「業務改善=効率化」の落とし穴

「業務改善=効率化」の落とし穴

「働き方改革」推進のための業務改善の現状

「働き方改革」という言葉が盛んに叫ばれ、世間をにぎわしています。
生産性の向上、長時間労働の削減、業務の効率化などを目指し、多くの企業、従業員が業務改善を進めています。

「ムダな時間が発生しないように仕事の計画を立てよう」「定時内で終わるように作業を進めよう」「効率的に進めて早く終わらせよう」など、仕事の時間をより短くすることを改善の中心にする取り組みを多く見かけます。

“業務の時間短縮=業務改善”という進め方です。
これにより、長時間労働の削減や生産性向上に貢献することができますが、業務の効率化(時間削減)だけにとらわれてしまうと、業務改善の幅を狭め、大切なことを忘れてしまうことにもなりかねません。

業務改善

業務改善の目的は?

そもそも「業務改善」は何のために行うのでしょうか?
業務改善の成果を図る指標として、「生産性」が多くの場合使われます。

生産性とは、インプットに対するアウトプットの割合として表せます。
皆さん一人ひとりの仕事に当てはめると、業務時間に対しての成果の割合ということになります。
より短い時間で成果を出すことが生産性の向上になるということです。
上記の式で考えた場合、生産性を向上するにはどのような方法があるでしょうか。

生産性を向上するには、上図に示すように5つのパターンが考えられます。

  • 業務の成果を現状と同程度に保ち、業務時間を減らす方法です。
    多くの方が業務改善で検討する方法であり、業務の成果に貢献しないムダな時間を削減することなどが考えられます。
  • 業務の成果を少し下げることで、時間を大幅に削減する方法です。
    成果を下げるというのは、誤解を招く表現かもしれませんが、仕事の品質を落とすことではなく、過剰なアウトプットを見直すことととらえてください。
    仕事に熱心なあまり、要求されるレベルよりも過剰な作業をしてしまうケースが多くみられます。
  • 業務時間を短縮したうえで、成果を現状より向上させる方法です。
    生産性の向上度合いはもっとも大きいですが、実現するのは大変です。
    個人レベルの改善では限界があり、標準化やしくみの変更、システム導入など組織や職場単位での改善が求められます。
  • 現状と同程度の作業時間で成果をより上げる方法です。
    業務を開始する前に要求事項を的確に確認することで、要求されるレベルによりマッチする成果物を作成したり、時間をより有効に活用し、ミスや修正のない成果物に仕上げたりすることが考えられます。
  • 作業時間を少し増やし、業務の成果を向上する方法です。
    業務時間が増えては改善にならないのでは?と思われるかもしれませんが、組織や職場全体で考えると生産性の向上に貢献します。
    業務は本来、担当者同士が連携して目的を果たします。
    皆さんが創出した成果物が次の担当者のインプットとなります。
    次の担当者が使いやすい、業務が楽になるような成果物を提供することで、次の担当者の業務がより短い時間でできることになるのです。
    担当者同士がお互いに貢献しあうことで、職場全体の生産性向上につながっていきます。

生産性の向上は、インプットとアウトプットのバランスで決まります。
作業時間の削減だけでなく、業務の成果を意識する必要があります。
つまり、業務に費やした時間以上の成果を出すようにすることが業務改善の目的であり、皆さんの業務の価値を上げていくことにもなります。
業務改善は、皆さんの業務の価値を向上することが目的です。

忘れてはいけない目的意識

業務改善において難しい点の一つに、“業務の成果”をどのように捉えるのかということがあげられます。
管理間接の業務なので成果が見えにくく、捉えにくいという方も多いと思われますが、業務の成果を捉えるには、「業務の目的」を意識するようにしてください。

今行っている業務は何のために行なっているのか?このように目的を常に考えて業務を行うことが大切です。

業務の成果とは、目的への貢献度合いと捉えることができます。
業務改善とは、業務の目的を果たすための最適な方法を見つけることです。
業務の目的を忘れることなく、業務改善を進めるようにしましょう。

業務改善に関心のある方は下記をご参考ください。

プロフィール

産業能率大学 情報マネジメント学部
教授
神戸 正志

専攻・専門分野
バリュー・エンジニアリング
コスト・エンジニアリング

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神戸 正志