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対談特集:ビジネス環境の変化に即応する 若手リーダーシップのあり方を探る。


企業に入社したことで自己実現を果たしたと考える若手社員は、もろく、働く意味を見失いがちだ。承認欲求が強く、受け身型が多い若手社員の働く意欲を、どのように引き出し、高めていくべきなのか。企業の現場で数々の活性化支援を行ってきた前川孝雄氏と、大学でリーダーシップ論を実践的な視点で研究してきた小野善生氏に語っていただいた。



  • ■株式会社FeelWorks代表取締役
    青山学院大学兼任講師 前川 孝雄
    1966年生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。(株)リクルートにて「ケイコとマナブ」「リクナビ」等の編集長を歴任後、「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に人材育成の専門家集団(株)FeelWorksを創業。「上司力研修」「人を活かす経営者ゼミ」などを手掛け、約300社で人が育つ現場づくりを支援している。著書に「『働きがいあふれる』チームのつくり方」(ベスト新書)、「上司の9割は部下の成長に無関心『人が育つ現場』を取り戻す処方箋」(PHPビジネス新書)、など。最新刊は『5人のプロに聞いた! 一生モノの学ぶ技術・働く技術』(有斐閣)。
  • ■滋賀大学
    経済学部・大学院教授 小野 善生
    1974年生まれ。1997年、滋賀大学経済学部卒業。2003年、神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、滋賀大学経済学部助手。関西大学商学部准教授等を経て、2017年から滋賀大学経済学部・大学院教授。博士(経営学)。専攻は組織行動論、リーダーシップ論。フィールドワークによる実践的な研究に力を入れる。著書に「フォロワーが語るリーダーシップー認められるリーダーの研究」(有斐閣)、「最強の『リーダーシップ理論』集中講義」(日本実業出版社)、「リーダーシップ」(ファーストプレス)など。

漠然と大企業を選択し、数年後に働く意味を見失う若者たち

―― 今の若手社員はどのようなキャリア展望を持っているのでしょうか。その考え方や傾向についてお聞かせください。


— 前川さん
特徴的なことを言えば、やはり環境変化の激しさということもあって、安定や安心というものを望む傾向がいっそう強くなってきている気がします。就職活動においても、もともと大手企業、人気企業に行きたいという傾向は強かったのですが、それがいっそう顕著になってきている印象です。  ただ一方で、大企業に入ったから自分の将来は一生安泰という時代でもないことも分かっています。しかし、当面、それ以外に選択肢がないので、消去法で大企業を選んでいるようです。

— 小野さん
教え子たちの就職活動を見ても、たしかに大企業を選んでいる学生が多く見受けられます。その様子を見ていると、きちんと業界のことを調べている学生は、その業界のトップを徹底的に狙って、希望する企業に入っています。逆に、漠然と安定した企業という方向性だけで就職活動をやっている学生は、残念なことになかなか内定が出ないようです。

— 前川さん
大学の中盤から卒業直前までの短い時間で、業界研究、企業研究、さらに自己分析をして、自分はこれがやりたいと決めてから、それに基づいて自己PR、志望動機を考えるというようなベルトコンベア式の就職活動の仕組みができていて、この短期間の中で決めたことが「自己実現」と呼ばれています。しかし、学生や若手社員にインタビューをすると、本当にそれがやりたいことだったのか、分からなくなっているという話がよく出てきます。

 例えば転職のタイミングという視点で見ると、いまの若手は二極化しているような気がします。この情報過多の時代で自分の道を迷わずに爆進している若者もいて、その中には、ある程度時間が経つと次のステップを考えて転職も考え始める人もいます。
反面、一応の志望動機を持って入社したような大多数の人たちは、数年経って、ふと本当に自分がやりたかったことはこれなのかと立ち止まったときに、インターネット等の影響でさまざまな情報も入ってきますから、窓口がたくさん開いていることに気がつき、いろいろと迷いはじめるのです。そういう環境の中で、上司や先輩との人間関係がうまくいかないなど、ちょっとした問題があると、それがすぐに転職への引き金となっているように見受けられます。

承認欲求が強い世代は、打たれ弱い世代でもあり、主体的にはなかなか動かない

―― そうした若手社員や学生たちの現状について、もう少し分析していただくと、どういう特徴が浮かんでくるのでしょうか。



— 前川さん
今の若い人たちに共通しているもの、もっと言えば若者は時代を映す鏡なので、全般的に言えると思うのですが、承認欲求が非常に強くなってきています。自分を認めてほしい、自分のがんばりを見てほしいという傾向です。少子化という時代背景もあり、ゆとり教育だけの問題ではなく、家庭内教育を含めて子どもたちは大事に育てられ、大学受験や就職活動の仕組みも、全部お膳立てされるのが当たり前という状況の中で、周りに承認を求める傾向が強くなってきていると感じます。褒めて育てられ、甘やかされているとも言えるでしょう。

— 小野さん
学生たちを見ていても、ちょっと打たれ弱いところがありますね。厳しいところはなるべくなら避けていくという傾向があります。ですから教師の方も、勉強してもらうために、環境を整えることから始めてなくてはなりません。整えられた環境の中ではいろいろとできるのですが、その環境がなくなるととたんに全然動けなくなることがあります。

例えば、卒業論文を書くとき、それまでのグループワークなどはしっかりとできる。ところが、論文は主体性が求められる個人戦になってきますから、教師は大まかな方針を示すだけです。そうすると、なかなか動いてくれず、こちらの指示を待っているということがあります。
以前は違う大学で教えていたので、別の大学であれば変わるかなと思っていたのですが、学生の傾向は変わりませんでした。こうした学生たちにどう向き合っていくかは、教える側としては課題です。

日本型組織モデルが維持できない現状では、人材育成のあり方も変わらなくてはならない

―― 組織というのはやはり成果を求めます。グローバル化する厳しいビジネス環境の中で、若手社員に求められることも変化してきていますが、その辺はどのように見ていらっしゃいますか。

— 前川さん
今の若い人たちに共通しているもの、もっと言えば若者は時代を映す鏡なので、全般的に言えると思うのですが、承認欲求が非常に強くなってきています。自分を認めてほしい、自分のがんばりを見てほしいという傾向です。少子化という時代背景もあり、ゆとり教育だけの問題ではなく、家庭内教育を含めて子どもたちは大事に育てられ、大学受験や就職活動の仕組みも、全部お膳立てされるのが当たり前という状況の中で、周りに承認を求める傾向が強くなってきていると感じます。褒めて育てられ、甘やかされているとも言えるでしょう。

 また、コミュニケーションのあり方も変化してきています。以前は職場にも少し余裕があり、夜まで残業したら、まぁ一杯飲みにいくかという部分もあったわけですが、今では働き方改革の一環として残業が否定され、時間を切り詰めて働いているので雑談するなどといった余裕がありません。ダイバーシティで年齢や世代がバラバラの職場環境の中で効率だけが求められ、かつコミュニケーションが乏しいため、すごく殺伐とした状況の職場が増えているのではないでしょうか。

早い段階でのリーダーシップが必要な時代、リーダーシップのあり方も大きく変貌した

―― コミュニケーションや世代間ギャップの中でもがいているからこそ、若手社員にもリーダーシップが必要とも言えますね。

— 前川さん
そうですね。リーダーシップという概念で言えば、今こそ、より求められてきていると思います。特に、新入社員から若手社員のタイミングで求められるようになってきています。正社員ということを前提とすると、入社するといきなりイノベーティブで、かつクリエイティブなことを多少なりとも要求されるようになってきている状況です。それに応えようとすれば、自分で考え、自分で課題を見つけ、自分で工夫していかなくてはなりません。自律型人材と言われるように、自分なりに、自分自身をもリードしていくことが必要ですし、「これが課題だと思います」「この仕事をやってみたいです」ということを先輩や上司に提案するタイミングがとても早いフェーズでやってきており、今まで以上にリーダーシップが求められています。

— 小野さん
時代とともにリーダーシップ自体も定義や考え方が変遷しています。リーダーシップは20世紀初頭くらいから研究がスタートして、1950年代以降は、決められた課題をいかに前に進めるかというところに関心がありました。何がモチベーションになるかと言えば、経済的報酬なのです。これだけの報酬が得られるから前へ進めという考えです。それが1960年代になると、自己実現欲求やクリス・アージリスの「成熟した個人」であるとか、その人間の主体性を重視しようという議論が出てきます。さらにその後アメリカの景気が落ちてくると、その中で企業再建を成し遂げるケースが出てきて、今度はカリスマや変革型のリーダーシップになりました。

 最近の研究では、特定のリーダー一人だけでは課題解決はできないから、メンバーが集合的にし、団体戦で解決するという議論が活発です。リーダーだから、管理者だから自分の言うことを聞けというコントロール型の考え方を改めないと、生産性は上がっていきません。
日本のマネジャーと呼ばれる人たちの中には、まだリーダーシップはコントロールだという発想から抜けられない人が多くいます。しかし、現代はフォロワーの主体性をいかに引き出すかがリーダーシップなのです。
リーダーは組織が目指すものを発信し、フォロワーはそれに共鳴し、積極的に関わり、全員が当事者意識を持つ。そうした関係ができないと、今後求められる組織のリーダーシップはとれないということです。

内発的動機付けのアプローチで、やる気を高め、絶えざるセルフリニューアルが必要となる

―― さまざまな考え方のあるリーダーシップ理論ですが、組織としてどのような若手社員を育成していくべきなのでしょうか。

— 前川さん

大きく二つあります。一つは若手社員のビジネスマインド、働く軸をはっきりさせることが必要です。一人ひとりが各々の志望動機を持って入社してきたわけですが、最初も言ったように実は漠然としていますから、3年ごとぐらいに、内省して自分は何のために働くのか、何を目指すのかということを明確化させることが重要です。小野先生が指摘されたように、経済的な報酬に対する動機付けが以前よりは効かなくなってきていますから、外発的な動機付けではなく、内発的な動機付けが重要になるということです。もう一つは、それを受け止める側や指導する側の上司層も変わらなければなりません。いかに内発的動機付けのアプローチで若手社員のやる気を高めていくかということを、マネジャー層は学ぶべきです。

— 小野さん

心理学者のデシ氏によれば、内発的動機付けには二つのポイントがあると言われています。一つは有能感。自分はやればできる、得意である、自信が持てるということです。もう一つが、自己統制。コントロールできるということです。つまり、有能感と自己統制という二つの感覚が、内発的動機付けを喚起する重要な要素と言われています。

 数年前、組織心理学のエドガー・シャイン氏の講演で「私はけっこういい年になるが、いまだに学び続けている」とおっしゃっていました。あれほどの大先生がまだ学び足りないというのを聞いて、自分自身も反省したのを覚えています。何かのポジションについたらそれで終わりということは決してなく、一生学び続けていかなくてはならないということです。絶えずセルフリニューアルして、絶えずバージョンアップをしていかなければなりません。ですから、若手であろうが、シニアであろうが、ずっと学び続けていく環境がないと組織自体も大きな環境の変化に適応できません。学ぶ習慣や必要性を、いかに組織の階層に関係なく根付かせることができるかが、非常に重要になってくると考えます。

前川氏と小野氏は、本学の新コース「ホップ・ステップ・リーダーシップ」の開発に携わっていただきました。

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