メンバーの主体性を重視したビジネスコーチングが組織の成⻑を⽣む

学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所経営管理研究所 研究員 関 直治
※所属・肩書きは掲載当時のものです。

1.部下の主体性を引き出すスキルービジネスコーチング

内発的動機づけが主体性を生む

メンバーが主体的に動いている状態とは、どのような状態をいうのでしょうか?

⾔われたことしかしない指⽰待ちのメンバーに対して「主体的に取り組みなさい」と⾔うと、そのメンバーは「⾔われたからやろう」「⾔われるのが嫌だから⾔われる前にやろう」という気持ちで取り組んでしまい、主体的とは⾔えません。
また、これは、上司などから与えられた「賞」や「罰」をきっかけとして⾏動を起こすことを意味しており、外発的動機づけとなります。外発的動機づけでの働きかけでは、⾔わなければやらないメンバーを放置しておくこともできないため、⾔うか⾔わざるかのジレンマに陥ってしまうことが起こり得るのです。

もうひとつの働きかけには、「内発的動機づけ」があります。これは、メンバーが⾃発的に⾒いだしたものをきっかけとして、⾏動を起こすことを意味します。上司が、ジレンマに陥ることもありません。つまり、メンバーが組織目標の達成に対して主体的に取り組んでいる状態は「内発的動機づけの状態」であると⾔えるのです。

より現実的に内発的動機づけにアプローチ

メンバーが組織目標の達成に向けて内発的動機づけの状態で取り組むための⽅法には2つあります。

(1) メンバーが始めから内発的動機づけの状態で目標の達成に取り組めるように、メンバーの価値観に合致する目標を割り振る。

(2) 始めは外発的動機づけの状態であっても、徐々に内発的動機づけの状態で取り組めるようにメンバーとコミュニケーションをとる。
マネジャーとしては(1)の考え⽅を実践することは必要ですが、(1)だけでは動機づけに時間を要するため、組織運営が⾏き詰ることは目に⾒えています。現実は、まずスタートした後の(2)の実践度合いがメンバーの主体性の程度に⼤きく影響するといえます。

そこで、従来のプログラムより⼀層、(2)を実践するための考え⽅とスキルを確実に習得することに焦点を絞り、企業の近年の実情に対応しています。

研修実施⽇として1⽇しか割けない企業も増えている中、そのような制約のある企業様には基本的な考え⽅とスキルを確実に、2⽇を割ける企業には実践的なところまで確実に習得できるプログラムをご提供することができるようになりました。

2⽇で実施する場合の研修の構造は以下のとおりです。

主体性を引き出すための3つのスキル:「状況説明」「発問」「傾聴」

本研修では、「状況説明」「発問」「傾聴」の3つのスキルを確実に習得することでメンバーの主体性を引き出すことを狙っていきます。

状況説明

メンバーの目標設定時や、仕事を割り振る際に活⽤するスキルです。
状況説明のスキルを活⽤することで、メンバーは「上司に⾔われたから取り組む」のではなく、状況を理解し納得して⾃ら⾏動できるようになります。

発問

メンバーが主体的に取り組むということは、換⾔すれば「⾃ら考え、⾃ら動く」という状態です。このとき、メンバーに対して「⾃分で考えなさい」「もっとよく考えなさい」と⾔うだけでは不⼗分です。

⼈間は問いかけを受けると、その問いかけに対する回答を⾃然と考えます。⼈間のこの特性を活⽤したのが発問です。
「あなたはどのように考えますか?」と問いかけることでメンバーに考えさせることができるようになります。

傾聴

私たちがメンバーの考えと気持ちを聴きたいという姿勢を⽰せば、メンバーはそれを説明するために⾃らの考えと気持ちを掘り下げます。
つまり、上司が傾聴の姿勢を⽰すことでメンバーにより深く考えさせることができるようになります。

なお、3つのスキルを発揮する前提として、ビジネスコーチングの基本的な進め⽅やメンバー・オリエンテッド・アプローチといった考え⽅も学習します。

本プログラムの4つの特徴

  1. 映像教材による事例を⽤いることで、現段階ではメンバーをもたない受講者であっても実践イメージがわく。
  2. さまざまな設定でのロールプレイングに繰り返し取り組むことで、スキル習得と実践展開のコツがつかめる。(事例の活⽤)
  3. 現実に育成するメンバーを想定したロールプレイングも⾏うことで、職場に戻ってすぐに実践ができる。
  4. 2⽇版を基本としながらも、章(セッション)単位での組み合わせによって柔軟な実施が可能。他の学習項目との組み合わせも可能。

学術的な背景に裏打ちされたプログラム

ビジネスコーチング研修は多くの団体が実施しています。団体選びにお困りの場合は、学術的な背景に裏打ちされている本学の研修を是非ご検討ください。

ビジネスコーチング研修は、表⾯的なコミュニケーション・スキルを学習する研修ではなく、⼼理学の背景理論無しにビジネスコーチングを⾏なうことはできません。前述したように、改訂版では、背景理論の原則を踏まえ、応⽤が利くように設計しています。
組織目標の達成と⼈材育成のために本学のビジネスコーチング研修を⾃信を持っておすすめします。

2.組織の成⻑にますます不可⽋なメンバーの主体性

ビジネスコーチングは今後ますます重要になる

本学のビジネスコーチング研修は、1990年代からを競合他社に先駆けてご提供しており課題解決⼒の向上のために活⽤いただいておりますが、この度、経済のグローバル化の進展、経営環境の不連続な変化の加速、社員個々⼈の価値観の多様化など、現代の状況にも対応できるよう、プログラムを⼤きく改訂しました。

改訂後も変わらず尊重しているのは「ビジネスコーチング」の定義です。
本学ではビジネスコーチングを『「組織目標の達成」と「⼈材育成」のために、1対1でメンバーの主体性を引き出す考え⽅とスキル』と定義しています。

この定義は、プログラムを開発した当初の基本的な思想を引き継ぎました。
なぜなら、組織活動におけるビジネスコーチングの重要性は90年代当時から現在、そして未来に向かっても変わらないと考えたからです。むしろ、前述した環境変化を踏まえれば、当初よりも重要性が増したといえるかもしれません。

全ての企業に必要なメンバーの主体性への働きかけ

改訂にあたっては、ビジネスコーチングの定義にある、「組織目標の達成」と「⼈材育成」、メンバーの主体性を引き出すという2点を今まで以上に重視しました。それは、これらが⺠間企業に限らず、全ての企業に該当するからです。

この、「組織目標の達成」と「⼈材育成」という⾔葉について考えてみましょう。
まず、「組織目標の達成」についてですが、⺠間企業に限らず、国や地⽅⾃治体であっても組織である以上は組織目標があり、その達成は重要です。
また、⼈材育成の必要性もすべての組織に該当します。組織目標の達成と⼈材育成は⾔わば⾞の両輪です。私たちは組織目標の達成と⼈材育成を並⾏して追求して⾏く必要があります。

続いて、「メンバーの主体性」という⾔葉について考えましょう。

現代は、⺠間企業をはじめ⾏政体を含めた多くの組織が目標管理制度を導⼊しています。皆さんの組織でも、変化する経営環境への適応を目的としてビジョンや中期経営戦略が⽰され、そこからブレイクダウンされた目標によってPDCAを回しているのではないでしょうか?
このような状況下では、メンバーがすべての個⼈目標に対して主体的に取り組むための組織からの働きかけが不可⽋です。
このことは、経営環境が不連続に変化しているばかりではなく、メンバーの価値観までも多様化している昨今ではますます重要です。
実際、皆さんの組織でも、今までとはまったく異なるテーマに取り組まざるを得なかったり、テーマは同じでも達成基準が到達不能と思えるほどに⾼いといったケースがあるのではないでしょうか?メンバーの主体性無しに達成できるほど、設定している目標は容易ではありません。90年代には想定できなかったほどに目標の達成に向けたPDCAは困難さが増しているのです。
⼀⽅、メンバーの主体性を重視するあまり、組織としてまとまりがなくなったり、組織目標の達成が疎かになっては困ります。

本研修では、メンバーの主体性を重視しているといえども、主体性が向かう⽅向には注意を払っています。あくまでも、組織目標の達成と⼈材育成に向けた主体性を想定しています。
内容について、ご不明点などございましたらお気軽にお問合わせください。

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