組織の慢性的な問題と「リーダーの4つの役割」【第3回 リーダーシップ「第8の習慣(R)」~いま、求められるリーダーシップとは?

第3回 組織の慢性的な問題と「リーダーの4つの役割」

組織の慢性的な問題

前回は「ビジョン」、「自制心」、「情熱」、「良心」についてご説明しましたが、ここではまず、それらが組織の中で重要視されないとどのような悪影響があるのかを見ていくことにしましょう。

「ビジョン」がおろそかにされる組織では、想像力を働かせることが難しくなるために、「目的やビジョンが明確でない」組織になる可能性があります。そうなると、メンバーはそれぞれの思惑で動き、政治的なゲームが横行し、意思決定の際には組織の目的やビジョンと反した様々な判断基準が用いられたりして、原則とはかけ離れた価値観を持つ組織文化へとつながっていきます。

「自制心」がおろそかにされる組織では、規律を軽視する風潮が蔓延し、組織にとって重要な戦略の実行力や支援体制もなく、「官僚的でばらばらな組織」になってしまいます。システムやプロセスが機能しなくなり、事態の収拾をつけようとするリーダーは、ますます管理の手綱を強める必要性を感じるようになります。そのためルールが幅を利かせるようになり、格式ばった官僚的手続き、極端なヒエラルキーの遵守、多過ぎる規則や規範などが目立つようになってきます。

「情熱」がおろそかにされる組織では、目標や仕事に対する情熱も気持ちの上での一体感もなく、内から湧き起こってくる自発的な熱意もないという状況になりますので、「才能と可能性が引き出されていない」状態となり、組織全体での無力感が広がり、仕事の表面的な掛け持ち、倦怠、怒り、不安、無関心、面従腹背などの症状が現れてきます。

「良心」が軽んじられる組織では、メンバーがそれぞれの良心に反する行動をとりがちなので、信頼など生まれないのは明らかです。「低い信頼」は、多くの企業が直面する第1の慢性的問題です。低い信頼しかない企業には、陰口や内輪もめ、中傷、保身、情報の独占、自己防衛的で自己弁護的なコミュニケーションなどが現れてきます。

このような慢性的問題とその症状がいくつも重なると、大きな問題として表面化します。
売上の減少、市場や顧客からのクレーム、低品質、コストの増大、行動の鈍さ、告発など。そして、責任を転嫁し非難の応酬が続く組織文化が生まれてしまいます。

このような「組織の慢性的な問題」は、現代の組織のいたるところに現れています。

慢性的な問題を解決する「リーダーの4つの役割」

では、具体的にこれらの慢性的問題を解決するには、どのようにすれば良いのでしょうか。

組織内の信頼が低ければ、自らが信頼性の「模範になる」ことによって信頼を築き、また、ビジョンや価値観が不明確で共有もされていなければ、共通のビジョンや価値体系を作り出すための「方向性を示す」ことに注力する必要があります。
官僚的でばらばらな組織で協力関係が欠如していれば、目標や構造、システム、プロセスなどの「組織を整える」ことに腐心して社員の能力を引き出し育てて、組織文化の形成に努めることが求められます。
また、社員の才能や可能性が十分に発揮されていなければ、プロジェクトや作業遂行の段階で個人やチームの「エンパワーメントを進める」ことにフォーカスしなければなりません。

コヴィー博士はこの4つを「リーダーの4つの役割」と呼んでいます。

第1の役割「模範になる」
文字通り、リーダーとしてメンバーの模範になることです。 どれだけリーダーに先見性や戦略策定の力があってビジネススキルに長けていたとしても、リーダー自身が不誠実であれば、メンバーにリーダーシップを発揮することはできないでしょう。この「模範になる」ことのポイントは、「トリム・タブになる」「信頼を築く」「第3の案を探す」という3つの行動です。


第2の役割「方向性を示す」
「共通のビジョン、価値観、戦略を確立する」ことです。リーダーとして組織やチームを導くには、「私たちはどこへ向かっているのか」をリーダーが指し示し、メンバーと共有する必要があります。


第3の役割「組織を整える」
「組織を整える」とは、目標と制度のベクトルを合わせて結果を出すことです。


第4の役割「エンパワーメントを進める」
チームメンバーの情熱と才能を引き出し、メンバー自らがリーダーシップを発揮できるように接し、サポートし、鼓舞することです。



これらの4つの役割は、互いに深く関連しており、しかもリーダーはすべての役割を果たす必要があります。ある役割ができなくても違う役割ができていれば良い、ということではありません。どれひとつが欠けても、チームとしての本当の長期的な成果を生み出すことはできません。

では、次回からは、この「リーダーの4つの役割」を一つひとつ詳しく見ていくことにします。




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