【SANNOエグゼクティブマガジン】組織活性化のカギ〜⼀⼈ひとりの「感情の質」を⾼める

組織活性化のイメージを明確にする

組織の活性化(OD/Organization development)とはなんでしょうか。何をすることなのでしょうか。
“活性化”という⾔葉⾃体、実に抽象度の⾼い⾔葉です。
どうなったら組織が活性化されたと⾔えるのでしょうか。多くの組織は、この問に答えることができません。
何においてもゴールのイメージが明確でないものが創造されることはないのです。もし創造されたとしても意図と違ったものになる可能性が⾼いでしょう。そのため、まずはどんな組織を創りたいのか、というゴールイメージを鮮明にする作業が必要です。
それは簡単なことではないかもしれません。組織員が⽣計を得るためだけの組織なのか、それ以上の意味を持った組織を創るのか、という選択を迫られるかもしれません。

どんな組織を⽬指すかによって、取り組みは異なります。
退職やメンタルダウン、コンプライアンス問題が起きない程度の組織でよいのか、それとも社員がこの会社で良かったと、⼼から⾔ってくれるような組織を創りたいのか、期待レベルによって取り組みは異なるのです。

組織活性化のアプローチとツール

実は組織の活性化⾃体は、それほど難しいことではありません。今⽇、組織活性化の理論や⼿法はある程度完成されており、多くのツールも⽤意されています(【図1】参照)。

【図1】組織活性化(OD)のアプローチ/ツール

(図は筆者による)
上図の“コンテント”とは活動内容のことであり、“プロセス”とは、活動の際のコミュニケーションの取り⽅やチームプレーのあり⽅のことです。プロセスレベルが向上することで、コンテントレベルが向上するという前提の基、プロセスの質的向上を図るわけです。組織員同⼠の関係性を強化したり、コミュケーション⼒を⾼めることで、組織活動のプロセスは確実に向上します。
またスキル教育だけでなく、⼀⼈ひとりがあり⽅・存在(BEING)を⾒直すことも必要です。
⾃分のあり⽅に気づくことは、⾃⾝のチーム活動に対するあり⽅(BEING)を修正するきっかけとなります。⼈が真に⾏動(DOING)を変容するためには、⾃らによる気づきが重要だからです。

組織感情へのアプローチ

本当に素晴らしい組織にしたいのであれば、組織員が仕事でやりがいを強く感じられる組織を創らねばなりません。やりがいとは、⼈間的な成⻑感や、⾃分の仕事を価値ある仕事と思える気持ち(重要感)のことです。
仕事を通して⼈間的な成⻑を感じるとき、⼈は真の充実感を感じます。そして⾃分の仕事が誰かを幸せにしていると感じるとき、⼈は真の重要感を感じます。そのため、⼈は感謝されることに強い喜びを感じるのです。⽇々、感謝されながら仕事をしている⼈は、⾃分の仕事に誇りを感じ、仕事を天職のように感じているでしょう。

社員満⾜度が本当に⾼い組織とは、⼈間的な成⻑感や本物の重要感を感じられる環境を組織員に提供している組織です。今⽇の組織は、成⻑感や重要感といった“組織員の感情⾯”に、もっとフォーカスを向ける必要があります。
⼈が欲しいものとは感情であり、⼈の集合体である組織も同じなのです。組織の質とは感情の質であり、組織の活性化とは組織の感情の質を⾼めることに他ならないからです。

組織感情の質を⾼めるためには、結局、⼀⼈ひとりの感情の質を⾼めることが必要になります。組織員⼀⼈ひとりが⾃⾝の感情の状態に気づき、⾃⾝の感情を⾼く維持することで、組織⾏動の質的向上が図られます(【図2】参照)。

【図2】組織感情の質的向上とは

たとえばサービス業で、顧客に感動を創り出したいのであれば、スタッフ⾃⾝が感動を感じていなければなりません。⼈は⾃分に出来ない事を他⼈には出来ないからです。⼀体感のあるチームプレーが必要であれば、お互いの強みにフォーカスし、リスペクトし合っている“感情の状態”が必要になります。

⼀⾔で⾔って、近年の組織活性化のアプローチは、“ポジティブアプローチ”です。現在、褒める⾵⼟創りを推進している組織が増加しているのはそのためです。怒られるよりも、褒められた⽅がエネルギーが⾼まります。
⼈は苦痛を避けて、快感を求めて⾏動しているのです。⼈は楽しくない環境では、⻑期間、主体的に⾏動は出来ないのです。⽇本⼈は欧⽶のように褒める⽂化がありませんが、トレーニングによって褒める習慣を醸成することが可能です。

どんなレベルで取り組むにしても、組織の活性化は技術を以って可能なのです。売上、利益といった財務的な成功だけでなく、社員の幸福、つまり成⻑感や重要感の享受を組織活動の⽬標とする組織が、世界的に増加しています。ボーダレス時代の今⽇、我が国でも、この傾向はさらに加速化していくことでしょう。