在宅マネジメントに必須の「1on1ミーティング」を効果的に進めるためのポイント

  在宅マネジメントに必須の1on1ミーティングを効果的に進めるためのポイント

在宅勤務が定着し、仕事のプロセス管理においてオンライン上での1on1ミーティングを導入している職場が多くなっています。
そこで、より質の高い1on1ミーティングを実現させるためのポイントについて、過日行われたオンライン・フォーラムと体験セミナーのレポートを通じて、ご紹介いたします。

イントロダクション

在宅勤務やテレワークにおけるマネジメントの課題として、「セキュリティマネジメント」「勤怠のマネジメント」以上に重視すべきなのが、「生産性の低下を防ぐモチベーションマネジメント」「エンゲージメント(つながり)、協働性の低下を防ぐチームマネジメント」「成果だけの管理ではない生産性低下を防ぐプロセスマネジメント」といったマネジメント領域の課題です。
こうした課題を解決しながら、高度なマネジメントを発揮する"場と機会“になるのが、1on1ミーティングです。
そして、そこには効果を高める“ツール”の準備と“スキル”の習得が必要となります。

1on1ミーティングとは何か、そして導入の目的は何か

1on1ミーティングとは

日常を離れて行う、上司・部下の1対1での話し合い(対話)
※頻度は目的によって、週1回~月1回

1on1ミーティングの導入目的には、業績目標の達成や生産性低下防止といった「パフォーマンスマネジメント」の発揮以外に、コミュニケーション強化、人材育成、モチベーションの強化につながる、以下の3つの目的を押さえておくことが重要です。

3つの目的
  1. メンバーとの良質なコミュニケーションの促進 ※離職防止、関係強化
  2. (業績だけではなく)メンバーの学習・成長促進のマネジメント
  3. メンバーの(科学的な)モチベーションマネジメント

こうした3つの目的を果たすためには、1on1ミーティング実施場面だけではなく、日々のマネジメントを通じた信頼関係の構築が大切になります。

上記1.良質なコミュニケーションの促進をするうえで特にポイントとなるのが、上司が世代を超えて部下のことをどの程度まで理解しているかということです。
メンバーが有している「人生の深さ(歴史や経験)と幅(人間関係)」「趣味や興味関心」「不安や懸念」「価値観やルール」「願望」までの5つの点を理解したときに、部下との人間関係は深くなったと言えます。

上記2.メンバーの学習・成長促進するうえでポイントとなるのが、実践を通じた仕事の結果として未来をどう描くかという「仕事の意味づけ」です。 それにより、学習の意欲を創出させ、成長につなげることができます。
そして、1on1ミーティングを成功させ、メンバーの成長につなげるために必要となるのが、以下の3つの要件です。

3つの要件
  1. プロフェッション・ビジョン
  2. 高い基準(自分の分野で最高のプロを目指す)の設定
  3. 振り返り(リフレクション)による学びの促進

上記3.モチベーションマネジメントを機能させるためには、まずは自身(上司)とメンバーのワークモチベーションが高いのか低いのか、どんなときに仕事のエネルギーが高まるのか、を確認する必要があります。
また、モチベーションをメンバーに強いるのではなく、自身もモチベーションレベルを高める必要があります。

ワークモチベーションが高いとはどのような状態か?

ワークモチベーションが高いとは、自身の仕事に社会的価値と敬意の念を抱き、使命感と人間的成長を感じながら理想に向かって躊躇なく行動できている状態

そのうえで、1on1ミーティングの中で、モチベーションを高めるためのスキルを習得する必要があります。

自身でワークモチベーションを高める科学的メソドロジー
ワークモチベーション自己開発メソドロジー
ワークモチベーション自己開発メソドロジー"TES(Transforming Emotional State)"

1on1ミーティングの失敗要因

1on1ミーティングを導入する上で、まず前述の導入目的を明確にすること、そして導入目的が上司やメンバーに理解され、共有されていることが重要となります。 また、1on1ミーティングを通じて成果を上げ、目的を達成するためは、1on1ミーティングに必要なスキルや知識を事前に身につけることが必要となります。

1on1ミーティングの失敗事例

  1. 他社がやっているからという理由だけで導入した(会社が導入目的を説明できない)
  2. 上司に1on1ミーティングのスキル教育がなく導入した(何をしたらいいのかわからない)
  3. (目的が不明確なため)成果がフィードバックされない
  4. メンバー側に対して実施意図の説明と指導やフィードバックを受け止めるスキル教育をしていない
  5. 上司自身が1on1ミーティングを受けた経験がない(効果を実感したことがない)
  6. 上司にコーチングのスキルがない
  7. 上司のモチベーションレベルが低い

1on1ミーティングで何をするのか

代表的なウィークリー1on1ミーティングの話し合いのテーマは「前週の仕事の振り返り(リフレクション)」→「次の期間の目標設定(ターゲティング&ドライビング)」といった、パフォーマンスマネジメントに関わるテーマに留まりません。
「ストレスの兆候が見られた場合などに必須となるメンバーの感情や気分へのケア」、「仕事で困っていることや懸念していることなどの相談事へのメンタリング」、「新たに創出された問題や課題解決に必要な能力開発、キャリアビジョンづくりへの助言」、「仕事観の共有」、「成果へのフィードバック」などをきちんと行う必要があります。

1on1ミーティングの中核的スキル

いかにして効果的なミーティングを実践するのか
◍ 1on1ミーティングの運営技術:手順、プロセスマネジメント

いかにしてメンバーが安心して会話できる場を作るのか
◍ 心理的安全性を確保する技術:傾聴、共感、態度 など

効果的な質問により、いかにメンバーの主体的な行動を引き出すか
◍ 主体性を引き出す質問の技術:体系的質問、拡大質問、視点移動の質問 など

いかにしてメンバーを動かすスイッチを理解するか
◍ メンバーを深く理解する技術:相手のメンタルプログラムを理解する技術

いかにしてメンバーの長期的なモチベーションを作り出すか
◍ メンバーをモチベートする技術:ビジョンコーチング、承認 など

1on1ミーティングの進め方とオンラインでの留意点

1on1ミーティングを効果的・効率的に実施し、メンバーの成長とモチベーションを創出するためには、時間や場、実施シナリオの準備だけではなく、上司が特に押さえるべきポイントがあります。

1on1ミーティングで特に上司が押さえるべきポイント

  1. 計画性を持って準備をする
    実施人数、場所、時間の想定と当日の実施シナリオ、中期的な育成シナリオなど、心理的安全性を考慮しながら計画性をもって準備をします。
  2. 上司は質問(コーチング)に徹して、メンバーが話す時間をより多く確保する
    上司の話す量は20%以下に留め、アドバイスはメンバーから求められたときだけにします。
  3. 1on1ミーティング終了時に、メンバーとその場ですぐに面談プロセスの振り返りを行う
    終了直後のメンバーの満足度は1on1ミーティングの成果指標としてとても重要です。また、振り返りを行うことで、メンバーのミーティングに対する期待感の醸成にもつながります。
  4. 1on1ミーティングの実施履歴を両者(上司とメンバー)で管理・共有する
    上司が当日のミーティングメモをとることが基本です。そしてメンバーごとに履歴管理を行い、必要なときにはすぐに履歴を確認し合い、メンバーの実践の進捗や学びと成長の進展を共有していきます。
  5. メンバーの成長とモチベーションを創出できているかに常に焦点をあてる
    1on1ミーティングの目的を果たすうえでとても重要です。「メンバーの成長・モチベーションを創出できているか」は1on1ミーティングの重要な成果指標になります。

また、1on1ミーティングを”オンラインで実施する場合”の留意点は以下の通りとなります。

1on1ミーティングをオンラインで実施する場合の留意点

  1. アイスブレイクをしっかり行う
    オンラインミーティングは対面以上にメンバーの緊張感が高いため、いきなり内容に入らずに、最近のトピックスなどでアイスブレイク(5分程度)を行い、話しやすい雰囲気をつくります。
  2. 普段以上に大きなアクションをする
    オンラインミーティングは得られる五感情報が対面よりも少なく、ノンバーバルなコミュニケーションも取りづらくなるため、上司はあいづちやうなずきといったアクションを普段以上に大きくすることが望ましいです。
  3. 音声・画像の質に配慮する
    音声や画像の質はコミュニケーションの質に直接影響します。音声がきちんと聞こえているか、表情の変化が読み取れる程度に画面は明るいかなど、確認することが大切です。また、ミュート機能は常時解除することが望ましいです。
  4. とにかくメンバーに話させる
    感情の低下や乖離感を防止するためにメンバーに話させることが重要です。上司は3分以上連続して話さないようにし、一方的に伝達する情報は事前にメールで共有しましょう。

1on1ミーティングの定着に向けた本学の主なサポート内容

最後に、1on1ミーティングの定着に向けた本学のサポートについてご紹介します。

本学のサポート内容

  1. 1on1ミーティングの制度設計の支援
    産能大の研究員が対面またはオンラインで打ち合わせを2回程度重ね、1on1ミーティングの目的に合わせた制度設計をご支援します。
  2. 1on1ミーティング・ガイドブックの代行制作
    1on1ミーティングを行ううえでのガイドブックの作成を代行します。
  3. 効果測定アンケートの作成(無料)
    1on1ミーティングの効果測定のためのアンケートを作成します。
  4. 運営力強化の支援
    1on1ミーティングの現場を産能大の研究員がサポートし、制度定着をご支援します。
  5. 1on1ミーティングスキル研修の実施
    詳細については以下をご覧ください。

1on1ミーティングスキル研修の実施内容

オンライン版 (ZOOMを使用した2時間×2回コース)/ 基本編

1on1ミーティングスキルの基本的な進め方を学ぶ

1回目:1on1のミーティングの進め方の習得

  1. 1on1ミーティングの実施目的
    ※ メンバーに説明できるように
  2. 1on1ミーティングの基本的な進め方の理解
    ・事前準備
    ・進め方
    ・事後の実施事項(履歴管理など)
  3. 1on1ミーティングの基本的な質問スキル
    ・今週のPDCA質問(ペアワーク)

【研修後の実践課題】
研修内容を実施し、成果・課題をまとめ、次回報告

2回目:1on1に必須のコーチングスキル習得

  1. 実践課題の共有と問題解決
  2. 1on1に必要なコーチングスキルの習得(ペアワーク)
    ・自主問題解決型質問
    ・目標設定型質問
  3. フィードバックのスキル(指摘・承認)
    ・改善意欲を高めるフィードバックのスキル
    ・承認のスキル

【研修後の実践課題】
研修内容を実施し、成果・課題をまとめ、上司に報告

オンライン版 (ZOOMを使用した2時間×2回コース)/ 上級編

1on1ミーティングでメンバーを動機づける上級スキルを学ぶ

1回目:ワークモチベーションの基本スキル習得

  1. ワークモチベーション向上の基本メカニズムを理解する
  2. メンバーのメンタルプログラムを理解するスキル(ペアワーク
    ・質問を使ってメンバーを動かす原動力&規制力を理解する進め方
  3. モチベーションスイッチでメンバーを動かすスキル(ペアワーク)
    ・メンバーの行動力を高めるレバレッジコーチングのスキル

【研修後の実践課題】
研修内容を実施し、成果・課題をまとめ、次回報告

2回目:ワークモチベーションの実践スキル習得

  1. 実践課題の共有と問題解決
  2. メンバーの仕事の基準を劇的に引き上げるスキル(ペアワーク)
    ・メンバーの仕事の基準を引き上げ、情熱を創り出すスキル
  3. メンバーの仕事を愉しくさせる行動科学スキル
  4. メンバー自身でPDCAを実践させるセルフコーチングスキル

【研修後の実践課題】
研修内容を実施し、成果をとりまとめ、上司に報告

集合研修版(対面版)(1日 × 2回)※1日版での実施も可能

計2日間 1日+1日(3か月後) ※両日とも9時~17時(昼休憩含む)
効果的な1on1ミーティングを実施するうえで必要なスキルを2日間で効果的に学習する

1日目

  1. 会社からの説明
    ・1on1ミーティング導入の経緯、目的
  2. 1on1ミーティング実施の意義
    ・ねらい、得られる効果
    ・演習:メンバーへの説明
  3. 1on1ミーティングの基本的な進め方
    ・準備、導入、クロージング、事後活動
  4. 基本的なコーチングスキルの習得
    ・発問(質問)
    ・体系的な発問(GRAD)
  5. 成長のためのフィードバックのスキル
    ・指摘(フィードバック)
    ・承認(褒める)
  6. 1on1ミーティングロールプレイ
  7. 質疑応答、次回までの課題について
    ・次回までに職場で実践
    ・実践した課題を次回持参
    ※課題提出用フォームは提供します。

2日目(職場での実践3か月後)

  1. 1on1ミーティングの成果、実践して感じた課題・疑問点
  2. 1on1ミーティングの質を高める部下育成の技術
    ・長期視点でのキャリアマネジメントスキル
    ・ワークモチベーションマネジメントの基本
    ・仕事を愉しくするスキル
    ・モチベーションスイッチを把握するスキル
    ・仕事の情熱を創り出すスキル
    ・あり方(スタンス)のマネジメント など
  3. 1on1ミーティングロールプレイ
  4. 質疑応答、今後に向けて

その他、実施と定着に向けた2時間のオンラインによる説明会や勉強会のご支援もしております。

登壇者プロフィール

学校法人産業能率大学 総合研究所
経営管理研究所
人事・マネジメント研究センター

主幹研究員 野間 健司

  • 所属・肩書きは掲載当時のものです。

プロフィールの詳細はこちらから

野間 健司 主幹研究員の写真

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