています。社会⼈であれば、誰もが持っていたい資格の1つになりつつあります。
 国内のトップ企業である⾃動⾞メーカーの中でも、副社⻑⾃ら消費⽣活アドバイザー資格を取得し、旗振り役となっている企業もあります。その企業では、開発段階からお客様目線で発想するという考えで、各部署にこの有資格者を置き、製品を作り上げています。開発の発想から全⼯程で資格を⽣かしているそうです。

— ⽵内
 業種でいうと、近年は⽣命保険業界で多くの⽅が取得されています。⽣命保険業界では消費者志向経営を打ち出しているところが多く、この資格をひとつの指標としてとらえているようです。保険商品の開発段階でも、事前に消費⽣活アドバイザーの有資格者を呼んでモニタリングをしているところもあるそうです。

— 緒⽅
 この資格を持っていると、企業の外にいるお客様から信頼をいただけるし、また企業の内部にいても、いろいろな提⾔をしていく際に、消費⽣活アドバイザーという視点から発⾔できるというところが⼤きいと思います。
 消費者庁では、2016年から「消費者志向経営⾃主宣⾔企業」といった取り組みがなされ、またACAP(エイキャップ・消費者関連専門家会議)でも「消費者志向活動表彰制度」が⾏われています。企業がそうした制度に取り組むときに、中⼼的な役割を果たすメンバーの中には消費⽣活アドバイザーの資格を持っている⽅も多いようです。
 また、さきほどお話ししたように消費⽣活アドバイザーの資格を取得すると消費⽣活相談員の資格も付与されることから、定年後の有⼒な再就職技能として⼀般企業でも取得を推奨しているところもあります。
 ちなみに消費⽣活アドバイザーを擁する企業の上位20社のリストなども公表されています。

―― 消費⽣活アドバイザーの資格取得のメリットは、個⼈としてはどのようなものがあるでしょうか。

— 緒⽅
 消費⽣活アドバイザーの資格を得るためには、17科目という幅広い分野の知識が必要となります。ですから、有資格者というのはこの知識ベースがあるため、ものの⾒⽅やとらえ⽅に幅や深みが⽣まれ、外部から専門家として信頼されるというメリットがあると⾔えます。

— ⽵内
 この消費⽣活アドバイザーの有資格者の集まりがNACS((公社)⽇本消費⽣活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)をはじめとしていくつかあります。そうした場所でさまざまな業種・年代の⽅たちと交流・活動できるというのもメリットと⾔えるでしょう。わたし⾃⾝この資格を取得してから、多くの⽅たちに出会い、新たな刺激を受けています。⾃分⾃⾝を成⻑させるきっかけになる資格であると感じています。

―― 17科目という幅広い分野の知識が必要とのことですが、試験勉強はどのようなものになるのでしょうか。

— ⽵内
 まず試験は年1回秋に⾏われます。1次試験と2次試験があり、今年の場合1次試験は9⽉末。それに受かると11⽉下旬の2次試験に進むことがで
きます。1次試験の会場は全国9カ所です。
 1次試験の範囲は、⼤きく分けるとまず消費者問題。次に、消費者のための⾏政・法律知識。さらに消費者のための経済知識、⽣活基礎知識と続きます。⽣活基礎知識の中には、医療から⾐⾷住、IT系の知識まで含んでおり、本当に幅広い試験となっています。2次試験では800字の論⽂試験と⾯接試験があります。

 試験に合格するには、⼀般的には600時間の勉強が必要とされています。通常4⽉から学習される⽅が多いので、試験が⾏われる10⽉まで6、7ヵ⽉と考えると毎⽇3時間ぐらいの学習が必要ということになります。1次・2次試験を通した合格率は例年21%程度。
 ⼤変難しい試験ではありますが、学習する上ではコツがあります。それは、まずは全体を広く浅く押さえるということです。この試験の特徴は範囲が広いことなので、すべてを深く学習しようとすると時間が⾜りなくなってしまいます。また、正答率100%を目指さなくていいということ。1次試験でいうと、例年65%程度が合格ラインなので、基本的な部分を必ず押さえて、そこを落とさないようにすることが合格につながります。
 実際の試験問題は試験実施団体である⽇本産業協会のホームページに公開されているので、ぜひ⼀度ご覧になってください。実際に何問か解いてみることによって、レベルが分かりますし、合格するにはどの程度の学習が必要なのか⾒えてくるでしょう。

―― この試験対策のスケジュールや学習⽅法など、産業能率⼤学ではどのように組んでいるのですか。

— ⽵内
 まず、試験までのスケジュールですが、通常ですと、4⽉から学習を始める⽅が多いので4⽉から6⽉の間を基礎⼒養成期としています。この時期は、テキストを中⼼としたインプット学習で基礎知識を⾝につけます。その後7⽉、8⽉を実⼒養成期として過去問題集に取り組み、実践⼒を養います。9⽉は完成期ということで、それまで学習したことの総まとめをしつつ、模擬試験などを受けて実⼒を確認します。そして、2次試験対策期には、論⽂・⾯接対策をしていきます。

 学習⽅法は、通信講座や通学講座、市販書籍等での独学などさまざまです。本学では通信講座や各種通学講座など、受験⽣のみなさんをサポートするラインナップを取り揃えています。
 ⾃分のペースでコツコツと学習を進めたい⽅には、通信講座が向いているでしょう。⼀⽅で、学習時間がなかなか取れず効率的に学習を進めたいという⽅には通学講座が良いかもしれません。また、双⽅を組み合わせた学習も相乗効果があります。3⽉からは『無料説明会』や『試験対策スターティング講座』を開催しています。⾃分に合った学習スタイルを⾒つけるためにもぜひ参加をおすすめします。

(左)消費⽣活アドバイザー 資格講習会講師 ⽵内 夏奈 ⽒
(右)産業能率⼤学総合研究所 プロジェクト・マネジャー 緒⽅ 久⼈ ⽒

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