【SANNOエグゼクティブマガジン】グローバル化時代における営業活動の 新しい思考プラットフォーム~最近の傾向・ご支援から見えること

業界・市場の垣根喪失による営業担当者の思考転換

「グローバル」に類似した言葉として「インターナショナル」があります。

以前は「インターナショナル」という表現が多く見られましたが、現在は「グローバル」という表現が一般的になりました。「グローバル」と「インターナショナル」を対比させて考えると、「インターナショナル」は国と国を結ぶことに焦点を当てた概念です。

インターネットが普及していない時代では、ヒト・モノ・カネ・情報の行き来には規制(=垣根)があり、各国の制度に従う必要がありました。
垣根があったからこそ、違う国同士が互いを尊重しながら、つなぐことに注力していたのが「インターナショナル」な時代でした。

しかし今日、このような垣根が取り払われ、国と国の間を自由にヒト・モノ・カネ・情報が行き来できるようになりました。「グローバル」時代の到来です。

ここで留意すべきことは、(心理的な)垣根がなくなったのは国だけではないということです。

業界・市場や産業の垣根も取り払われ、業界や市場の融合や統合が急速に進展してきました。

ですから、異業種間の連携や競争は当たり前になり、例えば、ソニーが銀行業界に参入し、パナソニックがトイレを作り、そして、富士フイルムが化粧品業界に参入する時代になったのです。
小売流通(第3次産業)のイトーヨーカドーがメーカー機能(第2次産業)を獲得し、農業経営(第1次産業)を強化する、というように産業の垣根も実質的には消失しています。

このように「垣根の消失」を『グローバル化』として定義しますと、
実は、私たちの職場の垣根も消失しており、ビジネスの基盤である、コミュニケーション、思考法、問題解決などに関係する思考プラットフォームに非常に大きな影響を与えています。

今回は、営業活動における広義のグローバル化に焦点を当て、新しい思考プラットフォームの一部をもう少し具体的にイメージしながら考えてみましょう。

今までは業界・市場というものが存在し、その中で取引が行われていました。しかし、既存の業界・市場はかつてと異なり、よく見ると様々な異業種プレーヤーにあふれています。自社も新規の顧客を開拓するために、今まで接点のなかった業界・市場に参入しています。競争が厳しくなるものの、同時に企業は大きなビジネスチャンスを得ることになります。

しかしながら、今までと同じようにビジネスを進めることは難しくなります。
なぜなら、グローバル化時代では、新規の顧客は基本的には既存市場の同業者ではなくなる可能性が高いからです。ですから、最初に新規顧客(見込み先)との関係構築の考え方を変える必要があります。

今までは、顧客も営業側も同じ業界のメンバーとして、時に譲り合い、時に駆け引きをしながら取引を成立させ、その過程を通して信頼関係が構築されてきました。
しかし、グローバル化時代では、取引の相手は必ずしも同じ業界のメンバーとは限りません。顧客の側に立つと、取引先は業界内のプレーヤーに限定する必要はなくなりますので、顧客はさまざまな異業種に提案を求めます。
したがって、営業担当者が業界外の顧客と取引する上では自社が所属する業界での実績が、必ずしも自社の信頼向上に繋がることではないのです。

そうしますと、ビジネスにおける信頼関係は、営業担当者本人の人間的な信頼関係が基本にならざるを得ません。新規顧客(見込み先)に対して、過去の実績ではなく、人間的な関係を基本にした信頼関係の構築が重要になるのです。

顧客の問題解決(=取引)においても、今までと全く異なるアプローチが必要になります。
業界という垣根がしっかり存在していると、全体像が明確で、客観的にものごとをとらえることができます。つまり、業界内に限定して帰納法的に情報収集を行うことがとても有効なのです。

しかし、グローバル化では、垣根があいまいなので、全体像を客観的にとらえることが難しくなります。
例えば、自動車業界の垣根を明確に設定できるかどうか、イメージしてください。

自動車の電子化、家電化、IT化、社会インフラ化が進むことで、業界が大きく拡大すると同時に、その垣根が見えにくくなっています。このようなグローバル化が進展する中で、既存業界の枠を越えて問題解決(=取引)をしようとする当事者は、各自がもつ全体像のイメージ(=未来のあるべき姿)を表明し、それらを重ね合わせながら、具体的な解決の糸口を見出す必要が出てきます。

つまり、主観的仮説推論のアプローチです。

また、グローバル化は業界内のルールや規範も消失させます。意思決定の根拠となる客観的なベンチマークや規範がなくなるので、問題解決(=取引)に有効な判断基準を見出すことが必要になります。

ですから、顧客側と営業側の双方が利害を明確にせず駆け引きを行っていては、一向に新しい判断基準は見えてきません。自社の利害を明確に主張することが新しい判断基準を見出す出発点となります。