リーダーの4つの役割(2)(3).組織を整える【第5回 リーダーシップ「第8の習慣(R)」~いま、求められるリーダーシップとは?】

第5回 リーダーの4つの役割 2.方向性を示す、3.組織を整える

今回は、『リーダーの4つの役割』のうち、「方向性を示す」と「組織を整える」についてご説明しましょう。

リーダーの4つの役割  『2.方向性を示す』

一般的に、「方向性を示す」リーダーの第1のやり方は、メンバーを関与させることなく、ビジョンや価値観、戦略を一方的に通知することです。また、第2のやり方は、メンバーに対して明確な指針もなく無責任に任せ切ってしまうことです。その結果、分析やミーティング、果てしない議論ばかりになったり、戦略の実行や本来の目的がほとんど忘れ去られてしまったり、といった状況になりがちです。

「第8の習慣」が提案する第3のやり方
ビジョンやミッション、戦略を策定するプロセスに、適度にメンバーを関与させることでメンバーに主体性を与え、チーム内に相乗効果を生み出す文化を築く。



メンバーに重要な目標をはっきり理解させ、それに対して強く決意してもらうには、彼らを意思決定に参加させる必要があります。組織がめざすものは何かを一緒に考え見出すことで、組織のメンバー全員がそこに到達するまでの戦略やプロセスをメンバー自身のものにすることができるのです。

ビジョンとは、利害関係者のニーズに応え、チームの意義を果たしている状態を具体的に示すものです。リーダーとして、意義を理解し、ビジョンを示すことは、リーダーの大きな役割のひとつです。

ビジョンを描いたら、次に行わなければならないのは、ビジョンを、目標を見据えて実際に行動できる形に移し変える、いわば翻訳するという作業です。
ビジョンを具体化した戦略目標は、ごく少数であること、優先順位が決められていること、測定可能であること、説得力のあるスコアボードで評価可能なことが重要です。そうすれば、戦略目標が何で、どのように達成すべきかを、誰もが正確に把握できるようになります。

次に、具体的で行動に置き換えることができる戦略計画を、メンバーもできるだけ関与させながら策定しましょう。 リーダーには、策定した戦略を遂行して成果を上げる責任があります。
優れたビジョン・ステートメントと戦略計画がそのチームにあるかどうかは、組織のどのレベルのどのような人物に問いかけても、自分の仕事が戦略計画にどのように貢献、チームを動かす価値観とどのように調和しているかを、メンバーが説明できるかどうかにあります。

メンバー間でビジョン・ステートメントと戦略計画が深く共有されていれば、ビジョンの実現に向けてもう半ば達成されているも同然です。すでにそれぞれのチームメンバーには、成果を出したイメージが明確に描かれ、成果に向けてすでに準備はできているからです。

リーダーの4つの役割  『3.組織を整える』

リーダーとして方向性を見出したら、次に取り組まなければならないのは、チームのビジョンを実現するために、チーム内の組織構造やプロセス、システムを整える、つまり「組織を整える」ことです。

私たちは、様々な利害関係者とともにビジネスを行っています。持続的に組織を維持成長させるためには、定期的にフィードバックを受けて軌道修正していくことが特に重要です。

現在のあなたのチームにおける体制、制度、プロセスを定期的に見直してみましょう。
それらは、チームメンバーが最優先事項を実行できるようになっているでしょうか?あるいは、その実行を妨げるものになってはいないでしょうか?組織が支持する価値観と一致しているでしょうか?

障害を取り除くのはリーダーシップの責任ですが、簡単なことではありません。時には、組織を整えるプロセスで、自分自身を深く謙虚に見直すだけでなく、多くの「神聖で侵すべからざる」組織の制度や体制も見直す必要が出てくることもあります。
組織内には、内部での競争を煽り、短期的な勝利に報いる制度が未だ深く根づいていることも事実です。しかし、忘れてはならないことは、制度を作り上げたのは「人」であるということです。
一般的なメンバーには、制度や体制を選択する自由はありませんので、組織や制度を作り上げたリーダーには、責任が生じます。リーダーには、制度やシステムに従うのではなく、働きかけることが求められているのです。

第1の規律:最重要目標にフォーカスする
最重要目標とは、もしそれが達成できなければ他のことが達成できても意味がなくなってしまうほど重要度の高い目標のことです。これは、組織にとって、10も20もあるような目標のことではありません。必ず達成しなければならない最も重要な1~3つ程度の目標に絞るということです。


第2の規律:先行指標に基づいて行動する
ビジネスの成果を図る指標には、遅行指標と先行指標の2種類があります。 遅行指標とは、結果の数値です。月間や四半期の売上数字や利益額など、非常に重要な指標ですが、結果としての数値のため、指標が出たあとはどうすることもできません。それに対して先行指標とは、遅行指標を達成するために、先行して計画し管理していく数値です。


第3の規律:行動を促すスコアボートをつける
目標と指標を定義したら、それをスコアボードに示し、勝敗が常に誰の目にも明らかになるようにする必要があります。


第4の規律:アカウンタビリティ(説明責任)のリズムを生み出す
チームメンバーは実行するだけではなく、結果に対して責任を持たなければなりません。
そのためには、リーダーは定期的にチームメンバーからの報告を受け、状況を確認し、必要な資源やサポートを提供する必要があります。



期待する結果が得られるよう完璧に組織を整えたにもかかわらず、望む結果が得られなかったならば、システムが的を外しているのではと疑ってみる必要があるでしょう。また、部署、チームの持つシステムは、原則や価値観と深く調和していなければなりません。

組織を整え、戦略を実行するシステムを構築するには、有言実行の原則が不可欠です。システム自体は価値観と整合していたとしても、そこに誠実さを持った有言実行がなければ、何も成果を生むことはできません。


※「第8の習慣」「7つの習慣」等は、フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社の登録商標です。