イベントリポート『生産性向上の実現に向けた働き方改革』(事例発表)vol:3

パネルディスカッション 「働き方改革の現場実践に向けて」

住友様と安藤研究員によるテーマ討議、またご参加頂いた皆様からの質疑応答

~ アジェンダ ~
◆<質問1>製造現場の生産性向上
◆<質問2>生産性の評価方法
◆<質問3>削減した残業代の用途
◆<事務局より>
◆<安藤研究員より>

<住友様、人事担当者の皆様>

<質問1>製造現場の生産性向上

Q:(H氏)弊社でも、売上倍増という目標を持ちながらも、労働時間を減らすことを目指していますが、労働時間と売上が比例関係にあるため、労働時間を減らすことにより、売上が下がらないか悩んでいます。特に製造現場では、労働時間と売上が比例する部分もあるかと思いますが、製造現場での生産性向上の取り組みがありましたら、教えてください。

A:(日本電産・住友氏、以下同)製造現場においては、作業時間の短縮に向けて、ロボットを使った最新鋭の設備を導入するなど自動化を進めています。人の手をできるだけ使わずに製造できるような技術を開発するために、グループ会社も含めて研究開発に取り組んでいます。また、生産技術の研究開発拠点として、2018年2月に「生産技術研究所」を設立します。

<質問2>生産性の評価方法

Q:(I氏)生産性をどのように人事評価に組み込んでいるのでしょうか。組み込まれている内容、もしくはお考えなどをお聞かせいただければと思います。

A:評価制度の仕組みそのもののご説明は、控えさせていただきますが、同じような評価レベルであっても、その精査においては、アウトプットを意識して評価を実施しています。どのような行動・アプローチから、どのくらいの時間をかけて、どのようなアウトプットを出してきたかで差がつくことになります。
この評価を成り立たせることができるのは、管理職によるマイクロマネジメントです。管理職が日頃から部下がやっていることをしっかり把握して対応できているかということが一番のポイントになります。

<質問3>削減した残業代の用途

Q:(J氏)当社でも、時間外労働時間を削減したいと考えています。しかし、残業代が減ってしまうと社員の収入に影響が出ますので、減った分をどのように処遇に反映させるかで悩んでいます。日本電産様は、削減した残業代について社員に還元していると聞きますが、どのような対応を取られていますでしょうか。お聞かせください。

A:削減した残業代の半分は、語学などの社員教育に、残りの半分は賞与で還元しています。また、具体的な処遇への反映方法のお話は控えさせていただきますが、賞与で還元する場合は、社員の役割に応じて還元しています。
今後も社員への還元は、当社の働き方改革サイクル(①仕事の仕方の変革⇒②生産性向上による残業削減⇒③創出した時間に対する還元⇒④会社・社員のレベルアップによる業績向上)を回していく中で実施していきます。

<事務局より>

第3部の質疑応答セッションでは、参加者の皆様から、施策の具体的な進め方についてなど活発に質問が挙がり、住友様には丁寧にお答えいただきました。
また、ほかに社内の日々のちょっとしたご様子や裏話として、次のようなお話もありました。

・日本電産様の「挑戦への道(Nidecポリシーや永守イズムを伝えるもの)」について、朝礼などの際に、毎日必ず社員間で確認する時間を取っている。

・毎日、朝礼や終礼を行っており、社是などの唱和、その日の重要な報告・課題の共有、時間外労働の申告などを行っている。

・働き方改革を進めるにあたり効率を阻害する要因などについて、実務面も含め、会社のことを良く理解している中堅社員200名にヒアリングを行い、各種施策に繋げている。

<安藤研究員より>

 日本電産様本社1階には創業時の本社(小さなプレハブ小屋)が展示されています。初めてそこを訪れたとき、思いがけず浮かんだ言葉が「愛、愛情」。その直後にお目にかかった住友様や同席された社員の方々から伺った「日本電産という会社」から得た確信は、やはり「愛(仁、人を愛する心)」でした。
 自律できる組織や組織人に必要なことが「仁義礼智信(五常の徳)」であると言ったら「そんな昭和までみたいなことを」と失笑を買うでしょうか。ここに「経営」や「数値」に対するコミットメントがなければその通りです。
 物量的な能力は、既にAIやロボットが人間のそれを遥かに超えています。表面的に留まらない「ヒトを大切にする=育成する」ための凄み(決意、覚悟)を、日本電産様の取組みから感じずにはいられないのです。

関連コラム・記事・情報