【SANNOエグゼクティブマガジン】主体的仮説構築のすすめ 〜「私はこうしたい」という仮説こそが、組織に新たな活⼒を⽣み出す〜

「誰の何のために働いていきたいか?」この問いに明確な答えを持っているビジネスパーソンはどのくらいいるでしょうか?

⾔われたことは確実にこなせるが、もっと⾃ら積極的に業務改善を提案してほしい、もっと職場でリーダーシップを発揮してほしいなど、社員の主体性を⾼めたいと感じるマネジャー・⼈事担当者は多くいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は、私はこうしたい!という強い思いを持って、組織に貢献する仮説「主体的仮説構築」というアプローチを紹介します。

主体的仮説構築とは

組織としては、個⼈に主体性を持ってほしいという要望がある⼀⽅、個⼈としては、忙しい・⼈が⾜りない・やり甲斐を感じないなど、双⽅に⽭盾が⽣じている場⾯が多くあります。そこで、私は組織と個⼈の双⽅がともに成⻑できる「主体的仮説構築プログラム」を推奨しています。

主体的仮説とは、「幅広いものの⾒⽅・考え⽅を持ちながら、⾃分の想いを明確にし、組織内もしくは、顧客・取引先などさまざまなステークホルダーにとって価値のある企画・提案のこと」と定義づけています。
この主体的仮説には、以下の3つの構成要素が必要です。
第⼀は、「誰の何のために働いていきたいか?」という個⼈の強い思いです。この思いが弱いと主体性の発揮も弱くなってしまいます。この思いを明確にすることが仮説構築の起点です。
第⼆は、幅広いものの⾒⽅・考え⽅です。⾃分の担当業務だけでなく、組織全体を⾒渡せる視野の広さや、市場や競合などの外部環境についても情報収集を⾏うなどの多⾓的なものの⾒⽅・考え⽅です。⽇常から習慣化することが重要です。
第三は、⾃分の考えを価値ある仮説にまとめる仮説構築⼒です。論理性などの思考⼒は⽋かせない要素ですが、仮説構築をするためのフレームワークを複数持っておくことも重要です。

仮説構築の2つのアプローチ

では、組織にはどのような仮説が求められるのでしょうか。ここでは「業務改善型仮説」と「事業創造型仮説」という2つのアプローチをご紹介します。
「業務改善型仮説」とは、既存事業や⾃分の担当業務について、あるべき姿と現状を明確にした上で、そのギャップを問題として捉え、問題解決に向けて打ち⼿を検討していく仮説です。売上向上やコスト削減、業務効率化など組織が環境変化に迅速に対応するためのアプローチです。業務に関する⾝近なテーマとなるため、問題意識も⾼く、⽐較的着⼿しやすいという特徴があります。
⼀⽅、「事業創造型仮説」は、新規事業⽴案などのビジネスプラン構築⼿法を⽤いた仮説で、既存の事業活動に限らず、「将来このようにやったらこう変わる」という新しい発想や考えを仮説に起こす⼿法です。業務改善型仮説よりも視座の⾼さが求められ、全社最適視点や強い顧客志向や社会貢献志向が必要となります。
どちらの仮説アプローチであろうと働く個⼈が主体性を持って、上司や組織に提案することが望ましい姿でしょう。しかし、それが組織内に⾵⼟として定着していなければ、OFF-JTなどの場を設け、仮説づくりのきっかけを作る必要があります。

主体的仮説構築の策定ステップ

では、効果的な仮説構築はどのようにすれば良いでしょうか。以下に主体的仮説構築の策定ステップを⽰します。

STEP1 思いの明確化


「誰の何のため?」この問いに対して、⾃問⾃答し、またメンバーとの対話を通して思いを明確にしていきます。ここで⼤切なことは、貢献ベクトルが個⼈だけではなく、対組織や対顧客など個⼈以外にも向いている必要があるということです。つまり、⾃利と利他の両⾯で「誰の何のため?」を考えるということです。主体的仮説構築においてもっとも重視する部分です。

STEP2 思考⼒・問題解決スキルの強化


次に問題解決スキルを⾼めます。仮説は⽴てれば終わりではなく、具体的な計画を⽴て実践し、結果を出すことが求められます。そのためには、まず担当業務について問題解決ができる知識・スキルが必要不可⽋です。問題解決のプロセスを正しく理解し、常にその思考プロセスを頭の中で回すことが求められます。

STEP3 戦略・マーケティングスキルの強化

問題解決スキルが⾼まれば、より⾼い視点で仮説を設定することが期待できます。そのためには、全社レベルで物事を考え、「事業創造型仮説」を構築できる⼒を養う必要があります。経営戦略やマーケティングなどビジネス仮説を⽴てるために必要な知識・スキルの強化が必要です。

STEP4 仮説構築とプレゼンテーションスキルの強化


最後は、⾃分が⽴てた仮説を資料に起こし、伝えるスキルを強化します。実際にプレゼンテーションを⾏い、⾃らの思いを相⼿に伝えることで、おのずと主体性も芽⽣えてきます。聴き⼿に響く内容であれば、実際に業務として取り組み、組織へ成果をもたらします。

上記のステップを踏まえて「主体的仮説構築」を⽴案すれば、様々な効果が期待できます。個⼈にとっては、働く思いが明確となり、キャリア・ビジョンも⾒えてくるでしょう。また、仮説に取り組みたいという意欲も芽⽣え、それを成し遂げるための胆⼒も出てくるはずです。
⼀⽅、組織にとっては、個⼈の主体性が芽⽣えたことで、周囲に良い刺激が与えられ、職場の活性化につながります。また、組織内に様々な仮説が⽣まれることで、チャレンジ精神も醸成されます。
働き⽅改⾰という⼤きなテーマを抱える今だからこそ、主体的仮説をいくつも⽣み出し、個⼈と組織がともに成⻑できるよう期待します。